表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第九章 脱出
70/89

脱出と侵入

 ゲルトに一杯食らわされてから一人で二階の部屋に取り残されるはめになったアタシは、このまま黙ってはいられないと脱出を試みることに。


「さて、これからどうしたものか?」


 最初はバカ正直に部屋の扉から出ていこうとも思ったが、案の定内側から開けられないように細工されてる。っても見張りの騎士に見つかって連れ戻されるが目にみえてるので……


「うん。ここはやっぱり、窓から抜け出すしかないわね」


 思いついたら即行動のアタシは、部屋の窓を開けて外の状況を確かめると、周辺には多数の騎士達が見回りをする姿があった。


「う~ん。あわよくばベットのシーツをロープ代わりにして抜け出すのもありかと考えたけど……無理そうね」


 なので他にも何か策がないかと思案した結果?


「そうだ! この間にシルベと一緒に自宅から持ってきた……」


 部屋に置きっぱなしにしてあった自分の荷物をガサゴソと漁る。すると中から幾つかの魔法石を見つかった。


「しめた! これを使えば誰にも気づかれずに脱出できるわ!」


 逸る気持ちを抑え、見つけた魔法石をマントの裾にくるんで縫い付けてと……


「出来たわ!」


 完成したのは、マントに風の魔法石の効果を加えた即席の飛行器具。さすがに空を飛ぶには無理があるが、紙飛行機のように揚力(ようりょく)と風を利用して上空を滑空して移動することは可能だ。


「それじゃあさっそく……」


 アタシは窓の(さん)に片足を乗せ、再度周辺を見回す。


「風力風力は申し分なし、邪魔になりそうな建物や木も見当たらない!」


 諸々の確認を終えると、いよいよ……


「とうっ!」


 窓から思い切り飛び立ち、マントを羽のように広げて風に乗る!


「お、おおお…………!!」


 予想よりも重心が傾くも、真っ直ぐに進むだけなら大した支障は感じない……っが、この方法はあくまでも“飛ぶ”ではなく“滑空”なので、長距離の移動にはあまり向かない。


 ただ、それでも見張りの頭上を通り越していくには十分。よって優雅に夜空の散歩を楽しんだ後は、どこか適当な場所に着地することで難を逃れることができた。


「――――ふぅ……さぁて、問題はここからよね」


 取り敢えずは周囲の様子を簡単に確認し終えると、改めてシルベとバーバラの捜索について思考する。


「え~と、ゲルトに気絶させられてからも時間はさらに経過しているから彼等が移動してるのは……違う! それだけの時間が経過しているなら、二人は既に移動を止めてどこかの場所に身を潜めているはず!」


 そう結論つけるアタシは、ある一つの可能性を思い浮かべる。


「いや、でもあそこは……」


 一度浮かんだ可能性を一旦否定しかけるが、よくよく考え直してみればその可能性が一番ありえることに気づく。


 “バーバラがシルベを黒いフードのアジトへ連れていく”という可能性を……!


「けど、そうなるなら……事態は相当にまずいかも!?」


 嫌な胸騒ぎを覚えるアタシは、急いで黒いフードのアジトへ向かう!


 ――――数十分後。街外れに建つ黒いフードのアジトである屋敷近くにまでやって来たアタシは、物陰に隠れて様子を窺っていた。


「パっとはアタシが前に訪れた時と何も変わってないように見えるけど……問題はシルベが本当にあそこにいるかよね」


 すぐにでもその有無を確かめたい気持ちはあるが、焦って迂闊(うかつ)な真似をする訳にはいかない。


「やっぱりここは……誰にも知られぬよう秘密裏に侵入するしかないわ!」


 方針が決まったら、あとは行動あるのみ。


「まずは侵入するためのルートだけど……やっぱり見つかりやすい窓よりも屋根から忍び込む方が正解よね」


 次に侵入の手助けになるものがないかと周辺を見回す。すると少し離れた場所に屋敷よりも若干背の高い木が生えているのが視界に入った。


「あれは、昔よく木登りしていた……」


 子供時代の思い出に浸りたい気分はあるが、今はそれどころではないので――――


「ふぅ、ふぅ……さ、さすがに子供の頃と同じって訳にはいかないか……」


 過去の自分との差に苦戦しつつも何とか天辺(てっぺん)にまで登り切った私は、真向かいに見えるアジトの屋根を捉える。


「うん。ここならいけるわ」


 確信するアタシは、木の柔軟反動を利用して一気に跳ぶ!


「このまま真っ直ぐにいけば……!」


 あと少しでアジトの屋根へ……と思った次の瞬間、突然の突風に襲われて体勢が崩れる!


「きゃ……ぐっ!」


 咄嗟に流されそうになるも、何とか堪えて立て直して……


「あ、危なかった……冷や汗はかいたけど、何とかなったわ」


 無事に屋根にたどり着いて安堵……することなく、今度は点検する際に使ってる屋根裏との出入り口を探す。


「記憶だと確かこの辺に……あったわ!」


 正方形に切られた頑丈そうな板の蓋。これを外せば……ガタッ!


「え?」


 手を触れようとした瞬間、向こう側から蓋が持ち上がる!


「ま、まさか! こんな夜中に屋根の点検をする変わり者がいるっていうの!?」


 いきなりの緊急事態に慌てて隠れようとするも、屋根の上では無理な話なのでアタシは……


「ハ、ハハ……これって万事休すってヤツかしら?」


 心の中で「どうしようもない」と覚悟を決めるしかなかった!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