十二話目
オラリオの高級住宅街の一角。迷宮都市の喧騒から切り離された静寂の中に、その豪奢な白石造りの邸宅は佇んでいた。
「ここが私たちの新しい家よ。ノア」
私がギルド長ハンスから『裏の報酬』として提供させた、最高級の隠れ家。かつてDランク斥候ライトだった頃の私なら、一生かかっても門をくぐることさえ許されなかったであろう、大貴族の別邸のような場所だ。
「わあ……っ、お姉様、とっても広くて、綺麗なお城みたいです……!」
私の隣で、私の白く細い手を両手でぎゅっと握りしめていた魔族の少女ノアが、深紅の瞳をキラキラと輝かせながら歓声を上げた。街での買い物を終えた彼女は、私が買い揃えた漆黒のショートフードローブと、ボディラインにぴったりとフィットしたレザーインナーを身に纏っている。ローライズのボトムスから覗く細く白い太ももが、夕暮れの街灯に照らされてどこか艶めかしい。
中に入ると、贅を尽くしたマホガニーの家具や、ふかふかの絨毯が私たちを迎えてくれた。
私は『隠密魔導・極』を維持したまま、パチンと指先を鳴らして玄関の鍵を閉めた。これで、この広い空間には、私とノアの二人きりだ。
「ふぅ……。さすがに地上は視線が多くて、少し疲れちゃったわね」
私は漆黒のローブを脱ぎ、備え付けのクロークへと掛けた。
肉体再構成の第2段階が進んだ私の身体は、男だった頃の無骨さなど微塵もなく、どこまでも滑らかで、出るところが出た完璧な「女の子の肢体」へと仕上がっている。ローブを脱ぐと、ぴったりとしたアサシンウェアが私の豊かな胸の膨らみと、引き締まった細い腰のラインを露骨に強調した。
「お姉様……。お洋服、お片付けしますね」
ノアが健気に私のローブを受け取ろうと近づいてくる。
その瞬間、彼女の頭から生える漆黒の角、そして背中から生える蝙蝠のような悪魔の翼が、誰もいない室内に入ったことで、幻影のようにスルスルと姿を現した。街中では魔法で完全に隠蔽していた、彼女の本来の「魔族」としての姿。
「ありがと。……ふふ、やっぱりその角と翼、すごく綺麗ね、ノア」
私はノアの頭に手を置き、その漆黒の角の根元を、細い指先で優しく撫でてあげた。
「ふあぁっ……!? ん、ぅ……お姉様、そこは……っ」
ノアの口から、とろけるような甘い悲鳴が漏れ出た。彼女は全身の力を抜いたように、私の胸元へとコテリと頭を預けてくる。魔族にとって、角の根元は魔力が集中する極めて敏感な部位なのだ。指先から伝わる、ノアの細い身体の小刻みな震えと、彼女の吐き出す熱い吐息。
(……あ、可愛い。もっといじめたくなっちゃう……)
私の中の女としての領域が、猛烈なサディスティックな愉悦と母性に濡れそぼり、彼女の角をさらに愛おしげに指先でカリカリと弄る。
同時に、脳内の一部に残る男としてのライトが、「待て待て待て! 自分の美少女の胸に、別の美少女が顔を埋めて甘えてるって、これどんな桃源郷だよ! 精神が男の俺へのご褒美が過剰すぎるだろ!」と、脳内大パニックで叫んでいた。
「お、お姉様……。私、お姉様のいい匂いがして、頭がぽわぽわしちゃいます……ぅ」
ノアは私の引き締まったお腹のあたりに、両腕を回してぎゅっと抱きついてきた。
女の子特有の、柔らかくて、どこか甘い果実のような匂いが、互いの身体の隙間から立ち上る。混ざり合う二つの心を抱えたまま、私は彼女を優しく抱きしめ返し、その黒髪にそっと唇を寄せた。
「まずは、お風呂にしましょうか。迷宮の汚れも、街の埃も、全部綺麗に洗い流してあげるわ」
私のその言葉に、ノアは顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに「はい、お姉様……っ」と深く頷くのだった。
邸宅の奥にあるバスルームは、大浴場かと思うほど広く、白磁の浴槽には、魔導具によって沸かされた極上の湯がなみなみと注がれていた。
湯気が白く立ち込める中、私は自身の服をすべて脱ぎ捨て、全裸となって湯船の縁に腰掛けた。
鏡に映る自分の姿。
透き通るように白い肌、形の良い大きなバスト、キュッと引き締まった骨盤と、そこから伸びるしなやかな太もも。かつて泥にまみれていたライトの影などどこにもない、至高の美少女の肉体。
