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末っ子エミリアーナ  作者: ぱんどーる


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元国王のお祖父様の屋敷で、1年ぶりにエル兄様と再会することになった。


馬車から降りると、エル兄様が先に着いていた。他にはお祖父様にローレンス伯父様、ロデリック伯父様、メイ、現国王陛下のご長男アレクシス殿下が出迎えてくれた。はしたなくない程度に早く歩き、皆より前に出て手を広げたエル兄様に飛び込む。


・・・と思わせ、飛び込まなかった。



エル兄様と手紙でやりとりした手筈通りに、私達は自由組み手を始めた。突きや蹴りを放つが、やはり私の力ではエル兄様にダメージは入らなし、そもそも全てガードされ、ヒットさせることができずに悔しい。エル兄様もこれはパフォーマンスだからと全力でくるわけではないが、それでも力は強い。なんとか受け流しながらしばらく格闘した。


ぽっかーんとしていた皆が正気に戻り、その中でアレクシス殿下が私達2人を止めに、こちらに来ようとした時、他の皆は声を上げ笑いはじめた。


アレクシス殿下にヒットしたら大変なので私達も動きを止め、皆がいる方に体を向け、2人並んで礼をした。

ふふ、作戦成功したみたいで良かった。


改めてエル兄様に飛び込む。1年前とは違い、体幹もぶれずに私を抱きとめ、ぎゅうぎゅうに抱きしめられた。


「久しぶりだな。会いたかったエミリアーナ、ああエミー」

「私もエル兄様にやっと会えて嬉しい」


いつものように頭をぐりぐりと押しつける。


「はあ?なんだ?お前達のあのやりとりは普通なのか?私1人があたふたしてるだけで、皆はまだ笑ってるぞ」


アレクシス殿下がぶつぶつ言っていると、


「いや、普通ではないな。だがエルウィンとエミリアーナの母親が体術センス抜群だったのは知っていたな。俺達を驚かそうと2人で計画したんだろうな。さぁ、屋敷の中に入ろう」


ローレンス伯父様がアレクシス殿下に説明した後、背中を押し屋敷の中へ促した。私達も後をついて行く。


皆で食事を済ませてから、別室に移動して話し合いが始まった。


長兄と姉の教育は前途多難な状態らしい。


特に姉は、何をするにも文句を言い、王族気取りでとにかく人を見下すが、お祖父様やローレンス伯父様、アレクシス殿下に対しては猫なで声でおねだりばかり。ロデリック伯父様やメイナードに対しては、王家の血も流れていないのに偉そうにするなと突っかかる状態。


1度お祖父様が厳しく叱ったが、しゅんとして反省するのも、机に向かい励むのもだいたい3日程度。


アリア叔母様に対しては、平民扱いをして1つも言うことを聞かなかった。叔母様は「若い頃にお兄様にもジェシカにも散々迷惑をかけ、助けてもらったから頑張ろうとしたけど、もうムリよ。イライラして夜も眠れないほどよ? 夜更かしは美容の最大の敵なのに。申し訳ないけど2度と連れてこないで。あの子、本当にジェシカの子供なの? スカーレットお姉様の子供と言われた方が納得するわ」とぷりぷりしているらしい。


ちなみにお母様にはスカーレット様という姉もいて、公爵家に嫁いでいるそうだ。


あれだけ慕っていたお父様に対しても、お父様がちゃんとしてないから子爵位なんだと当たり散らしているらしい。この点については長兄もまったく同じ行動をして、お父様を常に責めているらしい。


長兄はローレンス伯父様の後継になりたいから養子にしてくれと強請っている。ローレンス伯父様は今後も結婚するつもりはないから、自分が死んだら爵位と領地は王家に返上される。お前が努力を重ね、俺の父や兄がお前のことを後継者にしてもよいと認めても、その時も一代限りになるはず。お前が結婚して子をなしても、そいつは公爵家を継ぐ事はできないと説明した。

長兄はそれでいいと、自分は公爵になりたいんだと答えたらしい。努力はしているが、思考があまりにも自分本位すぎて不安しかない。


長兄はこの教育が終わった後は、子爵邸には帰らず、ローレンス伯父様の公爵邸で過ごす事を希望している。

姉も子爵邸は自分が住む場所ではないから、お祖父様のところか、ローレンス伯父様のところで暮らしたいと希望している。


2人を子爵邸に帰すと、血筋を鼻にかけ、ますます増長するだけだと判断して、エイドリアンは学園を卒業するまでは見定める期間として、ローレンス伯父様の屋敷で預かるということにする。お祖父様が今のままでは認める事はできないと強く言い、色々と吸収するためにもアレクシス殿下の側近候補として学べと言ったら、不愉快そうな顔を隠そうともせず拒否した。こき使われる立場が学びになる事はないと言ったそうだ。


長兄がローレンス伯父様の屋敷で世話になることになったので、姉はお祖父様のところでお祖父様が厳しく育てるらしい。姉の見定める期間は長兄より短く、学園入学前まで。それまでに女王様気取りが直らなければ、修道院に送ると告げた。姉はお祖父様の剣幕にさすがにおとなしくなったらしいが、それがいつまで続くのかと頭の痛い状態が続いてるらしい。


そんな状態の為、お父様と話をちゃんとした後、居心地の悪さを感じてもそのまま滞在してもらうことになると言われた。


「エル兄様がいるから大丈夫です」

「俺もエミリアーナがいれば大丈夫です。自分達の家に帰るだけです」


そう答えると、エル兄様はお祖父様にぎゅうぎゅうに抱きしめられ、


「話が通じぬ相手と暮らさなければならないなんて地獄じゃあ。お前達と一緒に暮らしたい、しくしく」


嘆き、泣きマネをするお祖父様・・・。


私はロデリック伯父様に抱きしめられ、


「何かあればすぐうちに来い。 アリアの家でもいい。黙っていなくなることだけはやめてくれよ? 私とメイナードも様子を見に行くようにするからな。不満があったらちゃんと言えよ?約束できるな?」


心配しすぎなロデリック伯父様に、はいと返事をして抱きしめ返す。ロデリック伯父様が、いつかのようにおでこや頬にキスをくれる。それを見たお祖父様が儂もやると騒ぎだし、アレクシス殿下も私もだと便乗し、ローレンス伯父様とエル兄様は、はあ?と低い声で唸った後、ロデリック伯父様と私をべりっと引き離す。


ずっとおとなしくしていたメイが、


「うちにいた時は、毎晩この状態で甘々だったよ」


なんてしれっと言うから、屋敷が大騒ぎになりました。


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