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黒崎くんは吸血鬼  作者: 工藤啓喜
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第ニ話 44

蓮は、うつ伏せのままで倒れてしまった。息はあるが、ピクリとも動かない。


「黒崎様!」


エルウィンが叫んだ。そして、これまで闘いを見ていたメイド達が目を逸らし口を押さえていた。蓮が倒れている石畳が、赤黒い血に染まっていく。


「はぁ、はぁ…これで満足か?黒崎」


宗介は、蓮に重い一撃を喰らっていたのだが、スキを見せた瞬間に、隠影縮地(いんえい・しゅくち)を使い背後から蓮の胸をめがけて刀を突き刺したのだ。蓮の血をたっぷりと吸った宗介の日本刀の刃は真っ赤になっていた。そしてその刃は、正確に蓮の心臓を貫いていた。



「とりあえず、心臓を貫いておけば動かなくなるだろ」


宗介はそう言いながら、刀を鞘に納めた。しばらく様子を伺っていると、蓮の指が動き、うつ伏せの状態から仰向けの状態になる。


「……痛ってぇ」


蓮が呟く。胸からは大量の出血しているはずなのだが、半端者とはいえ蓮は“真祖の吸血鬼”である。闘いで死ぬことはほぼないと言ってもいい。


「嘘だろ…目ぇ覚ましちまったのかよ?黒崎?」

「ああ…。…容赦なくやってくれたな。死ぬかと思った」

「俺は、殺す(その)つもりで刺したんだがな」

「でも、死んでないだろ?」

「吸血鬼ってのは、しぶといモンなんだな」

「さあな。」


蓮は、そう言って立ち上がった。蓮が動く度に血が流れていたのだが傷が徐々に塞がりはじめていた。痛みはあるが心臓は変わらず動いている。これまで受けてきた蓮のダメージは回復しつつあった。宗介は、深呼吸を一つして、蓮に言う。


「…俺の負けだ…黒崎」

「えっ?」

「何度やっても倒せる気がしねぇ」

「あん?」

「俺の専門は、“退魔”だからな。お前さんは退ける魔物じゃねぇし、殺すのが目的じゃない」

「なんだそりゃ」


蓮は、肩をすくめながら言った。蓮の瞳は紫色から本来の茶色に戻っている。


戦闘状態を解いた証だ。


屋敷の周囲に、漂っていた殺気溢れる気配は感じず、エルウィンやメイド達もホッと胸を撫で下ろした。しかし、蓮はこれで手打ちという訳にはいかなかった。


蓮は、ツカツカと宗介の側に寄る、ダメージは回復しつつあるが、痛みはちゃんとある。歩くたびに刺された胸が痛んで気が狂いそうになるが、これだけはやっておかなければならなかった。


「これは、メイドの娘(あのこ)の分だ」


蓮は、宗介の頰を思いっきり殴った。

それは、ここで闘った中で今までより一番強く握られた拳。宗介は少し驚いた表情を浮かべたが、ジン…とした頰に残る痛みをさすりながら蓮に言う。


「…サンキュ」

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