↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/67

3



 純君を無事保護し、僕等はその足で白虎会へと帰還。足早に雲雀君の私室へ案内される道中、そこここから心配性の組員さん達が顔を出していた。家族が二人も怪我、しかも一人は未だ刃物を刺したままとなれば至極当然の反応だろう。

「よっと。先生、俺は後で構いやせん。先に純を」

「馬鹿言うな。この位掠り傷だ」

 淡々と言い、痩せ我慢は見苦しいぞ、な、キム兄さん?顎でナイフを示す。

「賛成。ここは救急救命の原則通り重傷者優先でいいと思うぜ、プロキオン。代わりと言っちゃ何だが、純の手当ては俺がやる。指示をくれ」

「助かるよ。じゃあ純君。頭が痛かったり、目や耳に違和感があったら教えて欲しいんだけど」

 頭部のあちこちへ触れ、今の所は無い、と思う、少し自信無さげに返答。

「了解。二、三日は容態急変の可能性があるから、気分が悪くなったらすぐに誰か大人の人に言うんだよ。―――じゃあ、キム君。額と手の甲、両方共消毒後にガーゼと包帯で保護、あ。ちょっと待って」

 念には念を入れ、軽く触診。右手甲は痛々しく腫れ上がってこそいるが、幸い骨折はしていないようだ。大学生に後を託し、急ぎ重傷者と対峙する。

 断りを入れた後、スーツを鋏で裂く。まずは筋肉で盛り上がる傷口周辺にガーゼを巻き、慎重に凶器を引き抜く。栓を失い溢れた鮮血が、綿へと緩慢に吸い込まれていく。

「良かった、思ったより出血が少ない。少し強く押さえるよ。痛いけど我慢して」

「お任せしやす」

 良し。真っ直ぐ刺さっていたお陰で、傷口も最小限。これなら縫合の必要も無いだろう。

 圧迫する事凡そ十分。取り敢えず止血は完了したので消毒と、テープ等に因る傷口の保護処置に移行する。残る心配は化膿か。後で手持ちの薬を渡さないと。

「―――はい、終わったよ。お疲れ様。でもまだ無理は禁物だからね」

「ありがとうございやす、先生。純は」

「ああ、指先なら何とか(にぎにぎ)。頭も(さわさわ)……うん。多分寝ても外れない、と思う」

「こら、動かすな!腫れが引くまでじっとしてろ!!」

 包帯を巻き終えたばかりの腕で制し、頭をバリバリ。心配性の保護者に対し、あんたこそ、少年は冷静に返した。

「じゃあ、手当ても終わったし―――辛いだろうけど話してもらえるかな、純君。今日一日の事」

「それが、さっきから思い出そうとしているんだが……よく覚えていないんだ。今朝雲雀兄の部屋を掃除していたら女将達が来て、その後しばらくして電話が……そこから先は殆ど何も」

 ううむ、予想通り洗脳前後の記憶は曖昧か。にしても幾ら元傭兵とは言え、稚い子供まで差し向けてくるなんて……昨夜の爆弾と言い、敵の手段の悪辣非道さには腸が煮え繰り返りそうだ。

「どんな些細な事でもいいよ。言って御覧」

「……そう言えば」

 記憶を辿るように、頭をゆらゆら。

「そこそこ長い時間、車に乗せられていた気がする。生憎車種とか同乗者は覚えていないが……あと」 

 揺らぎを止め、身体を後方へ反らし、天井を睨み付ける。

「気付いたら病院の廊下、の待合席?みたいな所に座っていたんだ。左隣に顔に包帯で巻いた男が腰掛けてて……そうだ。俺、彼に話し掛けられたんだ。坊やは誰に会いに来たんだい?って」

 捉えた糸端を離さないよう、確固たる意志で以って視線を留める。


「俺が誰も、って答えたら彼、こう切り返して来たんだ。僕はセンリと面会するんだよ。保育士をしている、僕の可愛らしい奥さんなんだ―――って」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。