オマケ
※時系列で言うと、ちょうど第2章の第2話辺り。
『おしょーがつ?』
アタシがあっちで生きていれば、今頃そんな時期じゃないか。
中央市街へと向かう自動列車が来るまでの退屈な合間に、アリサはふとそんなことを思い出して、意味もない些末な言葉を呟く。
「嫌いだった……や、今でも嫌いか。正月の特番も嫌い。おせちも全部嫌い。お年玉も……あぁ、お年玉って、わかる?」
『わかんねー』
「お正月限定の、親とか親戚とか色んな人から貰える特別なお小遣いみたいなモン。……っても、アタシの親は親戚付き合いを嫌うヒトだったから会うことなんてなかったな。親以外じゃ、精々お隣さんに貰えた程度。トータルの額が少ないから遊ぶにしたって限度があったし、ただでさえ少ない友達は旅行やら家族の団欒やらで都合がつかない。何処に出掛けても混雑は必至で、図書館とかそういう落ち着くトコは、年末年始揃って休館日」
『アリサが図書館だぁ? 似合わね』
「よく言われた。でも、テキトーな本を借りて隣にあるデカい公園で読むの、好きなんだけどな。……ま、他の暇潰しって、ゲームとかしてたって案外すぐに限界が来るし、多少我慢して出掛けても、街中あの馬鹿げたお祝いムードが心底ウンザリで、結局何だかアタシだけ世間から爪弾きにされてるような気分になった」
何処を見ても謹賀新年。
恭しく、慎ましく、新たな年を祝福し、祝いの春を迎えましょう。
国語辞典を引けばそうやって出てくるそんなふわふわして胡散臭い言葉を、アリサは鼻で笑っていた。
「羨ましい、って何度か思ったことがある。けど、馬鹿だよなぁって思った方が圧倒的に多い。新年って言うけど、12月31日から1月1日にって移り変わっただけで、劇的に何かが変わったワケじゃない。季節は冬のまんま寒いだけ、おみくじを引いて大吉を引いた人は、次の日から大統領にでもなった? おせちなんて錦玉子以外不味いし、そんなもん食べたってアタシは何時まで経ってもアタシ。他の人だってそうだろうに、何があんなに楽しいんだろうって」
『……詰まるトコ、さ』
自動列車の時刻表に視線を移す。
『アリサは、お正月大嫌いなんだね』
「嫌い、大嫌い」
『……何でそんなコト話題にしたの?』
「……何でだろ」
まだ、来てくれそうにない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




