オープニング
(もはや、これまでか)
目の前では、紅蓮の炎が猛り狂ったように踊っている。
1582年6月21日(旧暦・天正10年6月2日)早朝。織田上総介信長はいま、全てを失おうとしている。
京都本能寺に滞在していた信長を、家臣である明智光秀の軍勢13,000人が襲撃をかけた。
本能寺の変である。
討ち入ってきた軍勢を相手に、信長は弓で応戦した。
全ての弓の弦が切れると、今度は槍で数人を斬り倒した。
しかし、相手は多勢過ぎた。
さらには、腕に刀傷を負った。
疲れ果てた信長は、奥の間に引きこもる。
寺にはすでに火がかけられ、信長の寝所にまで及んでいた。
最期を覚悟した信長は、自分の十八番である「敦盛」を謡い舞った。
―人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり
舞いながら思う。
(人生50年、か。もう一度、やり直したいものだな)
舞い終えて、信長は切腹の準備をしようとした。
(いや。どうせ死ぬのなら、最後にアレを試してみるか)
信長の寝所には、奇妙な幾何学模様が描かれている。
魔法陣だ。
(ルイス・フロイスに教わった神下ろしの儀式…)
ルイス・フロイスは、キリスト教の布教のため来日したポルトガルの宣教師だ。
信長が保護してやる代わりに、西洋の科学技術などを教わった。
魔法陣の中央で座禅を組む。
「エロイム・エッサイム、エロイム・エッサイム。神よ。しからずんば全能の者よ。わが前に降臨されよ。エロイム・エッサイム。わが血をそなたに捧ぐなり。エロイム・エッサイム……」
教わった呪文を唱えながら、小刀を自分の腹に突き立てた。
「アメン!!」
突き立てた刃を横に動かす。
腹を真一文字に切り裂く。
血がほとばしる。
そして、魔法陣の中に飛び散った。
「信長の渇望」GAME START
第1話へつづく
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