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すべての その先の 未来

そして、時は来た。


何日も何ヵ月も何年も、闇のなか。

ツィーチェはずっと眠っていた。

ご飯を食べるのも最低限。訓練中に培った断食技術は役に立ったが、これほど食を断つと活動も制限される。

だから、ずっと横になっていた。


ツィーチェの幼かった体躯はすっかり女性らしくなり、もう男の子になることはできない。

その髪は長く、淑やかに波打っている。


がたん。


闇の奥から音がした。

なにかが近づいてくる気配、人の匂い。

辛うじて五感だけははっきりしているので、体は起こせずとも目線を向けることはできた。


「まるで獣だが、美しくなったものだな」


ゆっくりとした口調。

低い声だが、ひきつけられるような物言い。


「窮屈な首輪を変えてやろう」


闇の奥から走り寄る、法衣を着た男たち。

首を起こすのが精一杯のツィーチェに、鉄の鎖をかける。

まるで手錠だ。


「…行くぞ、ツィーチェ。

これから忙しくなる」


からからと車輪の音。

ツィーチェの前には、車椅子に乗る兄――ツヴェルフが現れた。

ぐ、と四肢に力を入れるツィーチェ。

――――目標は、殺す。

しかしツヴェルフは、妹を愛おしそうに見て、笑う。


「私は兄ではない。

からっぽの体に生まれた、兄の心の一部。

周りの者は神と呼ぶがね」


目を丸くするツィーチェ。


「…私はゲルフ。

ツヴェルフの弟だ、ツィーチェより三つ年上かな。

…私と来るか?」


ゲルフとなった兄の言葉に、ツィーチェは笑顔で返した。


「…僕は、」






そしてツィーチェは、立ち上がる。

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