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ソウマ君七歳、魔法を習う

いつもより少し長めです

そしてほぼ内容が説明回

暑い・・・

 

 ソウマは昨日を持って七歳になった。


 レイはソウマがこの歳になったら魔法を教えるという約束をしている。

 ソウマは昨日のパーティで「魔法! 魔法!」と騒ぎレイはそれを笑って眺めていた。

 ソウマはずっとこの日を楽しみにしていたのだ。この騒ぎようもうなずける。

 ソウマはあれからも隠れて魔力量をあげる訓練を毎日欠かさずしていた。

 まだ本格的に魔法の訓練をせずにあくまで基礎だけをしていてくれたのはレイ自身もホッとしている。


 もちろんレイは離れた場所からそれを感知しながら、文字通り陰ながらの応援をしていた。


 少しずつだが魔力量は着実に上がっていき、今では《ライト》を複数制御した上で長時間発動したままにできる。


 朝食を食べ終え、ソウマは早速とばかりにレイに詰め寄った。


「ねぇっ! 教えて、魔法!」


「はいはい、ちょっと待ってろ。今準備する」


 レイはガタガタと、小さめの簡易机と黒板を外へと運び込む。俗に言う青空教室というやつである。

 今日はとてもいい天気であるため外で授業をやろうか、とレイが思ったためだ。


「よし! では今から魔法について教える。これから教える時は私のことを先生と呼びなさい!」


「はい! 先生!」


 ソウマはそう元気よく返事をしてそれにレイも気をよくする。


「では先ず魔法とは何なのかということを説明しよう」


 ソウマは真剣な表情でレイの言ったことを聞き漏らさないよう柔らかの草の上で正座をしながらノートとペンを構えている。


「魔法とは簡単に言えば自らの体内に宿る魔力を体外に放出する過程で起こる現象だ。この時放出する量やイメージによって魔法の威力や属性を変えることができる」


 レイは実際に右手の指先からそれぞれ、火、水、土、光、闇の属性の極小の魔法をだす。

 ソウマは感心したような何処か興奮したような面持ちでそれを食い入るように見つめる。


「魔法を使う際の用途は様々だ。

 普段の生活の中で使ったり、仕事をする際、または戦闘中出会ったりと様々な状況で魔法は使われる」


 ソウマはじっとレイの話を聞いている。


「まず習う前に行っておくが魔法にこれといった形はない」


 ソウマはレイが何を言いたいのか分からずに首を傾げる。


「魔法の本には様々な魔法が載っていただろう?」


「うん」


「あれは先人達が未来の魔法を使う者たちのために残した魔法を分かりやすく理解するための本。

 だが、だからと言ってその本に載っている魔法しか使わないということがあってはならない。

 魔法とは想像を魔力によって具現化したもの。

 魔法に絶対という形はなく固定観念に囚われないようこれからの、この授業を過ごして欲しい」


「わかった」


 ソウマはレイの言ったことに頷く。


「ではまず最初に魔法の等級について説明しよう」


 ソウマはノートを開いてペンを構える。

 それを見てレイははっきりとした声で話し始める。


「魔法には威力や難易度によってそれぞれ階級が付けられている。下から初級、下級、中級、上級、超級、戦術級、戦略級、災害級だ。ちなみに初級魔法は魔力を少しでも持っている者なら魔法のことを知り理解すれば誰でも使えるものであり、これは生活魔法とも呼ばれる」


