始動の音
「…さん」
何かうっすらと聞こえた気がする…
「…さん!」
まだ聞こえる…いったい誰の声なのだろうか…そう思った刹那…
「松田七さん!」
自分の名前が呼ばれた。
その瞬間自分の中にある心臓に火が付いたかのように目が覚めた。
「ここは…一体…?」
”がばちょ!”という効果音がなってそうなぐらいな勢いで起きたは良いが、あたりを見てみれば自身がいつもいた世界とは全く違う…いかにも天国といった感じの世界であった。
「目は覚めましたか…?」
目の前の景色に混乱する私に対して、気弱そうな少年の天使が私に声を掛けてくる。
あまりにも現実離れした光景に対して逆に落ち着いたのか、おどけてこう返した。
「やっぱ…ここって天国的な何かですよね?」
そんな軽すぎる疑問に少年天使は答える。
「そうです。当然ですが、現実世界のあなたはもう亡き人です。」
「マジかー」と頭の中で思いつつ、死んではいるが走馬灯のように今までの人生と、死因に値することを思い返してみる。
彼の名は松田七。北海道、道東に生まれ、農家の両親と3人の兄弟を持つ普通の男子である。 そのまま流れで地元の普通の高校(という名の農業高校)に通っていた。
よく「女の名前なのに、なんだ男か」と言われるが、もはや慣れてしまって気にしていなかった。
彼が死んだ日…それはいたって普通の冬の日であった。部活としてやっていた卓球の大会が終わった後、いつも通りストーブの前でロボットのプラモデルを制作していた…そして死んだ。
何故かって?答えはいたって簡単。熱暴走を引き起こしてしまったのだ。
さらに持病としてもっていたてんかんが災いして失神。この際に頭を打ってしまった。この当たり所とスピードが運悪くかみ合ってしまい、結果的に脳出血で逝ったのである。
…と倒れたところまでは覚えていたが、流石に最終的な死因までは不明だったがために天使の言葉で少し衝撃を受けた。
納得のいく死因ではあったものの、やはり府に落ちなかった…そう思って曇っていたところに天使からの言葉がかかった。
「やっぱり、まだ生きたりないんですよね?」
その言葉は明るさと暗さを同時に孕んでいたように聞こえた。天使は休むことなく告げる。
「別の世界で、2度目の人生を進みませんか?」
まさしく天の言葉だが、そう簡単に行くのか?と疑問に感じていたところ、天使はさらに告げる。
「今なら3つ特典をつけましょう!これでどうです!」
何故か知らないが、急にうさん臭くなった。頭の中をのぞき見されてる気分だ…そこまでして転生させたいのか!?と感じてしまった…
「そ う で す よ」
脳内で声がした。こいつ…直接脳内に話してきやがった。というか本当にのぞいていたらしい。
とはいえ…”松田七”としての人生に悔いが無いわけではなかった。そのためか彼の答え早々に決まった。
「転生ルートでお願いします。」
天使が某クイズ番組のポーズをして喜んでいた。見覚えがありすぎて、少し笑ってしまった。
その先はもうトントンと進んだ。マジでびっくりするほど早く。まるでゲームの設定画面のような勢いで…
そうして自身の転生先が決まったようで、彼は光に包まれて消えていった。
少年天使の「お元気でー!」という声が最後まで聞こえなくなった瞬間…もう転生先についていた。
「は?」
あまりにも勢いがありすぎて素が出てしまった。ともかく、この転生先での職業は決まっているために最初の村へと向かうことに…
彼…いや彼女の村までの冒険は始まった。




