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10.家族で夕飯ですわ

お越しくださりありがとうございます。

のんびりまったり悪役令嬢(仮)物語進行中です。


昨日はパスタとカレールウを買いに行って、その2つだけ買い忘れて帰りました。

良い1日となりますように。

 こんばんは、セリーヌ=マクラインです。


 目覚めてから初めて食堂で、家族と婚約者様と一緒に食事をしています。


 先ほど、記憶が戻ったというほどではなく、何となくあったかな~と感じただけだと気まずげに告白したら、それでも「少しでも思い出すきっかけが良かった」と家族は喜んでくれ、思い出すきっかけになればと、夕飯をみんなで食べることになりました。


 貴族の家と言うのは長テーブルの端と端で、静かにナイフとフォークを使って食べるものだと思っていたのですが……。

 今私は丸テーブルを囲んで座っています。あのちょっと高級な中華レストランにあるような丸テーブルです。真ん中がクルクル回ります。

 クルクル回る箇所に食事がゴージャスに盛り付けられています。 


 私がまだ病床明けなので、消化の良い日本食のような料理を中心としたメニューを、我が家の料理人さん達が腕によりをかけて作ってくれました。

 ざっと見ると、野菜のマリネ(この盛り付けですと酢の物でしょうか?)に、チキンソテー……ではなく鶏肉の照り焼きでしょうかね。タイの姿焼き、色どり温野菜のサラダ……あら、天ぷららしきものもありますわ。さすがにお刺身は無いようです。


 通常は、そばに控えた使用人にお願いすると取り分けてくれるそうですが、本日は、お父様が自ら私のお皿に取り分けてくれています。


「セリーヌはハポネ国の料理が好きだから、今日はハポネの料理ばかり用意させたよ」

 そうですか。日本っぽい国はハポネというんですね。緑茶もきっとそこから輸入されてきたのでしょう。後で地図を見せてもらいましょう。

「ほらセリーヌ、お食べ」

 クルクル回る箇所を回って、私の前までお皿がやってきました。

「ありがとうございます」

 お父様が取り分けて下さったのは、白身魚のあんかけです。

「美味しい」

「白身魚のあんかけはお姉さまの好物なんですよ」

「セリーヌちゃんはこれも好きよね」

 今度はお母様が水茄子のみそ焼きのような物を取ってくれました。

「これも美味しいです」

 私の右隣ではタレンツィオ様が私が食べる様を嬉しそうに眺めています。

「タレンツィオ君、セリーヌに近すぎるよ。まだ婚約者なのだから節度をわきまえなさい」

「お姉さまはもっと僕の方へ」

 左隣のロバートが私を引き寄せようとします。

「皆さんそんなことをおっしゃっていると、セリーヌが食べづらいではありませんか。ね」

 もしかして、「忘れていた」なんて言っていましたが、タレンツィオ様がいらっしゃる直前まで婚約者の存在を私に知らせなかったのは、この婚約を反対していてわざと言わなかったのでしょうか?

 もしかしたらタレンツィオ様に何か問題があるとか??

 不安げな顔で見ていたのでしょう。タレンツィオ様が慌ててフォローを入れてきます。

「安心して。僕たちはお互いが良いと思って婚約したし、セリーヌのお父様、お母様、ロバート君も納得しての婚約だからね」

「セリーヌが君が良いというから了承したが、私はまだ納得していないからね」

「そんな、お父さん」

「私は君のお父さんじゃない」

「父上、お姉さまはロレンツィオ様のことを覚えていらっしゃらないようですし、この際婚約自体白紙に戻してしまいましょうよ」

「ま、まってロバート君」

「はいはい。あなたもロバートも冗談はそのくらいにしなさい。セリーヌが困っているわよ」

「冗談ではないのだけどね……」

 なんだかお父様はまだぶつぶつおっしゃっていますが、食事を再開しました。

「まだ婚約解消のチャンスはいつでもあるさ」

「ロバート、何かおっしゃいました?」

「いいえ、お姉さま。あ、このティレの煮物美味しいですよ。よそって差し上げます」

 何やら不穏なセリフが聞こえてきた気がしますが……気のせいですわね。

 可愛い弟が無邪気な顔で料理をよそってくれました。


 食事は終始和やかなムードで進みました。

 お箸とはいえ、心配していた私のマナーは完璧でした。体がしっかり覚えているようです。

 それに先ほどの白身魚と茄子。これは前世でも私の大好きなおかずでした。

 なんとなくですが、私はセリーヌ=マクラインとして生を受けた時から私なのだと感じ始めていました。


 最後に紅茶と一緒に一口サイズのデザートが各種盛り付けられて丸テーブルの中央に置かれました。

 その中から、タレンツィオ様は迷うことなくフルーツ多めのタルトを取ってくれました。

「セリーヌはフルーツタルトがあったら必ず真っ先に取ってたんだよ」

 確かに私は、数あるデザートの中からフルーツタルトにロックオンされていました。

 皆さん私のことを本当に良く知っていらっしゃるわ。貴族の家族ってもっとうわべだけの付き合いかと思っていました。

 タレンツィオ様が私に、いわゆる「あーん」をいようとしてロバートにフォークで手を刺されています。

 ……なんでしょう。この光景さえ落ち着きますわ。


「そうそう。セリーヌちゃんが8歳の時、我が家主催の春のお茶会を開催したの。セリーヌちゃんったらフルーツタルトを独り占めしようと、ドレスのスカートを袋にして、フルーツタルトを一杯抱えて隠れようとして、盛大にこけて泣いちゃったのよ。本来なら貴族にあるまじき振る舞いとして叱るべきなんだけど、その姿が可愛くてね。その場にいた大人全員ほっこりしてしまって叱れなかったの。覚えてる?」

 ……覚えていないです。記憶がない娘が、なぜそれだけ覚えていると思われたのでしょう。

 そもそも、全員の頭から抹消してもいい記憶のような気がしますわ、お母様。

「その時、タレンツィオ君も慌ててセリーヌちゃんのそばまできて、2人で地面に転がったフルーツタルトを泥んこになりながら拾って……」

「その話はもういいです!」

 タレンツィオ様、食い気味に話を遮られました。

 これは、あれですね。近しい者たちで集まるたびに、何度も話題にされていますわね。何でしょう。この思春期に「あなたが赤ちゃんの頃オムツ替えてあげたのよ」と言われた時のような羞恥。


 記憶が戻っても、このことに関してだけは、忘れたことにしておこうと思いますわ。

お読みくださりありがとうございます。

もし気に入っていただけましたら、評価よろしくお願いいたします。

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