「ふんふん」


「そしてこの内、超級までの魔法は人が一人で扱える魔法の限界であるとされており、それよりも上、戦術級以上は複数人以上での行使を推奨されている」


「え、なんで?」


「超級より上の魔法はそれより下の魔法よりも使用する魔力量が桁違いに跳ね上がる。そのため一人での行使がほぼ不可能なのだ」


「へ〜」


「あともう一つ、違いとしては超級までは個人に対する魔法、戦術級以上は広範囲に効果を及ぼす魔法という区別をつけることもできる」


「ふむふむ、ちなみにほぼってどういうこと?」


 レイはそのソウマの質問にふむ、と頷き答える。


「ああ、一部のとんでもなく魔力を持つ奴はたった一人で戦術級を行使できる奴も稀にいるんだ、と言ってもそんな奴はほとんどいないがな」


「ほ〜、ちなみにレ、先生は戦術級を使えるの?」


 呼び方を間違えそうになって慌てて先生と呼び直すが、レイはそれを気にすることなく頷きを返す。


「使えるぞ」


「あ、はい、ソウデスカ」


 とりあえず僕の先生はとてもすごいんだ、と思っとけばいいか。みたいな顔をソウマは浮かべた。

 それを見てレイは子供というのはよくわからんな、と少し怪訝に思いながらも話を続ける。


「そして世間一般では中級の魔法が使えて一人前、上級が使えて一流、超級が使えるようになると超一流の言われるようになる」


 レイは黒板に文字を書きながら説明し、ソウマはそれをノートに写していく。


「そして個人としては最高級の超級が使えるようになるとそれまでの、魔法士ではなく別の呼び方がなされるようになる」


「呼び方が変わる?」


「その通りだ、超級を使えるようになった者はその腕前、努力、才能に敬意を評し、魔を導く者《魔導師》と呼ばれるようになる」


「魔導師……」


 ソウマは書き写していた手を止めレイが言ったその言葉を口の中で繰り返すように呟く。


「じゃあ、先生も魔導師ってこと?」


「うむ! その通りだ! しかもただの魔導師じゃないぞ? 凄腕の魔導師だ!」


「そういうのいいですから」


 続きはよ、と真顔で促すソウマにレイは頬を膨らませながらまるで幼子のようにそっぽを向く。



 そして少し経った頃、そっぽを向きながらレイはチラッと目だけをソウマの方に向ける。


 ソウマは黒いオーラを体中から噴出させてレイのことを半目で睨んでいた。


 レイは見てなかったので知らないがソウマは仕方ないな〜、と最初は苦笑いしてレイが授業を再開するのを待っていた。だが数分程して一向に戻る様子のないレイを見て少しイライラしたソウマ君はどうやって出すのかわからない黒いオーラを出しながらレイをジッと見つめていた。

 あなたそんな年齢じゃないですよね? むしろ絶対今の言葉言いたくて魔導師の流れしましたよね? ずっと今日という日を楽しみにしてたんですけど? とじと目を向けてくるソウマに、そっぽを向いたままのレイは視線をそらしながらも額にダラダラと汗を流し始める。


「オホンっ! まあそれはそれとしてだ」


 じと目は止まらない。その目から放たれる威圧に遂にレイは膝を折る。


「すいませんでした、ちゃんと真面目に授業やります」


「はい! じゃあよろしくお願いします」


 ソウマの笑顔が眩しい。

 レイはブツブツと不満をこぼしながら話を続ける。


「まあ、ともかくとしてだ、魔導師という称号は魔法士としての一つの到達点であり賞賛の言葉だ。君もこう呼ばれるように頑張りたまえ」


「はい!」


「じゃあ、今から超級までの魔法を実際にやってやるから、少しここから移動するか」




 ☆★☆




 レイはソウマを伴い結界の外へと出た。


「え? レイ、外に出ちゃってるけど?」


「うむ、出ちゃってるな」


 ソウマの表情が複雑なものに変わっていく。


「イヤイヤイヤ、僕いっつもレイに結界の外には絶対に出るなって言われてるんですけど?」


 思わず先生呼びが崩れるくらいに今のソウマは焦っている。まだ戦闘の素人であるソウマでさえこの結界の外の空気はとても重く、長くいたい空間ではない。


「ふむ、魔法の実演をするからにはやっぱり的は必要かと思ってな」


「いや、的って木でいいでしょ」


「まあまあ、とりあえず私のそばにいる限りは安全を保障するさ」


「ハア、ほんっとの本当にお願いね?」


 レイはその言葉に返事をせず結界の外を歩き始め、ソウマもそれに置いてかれないようおっかなびっくりついていく。


「ね、ねえ、どこで魔法を見せてくれるの?」


「ここら辺だ、来るぞ」


「へ?」


 いきなり「来る」と言われて何のことかわからなかったソウマはポカンとする。

 そして、一気にその顔を蒼ざめさせる。


 木をへし折る音が響く、そして二人の眼前にその大きな姿を現す魔物、全身は硬い殻に覆われており、足先が人を突き刺せそうに鋭い、そんな脚が八本。丸く赤い目が複数個光っており、二本の鋏のようになっている牙をぎちぎちと慣らせている。


