二百十一話全世界武闘大会前編、タイプ相性は大事です
俺たちは観戦席の最前席で、しのぶと滝汗の試合を観戦している。
しのぶは忍者スキルで滝汗との距離を急激に詰め、アスカ丸で斬りつけた。しかしそれを滝汗は滝汗ソードで軽くいなす。こんな一進一退の攻防が繰り広げられている。
武闘大会本戦三回戦、俺は獣王国で行われた武闘大会で優勝したしのぶに、100万糞ゴールドという大金を賭けている。なんとしてもしのぶに勝ってもらわなければならない。
「頑張れ、しのぶーーー!!」
俺はミーンから借りたメガホンでしのぶに声援を送る。俺の借金は6000万糞ゴールド、ここまででだいぶ負けたので、全てを返すためにはしのぶに勝ってもらうしかないのだ。しかもこの試合、しのぶが勝てば3000万糞ゴールドを回収できるらしい。
頼むぞしのぶ。
「いくでござるよーー!」
しのぶは全力の攻撃を放つ。獣王国の武闘大会で優勝したしのぶを、俺は信じる。
「【滝汗レーザー】」「【火遁の術】」
滝汗から放たれた水のレーザーに、しのぶが放った広範囲に広がる炎がぶつかる!
そして発生した煙により、視界は暗転した。
どっちだ!? 俺はモニターにあるHPバーを確認する。
生存していればHPバーは緑色、ダメージを受ければ赤。HPが0になればグレーになる。滝汗はちょっと緑があって、しのぶはグレーか……。
『勝者は滝汗じゃーーー!!』
「「「ウォーーー!!」」」
「うぎゃーーー!!」
「俺の金が……減ってゆく……」
俺の手元にはもう、300万糞ゴールドしかない。これまでマイナスにならないようにちょびちょびと賭けていたが、ここで大敗するとは……
『いやいや水タイプと炎タイプなんですから、水の滝汗ちゃんが勝つでしょう』
「それはそうやけど俺は信じたかった」
『で負けたと』
「うぎゃーーー!!」
「ゆうた殿、すまないでござるーー!」
戻ってきたしのぶの頭を撫でて慰めてやる。しのぶが優勝したときは滝汗と当たったわけじゃなかったから、やっぱ相性か。
『タイプ相性は大事です』
このように賭けではだいぶ負けているが、試合では順調に勝ち進んでいる。準々決勝の対戦相手は滝汗だ。まあ俺なら余裕で勝てるよな。
「【深淵終焉】」
はい勝ちぃーー! 速射できるようにしといてよかったな。滝汗アクアフォールじゃなくて滝汗レーザーを選んでたならワンチャンあったのに。
「やっぱ制限なしのゆうたには勝てんな」
「HP制限あるけど?」
「それはそうやな」
いやそもそも仮想空間で自分のアバターに憑依してバトルしてるからな。てか急に最先端すぎん?
『女神様の能力が解禁されたからです』
そうなんよな、女神って普通にすごいんよな。なんでもできるし。
というかここからまずい。あと賭けられるのは4試合しかない。優勝賞金は2000万糞ゴールドだから……
足りない!! なにがなんでも賭けに勝たないといけない。
しかしここからは一方的な試合になりそうな対戦カードだ。シオンVSフレアさん、マオちゃんVS死神、えりちゃんVS波だ。最後の試合は面白くなりそうだが、それ以外が一方的な気がする。
というか俺の嫁たち強すぎない? 一戦目とかは獣王とか魔族とか鬼とかいたのに、俺の嫁しか残ってない。嫁つえぇ~
「シオン頼むぞ」
俺はシオンの背中を押した。俺の持ち金を全てシオンに賭けた。氷河期を覚えたシオンが、メテオしか落とせない槍使いのフレアさんには負ける気がしないからだ。
「行ってくる」
シオンは集中しているようだ。シオンなら絶対に勝てる。俺はシオンを信じてるからな。
「【エターナルブリザード】」
シオンに真っ直ぐ突撃したフレアさんはカチンコチンに凍った。うん、そうなると思った。でもその戦法でここまで勝ち残ったフレアさんも十分にすごいと思う。
『タイプ相性だと岩タイプのフレアさんが、氷タイプのシオンさんに勝つはずなのですが……』
「タイプ相性以前の問題な」
フレアさんは知識さえあればできるのに……って誰も教えなかったのか…… また教えてあげるか。武闘大会は何回も開催するやろうし。
次の試合ではマオちゃんが死神を瞬殺した。さすがマオちゃん、俺が全額ぶっ込んだことを伝えたら、ノリノリで死神をワンパンして帰ってきた。
「これが余の力だ」
「ありがとう助かった」
マオちゃんのほっぺたを両手で挟んでスリスリしてあげた。でもマオちゃんは次の試合でたぶんえりちゃんと当たるから、うん、えりちゃんだったら全ブッパする。
さて、そのえりちゃんは波と戦うらしい。もちろんえりちゃんに全ブッパし、全力で応援するつもりだ。波はかなり強敵だ。俺は前に負けたが、えりちゃんなら勝てると信じている。
『全然わかりません! 波属性と全属性、どちらが相性有利なんですか!?』
「どう考えても全やろ?」
『もしかすると全属性に波属性が弱点かもしれないじゃないですか』
確かにその可能性はある。だが、えりちゃんだぞ?
魔法でワンパンでは?
『果たしてそうでしょうか?』
シェータルクローを装備するえりちゃんは、鉄扇を構える波に飛びかかった。
えりちゃーーーん!! なぜ波に近接戦で挑むーーー!?
『そういう気分なんじゃないですか?』
まあ確かに、俺も魔法でいいことをパワーでやっちゃうこともあるしな。
『それは不器用なだけでは?』
「気のせいじゃないですか~?」
『気のせいじゃないですね~』
えりちゃんのパンチは鉄扇にしっかりと受け止められるが、ノックバック効果により弾き飛ばしている。手数を稼いで、波に攻撃させないようにしているのだろうか?
『うーん、えりちゃんの方が消耗してますね』
「結構まずくない?」
『まずいですね、ゆうたさん声を出していきましょう』
応援は力になる。だから声を出しますか。えりちゃんは恥ずかしいからやめてと言ってたが、ピンチなので全力で応援させてもらう。
「えりちゃん頑張れーーー!!」
俺はフェンスに乗り出し、メガホンに声を乗せた。
そしてえりちゃんは俺の声に反応し、こちらを向いて、にっこりとした。
ってなんでこっち見てんの!?
「違う! 違う!」
俺は白い風を纏った鉄扇を振りかぶる波を指さす。そして油断しきったえりちゃんに、波はここ数日の修行で手に入れた最強の技を放つ。
「【大波乱】」
「えりちゃーーーん!!」
大波乱発生中




