城戸 進3
――――集落手前にある木々の陰にて。
「そろそろ例の集落だけど……春野さん。最後の確認をいいかな?」
「ハイ、集落に入ったら常に二人一緒に行動する……ですよね?」
「その通り。あとは例の青い集団への警戒も忘れないで」
「了解です!」
「いい返事だ。じゃあ、いこう!」
四回目の最後の確認が終わり、オレ達は再び集落へ舞い戻る。
「――――それにしても、改めてここに立つと足が震えるな」
「あんなことがありましたからね。そうなるのは当然ですよ」
「うん……とにかく、また青い集団に出くわさない内にこの辺りの様子から見ていこう」
こうしてオレ達は、二人で周囲を警戒しつつ慎重に探っていくが……?
「誰もいない……というよりも、人の気配がまったく感じませんね」
「そうだな。もしかしたら、この集落には既に誰も住んでないのかも知れないな」
「つまりは無人の廃集落になると?」
「そう考えるのが自然だろうね」
「……なら、諦めて引き返します?」
「いや、それならそれで逆に調べやすいってものさ」
「調べやすい?」
「誰にも遠慮するこなく、人様の家を好き放題に物色できるってことだよ」
「なっ、それって泥ぼ……」
“泥棒”と言われかけるが、オレは素早くその発言を打ち消す。
「念のために言っておくけど、こんな状態じゃなかったら、そんなバカなこと言わないからね?」
「そ、そうですよね……」
「まぁ、もし誰かに見つかった場合は土下座して許してもらうつもりだから安心しなよ♪」
「そ、それって……」
呆れた目を向けられて多少の気は引けたけど、取り敢えずは近くに建っている古びた木造の家へ。
――――コンコン!
「ノックに反応は……ないか」
なので、遠慮なく扉を押してみると?
「開いてる。入ってみよう」
「ほ、本当に大丈夫ですかね?」
「……一応、いつでも土下座ができる準備だけはしといて」
「う~ん、わかりました」
恐る恐る家の中へ侵入……すると案の定、人の気配はなかった。
「……誰もいないな」
「ですね。でも、もし誰かいたら私達は即座に土下座実行でしたよ」
「……うん、誰もいなくて本当によかった」
そんな冗談っぽい会話を交わしつつ、探索は続ける。
「台所に寝室……どこもかしこも、埃だらけだ」
「ええ、もう何年も人が住んでいない感じですね」
その後、いくつかの部屋を調べ終えたオレ達は、最後に残った部屋の扉を開く。
「ここは……書斎か?」
「みたいですね。机や椅子もあるし……あっ、机の上に何か置いてますよ!」
「ああ、写真立てだね」
オレは何気なく手に取って眺める。
「ふ~ん、写っているのは成人の男女二人と……その間に挟まれて立っているのは……娘?」
「あ! この女の人、赤ん坊を抱いてますよ」
「本当だ。ってことは、この家は四人家族だったのかな?」
ひとしきり見たあとは、写真立ては元の位置に戻す。
「さて……他にも何かないかな?」
「ここ、床に何冊か本が散らかってますよ」
春野さんはそう言って、適当な一冊を拾い上げてパラパラと開いてみる。
「どれどれ、何が載って……あれ?」
「どうした?」
彼女が開いたページを横から覗き込むと、そこには何かの動物らしき絵とそれを説明するための文字が記されていたのだが……
「これって、何語だ?」
「少なくとも日本語や英語ではないみたいですよね」
見たこともない文字の羅列に戸惑っていたら、春野さんがまた別の本を拾ってくる。
「こっちは植物の本みたいですけど……」
「ちょっと見せて」
受け取って確認してみると?
「ふむ……内容は違うけど、文字は今見たのと同じか」
「やっぱりそう見えますよね?」
この文字は……もしかして、この地域特有のもの? それとも別の国の……
妙な疑問を持ったオレは彼女に提案する。
「ねぇ春野さん。一応、他の家も調べてみない?」
「そうですね。それじゃ、いつでも土下座ができるように心がけておきます」
「…………」
土下座ネタはさておき、外に出たオレ達は他の家も次々に探索していく……しかし?
「ここも大したものはありませんでしたね」
「……だな」
労力の割には大した収穫を得られず、結局はこれ以上の探索は無駄だと悟ることに。
「ふぅ、一度あの物置小屋に戻るか」
もはやこの場にいる意味はないと、オレ達は今いる家から退去するために玄関の扉へ向かう……が!
「城戸さん!」
ここで急に春野さんが強ばった声を発する。
「ど、どうしたの?」
訊ねると、彼女は怯えるように扉を指差して……
「今、外から足音が!」
「なんだって!?」
言われて耳を澄ますと、確かに扉の向こうからは何者かの足音が聞こえた。
『何だ? 今この家から物音がしたような……』
声? 足音の主か!?
「も、もしかして、この家の住人でしょうか?」
「それはわからないけど、向こうがこっちに興味を抱いているのは間違なさそうだ」
「そ、そんな……」
突然の非常事態で緊張が走るなか、声の主は玄関の扉に手をかける!
「き、城戸さん!」
「下がってろ! キミのことは絶対に守るから!!」
オレは不安に駆られる彼女を背中側へ押しやると、すかさず扉の向こうからやって来る存在を見据えて身構える!!