 あり得ないほどに大きな蜘蛛だった。

 はっきり言って気持ち悪い。


「キィヤーーーーっ!」


「うるさいぞ、ソウマ君」


「いや、いやだって気持ち悪い!」


 レイはその言葉に情けないとばかりにやれやれ、と首を振る。


「今はそれでいいかもしれんが、直にあんな奴にも慣れてもらうからな」


「そんな事はいいから! まえ、まえ!」


 レイが「ん?」と言って振り返ったそこには大蜘蛛が足を振り上げレイに振り下ろしているところだった。

 それを見てソウマは右往左往とあたふたしている。


「ほいっと」


 その足をレイはガシッと掴み、ぶん投げる。

 大蜘蛛は転びはしないもののたたらを踏みながら後ずさる。


「へ?」


「見ていろ、ソウマ君。今からやるのが下級魔法だ」


 レイは風の刃を前に真っ直ぐ掲げた手から無数に放つ。大蜘蛛はその早く細かい攻撃を避けることができず、その大半をその体で受け細かい切り傷を作り出す。


「このように、下級魔法は威力はそれ程でもないものの、その扱いやすさと速射性に優れているため、習熟させればその低い威力を数で補うことができる」


「ほ、ほお」


 唖然としながらもどうにか話の内容を理解し頷くソウマ、それを見てレイは次の魔法を発動させる。


「そしてこれが中級魔法」


 自慢の体を傷つけられ怒りに震えながらレイに迫る大蜘蛛、その右顔面に風の槍が風穴を開ける。


「中級魔法は下級よりもかなり扱いも難しくなってくる。だがその分威力が大幅に上がる。わかったか?」


「は、はい」


「ふむ、そしてこれが上級魔法だ」


 顔の右半分に穴が開き既に瀕死の状態に陥っている大蜘蛛、それでも体から力を振り絞りなんとか足を一歩、前へ踏み出す。

 その姿は生への執念が色濃く滲み出ており、その迫力にソウマはその大蜘蛛が瀕死と分かっていながら一歩後ずさる。

 そこに風の刃で構成された風の竜巻が大蜘蛛を襲う。


「上級魔法は中級までよりも遥かに扱いが難しくなりそしてその威力も格段に跳ね上がる。

 ここまで来たらやりようによっては地形を変えることもできる」


 その威力の強さと、その大蜘蛛の姿に何の関心も抱いてないそのレイの姿に呆然としながらも首を縦に動かす。


「最後に、これが超級魔法だ」


 大蜘蛛は仰向けに倒れ、全身から紫色の血を流しその命が風前の灯とながらも何とか足を動かし立ち上がろうとする。

 そこに先ほどよりも一回りほど大きく黒く澱んだ竜巻ができる。竜巻の密度が上がり、その中では雷が縦横無尽に駆け回る。


 大蜘蛛はその巨体を風に持って行かれ、雷に打たれ風の刃で切り裂かれながら、その身を自然へと返していった。


 魔法が収まったそこには所々に魔法によって折られた木の破片や枝葉などが落ちている更地が広がっている。


 ソウマはその威力の強さとえげつなさに口をぽかんと開けながら絶句している。


「これが、超級魔法だ。超級は上級とは威力もその扱いにくさも一線を画するレベルになってくる。ここまで使えるようになれば世界のどこに行っても通用するレベルになる。

 ソウマ君も、ここまでのレベルになれるように頑張れよ」


「う、うん。てかあれって広範囲魔法じゃないの?」


「ん? ああ、超級魔法のことか? いや、あれはあんなだがれっきとした対個人用の魔法だ」


「え、ええ? あれで?」


 ソウマが言っているのは、目の前一帯が更地になっているこれは、広範囲魔法ではないのか? ということだ。


 レイは答える。


「うむ、あれでだ。だが、戦術級以上の威力を聞けば納得すると思うぞ?」


「え、本当に?」


「ああ、後でその説明をしとこうかと思ったんだがそういうことなら今しておくか。

 ここに居続けるのもなんだから家に帰りながら説明しようか」


 二人は更地になったそこを後にここまで来た道を戻るように歩き始める。

 そして歩きながらレイは戦術級以上の魔法の説明を始める。


「足元に気をつけろよ?

 それでだ、戦術級の魔法、これはこと威力に関しては実はあまり超級と違いはない」


「え? そうなの?」


「そうだ、戦術級以上のほとんどは超級の威力で範囲を大幅に広くしたような魔法だ。

 威力にして戦術級で小さな町を一つ落とすことが可能であり、戦略級は大きな街を一つ、そして災害級は小国を一つ落とすことができる」


「しょっ、小国! それって国ってこと?!」


「ああ、そして戦術級以上は複数人で発動するときのその様から《儀式魔法》と呼ばれることもある。

 まあ、今まで言った基準も飽くまで威力だけに観点を絞ったものであるから中には例外のような魔法も幾つかあるがな」


「へ〜」


 そこでちょうど二人は結界をくぐり安全圏へと入りった。ソウマは安堵からかため息を吐く。

 それを見てレイはくふふ、と小さくソウマに気づかれないよう小さく悪い顔を浮かべながら笑ったのだった。




 ☆★☆




 レイ等二人は家の前の青空の下の教室へと戻っている。レイは特に問題なさそうだが問題となっているのはソウマ、いきなり色々な情報を頭に詰め込んだせいか些かぐったりしている。


「うむ? 大丈夫か?」


「あ〜、大丈夫デス」


 若干語尾が気になったがそれなら良し、とレイは頷き話を始める。


「魔法の等級についてはわかったな?

 じゃあ、次に話すのは魔法の属性についてだ」


 レイは魔法の属性についての説明を始めた。




誤字脱字や文章の違和感などの指摘大歓迎です。

次話は近いうちにあげたいです

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