「お、お姉様……。お邪魔します……」
カーテンを恐る恐る開けて入ってきたノアの姿に、私は思わず目を細めた。
衣服を脱ぎ去った彼女の身体は、魔族の王族らしい気品を纏いながらも、10代半ばの少女らしい、驚くほど華奢で、守ってあげたくなるような細いラインをしていた。背中の黒い翼が、緊張で小さく震えている。
「こっちへおいで、ノア。私が洗ってあげる」
「えっ……!? あ、あの、私がお姉様を洗うのではなくて……?」
「いいのよ。私はあなたの『主人』であり、『お姉様』なのだから。……さぁ、ここに座って?」
私は浴槽の前の小さな椅子を指差した。ノアは顔を耳まで真っ赤に染めながら、ちょこんとそこに腰を下ろした。
私は彼女の背後に回り、泡立てた最高級の石鹸を手につけると、彼女の白い背中へとそっと這わせた。
「ん、あ……っ……つめたい、お姉様の手、気持ちいい……」
滑らかな彼女の背中を、私の指先が愛撫するように滑っていく。
新スキル『操糸の聖痕』の練度が上がった私の指先は、相手の身体のどこをどう刺激すれば、魔力が解きほぐされ、快感を得られるかを完璧に理解していた。私の細い指が、彼女の肩甲骨から、背中の黒い翼の付け根へと滑り込む。
「ひゃんっ!? あ、あぁ……っ、お姉様、そこ、だめ、魔力が……抜けてっちゃう……ぅ!」
ノアが背中を弓なりに反らせ、私の腕にしがみついてきた。
翼の付け根は、魔族にとって第2の性感帯だ。私の聖属性の魔力が指先から微量に流れ込むたびに、彼女の闇属性の魔力と共鳴し、彼女の脳内に極上の快楽の嵐を巻き起こしていく。
「ふふ、だめじゃないわよ。もっと力を抜きなさい、ノア」
私はわざと耳元で甘く囁き、彼女の細い首筋にフゥと熱い息を吹きかけた。
ノアの身体がビクビクと愛らしく震え、彼女の深紅の瞳が、快感のあまりトロンと潤んでいく。
(ああ、たまらないわね……。強い男を分からせるのも最高だけど、こんなに可愛い女の子を私の手だけで完全に蕩けさせるのは、それ以上の快感だわ……)
私の中の『女』の領域が、ノアを支配し、甘やかすことに、この上ない悦びを感じていた。男だった頃のライトとしての意識は、すでに「これ以上の天国があるなら教えてくれ」と、完全に思考を放棄して美少女同士の百合の空間に没頭していた。
背中を洗い終えると、私はノアを正面から抱きしめるようにして、一緒に温かい湯船へと浸かった。
浴槽の中で、互いの白い太ももと太ももが、ねっとりと擦れ合う。
ノアは私の豊かな胸に自分のバストを押し付けるようにして、私の首元に両腕を回し、完全に甘えきった表情で私を見つめていた。
「お姉様……。私、生まれてからずっと、暗い檻の中で結界に焼かれるだけの毎日だったの……。人間も、世界も、全部大嫌いだった……」
ノアは私の鎖骨のあたりにある、自身の薔薇の『聖痕』に触れながら、小さな声を漏らした。
「でも、お姉様が私を救ってくれた。お姉様のこの温かい身体と、優しい魔力が、私の絶望を全部消してくれたの。……だから私、お姉様のためなら、世界中を敵に回したって怖くないわ」
「ノア……」
私は、その健気で、どこか狂信的なまでの愛の言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。
復讐のために手に入れた力。だが、その力の先に、こんなにも私を必要としてくれる、世界で唯一の存在が待っていたのだ。
「大丈夫よ、ノア。世界があなたを拒むなら、私がその世界をこの短剣と糸で、すべて切り刻んであげる。お前たちは、私の腕の中で、ただ幸せに溺れていればいいのよ」
私は、湯気の中で、ノアの濡れた唇に、そっと自身の唇を重ねた。
女の子同士の、柔らかくて、驚くほど甘い口づけ。ノアはキュンと可愛い悲鳴を喉で鳴らしながら、私の舌を受け入れ、完全に私の一部になろうと、さらに強く身体を密着させてくるのだった。
お風呂から上がり、シルクの薄手のネグリジェ(寝巻き)に身を包んだ私たちは、邸宅の最奥にある、特大のキングサイズベッドの上にいた。
部屋の明かりはすべて消され、窓から差し込むオラリオの月光だけが、ベッドの上の私たちを白銀に照らしている。
