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黒崎くんは吸血鬼  作者: 工藤啓喜
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第一話 8

「っーーーあ……っは」


蓮は、激痛を堪えながら、目の前に無造作に捨てられている右腕を取ろうと、瓦礫に背中を付けながら立ち上がる。膝が震え、目も霞み、眩暈もする。普通人ならとうに、死んでいるであろうと思われるが、蓮には判断のしようがない。


だが、これだけは理解できる。


間違いなく自分は、死に向かっている。既に数ヶ月前に、死にかけているが、あの時よりももっと身近に。


死ねない!その一心で蓮は立ち上がる。


鶴田の前に捨てられている右腕を回収しなければ…蓮の思考はただその一点にのみ集中していた。


乱れている呼吸を整え、身体をなるべく動かさないようにする。小さな傷は、再生機能により少しずつ治っている。


痛みの方も麻痺してきて最初よりは、感じなくなってきた。

恐らく、まともに動けるのは、これが最後だろう。

蓮は、右腕を回収する隙を伺いつつ、体力回復を勤めていた。


「チッ……まだ、立ち上がるのかよォォ。いい加減飽きてきたぜ。」


苛立ちを隠せなくなっている鶴田をよそに、蓮は右腕を眺めている。

まるで、獲物を狙っている肉食獣のように、ただただじっと見つめていた。

今だ死んでいない蓮の目を見て鶴田は、さらに苛立ちが募る。


鶴田は、力を込め自身の肉体を強化し、鋼鉄のようになった拳を握る。

一歩…二歩…。鶴田は、蓮のところまで歩いて近づいてくる。

ゆっくりと、しかし確実に殺す為に歩いてくる。


まるで隠そうともしていない鶴田の剥き出しの殺意を、ひしひしと感じながら、蓮はなおも微動だにしなかった。

鶴田が、蓮の目の前で、立ち止まり、腰を引く落として、鋼鉄のように硬くなり巨大な鉛の塊のようになった腕を後ろに引く。


蓮もまた、鶴田を真っ直ぐ見ながら、“その時”を見計らっている。

鶴田が、引いていた腕を前に突き出そうとしたーーーと同時に、蓮は右足で思いっきり地面を蹴り上げ、砂ぼこりを巻き起こした。


獲物を逃すまいと、見開いていた鶴田の目の中に蹴り上げられた砂ぼこりが、入り込む。


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