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女子ってこわあい


ホームルームの残り時間。進藤先生から麗花ちゃんと一緒に転入生として紹介された私は、転入生の運命かな怒涛の質問攻めにあっていた。怒涛のだ。

なんでもド田舎である時雨舟町では転校する生徒はたくさんいるが、転入してくる生徒は本当に何年かに1人いるかいないかのレベルらしい。町の子供全員集めたエスカレーター式の学校で、いくら人が多いとはいえ殆どが顔馴染みな状態なんだという。エスカレーター式に改変したのは、私たちの代が中学二年生の頃で一気にいくつかの他校と一緒にされたとクラスの一人の女の子が教えてくれた。違和感しか感じなかった学校生活も次第に慣れ、三年も同じ学年生徒ならだいたいが知り合いになる位田舎のコミュニケーションは狭かったのである。


「芹沢さんは東京だったのよね!やっぱり彼氏とかいたの?」

「あー1人だけね。相性合わなくて別れたけど」

「そういうドライな所トーキョーっぽい!どんな彼氏だったの?」

「えーと良くも悪くもまっすぐ、かな。てかこの話やめないか」

「なんでなんで!超気になるもん!」

「東京人の話なんて滅多に聞けないものね!」

「「ねー!!」」


顔を見合わせて笑い合う2人の女子生徒に思わず顔が引きつった。質問はしないが周りの子達もうんうんと頷いている。そう、怒涛の質問と言ったがすべて女子だけなのである。別に男子が来て欲しい訳では無いがこうも分かれるものなのか、と麗花ちゃんに怒涛の質問攻めをしている男子生徒多数を見てそう感じた。


「それにしてももう1人の転入生いやーな感じだよね。なんなの進藤先生を名前呼びしちゃって!」

「そうそう!あんな生のぶりっ子初めて見たわ!一回痛い目見ないと反省しなそうよね!」

「あたしら関係ないけど裏で進藤先生親衛隊が制裁するらしいし」

「自業自得よねー」


目の前で繰り広げられる恐ろしい会話に冷や汗が背中を伝った。この子達は人を簡単に傷つけるのを黙って見過ごすのか。東京ではというより今まで行った学校ではSNSでの陰口等々はあったが、実力行使に出る輩はまるでいなかった。自分がやったとばれないためにだ。そちらも十分おかしいのだが、如何せん私の田舎のイメージが虐め0だった為驚きが隠せない。SNSで陰口を言うなんて回りくどいことはせず、直接制裁を下すだなんて恐ろしいとブルリと鳥肌が立った。しかし制裁だなんてふざけた言い方だ。どの立場を持ってそんなことを言っているのか。

麗花ちゃんにうんざりしていた私でさえ、この学校の気持ち悪さには吐き気がしたのだ。



「ね、芹沢さんもそう思うよね?」

「あ………うん」



最も本当のことを言えない私に一番吐き気がするのだが。


私の問いに満足気にする女子達を見て、自分のされてる最低な庇護にいつか痛い目に合うのだろうなと思った。いや寧ろそうしてくれないとこの最低な人間は後悔なんかしないんだろう。痛めつけられないと人間過ちなんて本当の意味では理解しないのだ。


「なになにー?何の話してるんだぜー?!」

「海堂には関係ないってーあっち行っててよー」

「そうよそうよー」


急に目が痛くなる金髪が現れた。周りの女子からは煙たがれるというか空気読めと冷たくあしらわれている。こいつは…と思いつつも、心の奥では海堂に感謝していたなんてこの時の私は気づかなかった。



「酷いんだぜー!俺っちも仲間に入れて欲しいんだぜ」

「あのねぇ海堂にはまだ早いかもしれないけど、これは女子トークなの!男子禁制!わかる?」

「そうよ!でも、海堂みたいなお子ちゃまにはちょっと早いかもしれないわ」


きゃはははと笑う女子達に海堂はまた酷いと叫んでいたが、女子トークもクソも無いだろうと私は思った。愚痴で麗花ちゃんを妬んでただけじゃないか。それを止められなかったのは私だけど。確かに麗花ちゃんの行動には鳥肌が立つし、なんだこいつと思うことはあってもそれは当人たちが幸せだからいいんじゃないのかと私は考える。さすがに時と場所を選んでくれとは思うが。


「あっ!そうそう。山田、さっき進藤センセーが荷物運んでくれる生徒探してたんだぜ!」

「え!?うそ、行かなくちゃ!」

「加賀も、(けい)が今また廊下で迷って困ってるみたいなんだぜ!」

「楢原君のためならどこにでも行くわ!!」


ぴゅーっとこの場から消えた女子の中心的な2人が消えたことによって、周りの女子たちもバラバラと散り席に戻って行った。

恋の力ってすごいなと感心していたら海堂が耳元でぼそっと呟いた。


「お前だけは失望させないことを願ってるぜ」


じゃあな!と席に戻った海堂にその言葉の意味はなんなのかといつもと違う海堂はどうしたのとか色々な感情や気持ちがグルグルしていっぱいだったのだ。




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