「お姉様……。私、寂しいです……。もっと、お姉様に触れていたい……」
ベッドの中に入るとすぐに、ノアが私のネグリジェの裾を引っ張りながら、潜り込んできた。
薄いシルクの生地越しに、彼女の体温と、柔らかい身体の凹凸が、私の太ももや胸へとダイレクトに伝わってくる。
「ふふ、本当に甘えん坊さんね、ノア。いいわよ、こっちにおいで」
私は布団を開け、ノアの華奢な身体を自分の腕の中に迎え入れた。
ノアは嬉しそうに私の胸元に顔を埋め、私の腰に自分の細い足を絡ませてきた。互いの太ももがネグリジェの隙間から完全に露出し、素肌と素肌がぴったりと合わさる。その滑らかな感触が、私の繊細になった女の神経を猛烈に刺激し、頭の芯がじんわりと痺れていく。
「お姉様、お姉様のここ……すごくドキドキ、鳴ってます……」
ノアが私の左胸の膨らみに、自身の小さな手をそっと当てた。
ドク、ドク、と高鳴る私の鼓動。男の時よりも明らかに高い位置にあるその柔肉が、彼女の手のひらによって形を変えるたびに、私の腰の奥から、甘い電流が背筋を駆け抜ける。
「それは……ノアが、そんなに可愛い顔で私を見るからよ」
私は、ノアの黒髪を指先で優しく梳かしながら、彼女の深紅の瞳をじっと見つめた。
私の精神は、この暗闇の中でも彼女の表情の細かな変化や、彼女が私に対して抱いている『狂おしいほどの愛着』を、完璧に可視化していた。
「お姉様……私、お姉様の従者(お人形)になれて、本当に良かったです。……もっと、私をめちゃくちゃに、お姉様の魔力で染めてください……ぅ」
ノアは上目遣いで、自らのネグリジェの胸元を少しはだけさせ、私の指先に自らの鎖骨の『聖痕』を押し付けてきた。
薔薇の紋章が、彼女の興奮に合わせて、ドクドクと妖しく紫色の光を放っている。
「本当に、生意気な子ね。主人(お姉様)をおねだりするなんて」
私は妖艶に微笑むと、彼女の身体の上に、ゆっくりと馬乗り(マウンティング)になるようにして圧し掛かった。
私の豊かなバストが、彼女のバストを押し潰すようにして重なり合う。ローライズのボトムス(寝巻き)の境界線が擦れ合い、互いの身体の最も敏感な部分が、布一枚を挟んでぴったりと噛み合う。
「あ、……んぅ、お姉様、重い、けど……すごく、幸せ……っ」
ノアは自身の漆黒の翼をベッドに大きく広げ、私の愛を受け入れるようにして、その深紅の瞳を潤ませた。
私は彼女の首筋に再び唇を寄せ、今度は、聖女としての魔力を極限まで高めて、彼女の『聖痕』へと直接、口づけ(魔力注入)を施した。
「――っぁ、あぁぁぁぁぁーーーッ!!!」
ノアの口から、お風呂の時とは比べ物にならないほどの、極上の、甘美な絶頂の悲鳴が響き渡った。
私の純白の魔力と、彼女の漆黒の魔力が、薔薇の紋章を通じてベッドの上で激しく爆発し、融合していく。彼女の身体は弓なりに跳ね上がり、私の腰を、自身の細い太ももで狂ったように強く締め付けてきた。
何度も、何度も、互いの身体を擦り付け合い、魔力を交錯させ、女の子同士の甘い愛撫を繰り返す。
男だった頃のライトとしての理性が、「美少女同士のベッドイン、マジで尊すぎて精神が崩壊する」と完全に天を仰ぐ中で、アイリスとしての私の肉体は、ノアを愛し、支配することの圧倒的なオーガズムに、深く、甘く溺れていくのだった。
やがて、長い愛の儀式が終わり、部屋に二人の荒い呼吸だけが残る。
ノアは、私の腕の中で完全に骨抜きにされたように、ぐったりと、しかし最高に幸せそうな寝顔を浮かべて、私の胸を枕にして眠りについていた。
私はその彼女の寝顔を見つめながら、自身の白い太ももに残る、愛の営みの微かな熱を心地よく感じていた。
かつて無能と蔑まれ、奈落の底で死にかけた私。
だが今、私の腕の中には、世界で一番可憐な魔族のヒロインがいて、私の後ろには、ギルド長を共犯者にした絶対的な権力がある。
「ふふ、おやすみなさい。私の可愛いノア。……明日からは、二人でこの世界を、私たちの遊び場にしてあげましょうね」
私は、ノアの華奢な身体を抱きしめ直し、彼女の髪の匂いに包まれながら、至高の全能感と共に、静かに、そして深く瞳を閉じるのだった。




