27話 ポノラ復活
よろしくお願いします
少女は瞬に抱きつき、頬を彼の胸に擦り付ける。
瞬はポノラの頭を優しく撫でた。彼女の髪は密かな艶やかさを持ち合わせており、部屋の照明を受け、更に妖しい雰囲気を帯びる。
こう見ると、彼らの関係は家族というより主従関係に近いものなのかとも思える。
言い方が悪いが、黒猫と幼きご主人様って感じ?
「皆……ほんとにごめんなさい」
「何度も言ってるだろ。
瞬が悪いわけじゃない。幸い負傷者は出なかったんだから」
痛む首を擦りながら、何度も謝る瞬を慰めるように言った。
続けてサラちゃんも、
「そうよ~。何よりポノラちゃんだって目を覚ましたと思ったら、周りに知らない大人に囲まれてびっくりしちゃうわよ」
と、優しく声をかけた。
悠里とハピネスはすっかり冷めてしまったハーブティーを仰ぐように飲み干す。
特にかける言葉はないらしい。
気にしていないということを遠回しに伝えているのだろう。
「瞬くん……その子はなんで君に懐いてるんだい?
その子、ジュピターのとこじゃあかなりの仕打ちにあっていたそうじゃないか」
ハピネスは不思議そうに尋ねた。
それはたしかにと、思った。この子、ジュピターを見ただけで凄い荒ぶってたもんな。
「研究が休みの日はよくポノラと遊んでたからかな。
ジュピターに頼み込んで何回か」
なるほど。本当に猫みたいだ。
すると、サラちゃんがあたしもあたしもと手を挙げた。
「ずっと気になってたけど、なんでゴスロリなのかしら?
可愛いとは思うけれど」
それもたしかにと思った。
自分で選んだのなら中々……。誰かの趣味ならいい趣味してやがる。
「あれ?言ってなかった?これ、僕が選んだやつだよ。」
お前かい。
マジか瞬。なぜにゴスロリを選んだ。
他にも色々あったろうに。
「ポノラの年齢的にオシャレがしたいかなって思ってネットで色々調べたんだ。この年頃の女の子にはどんな服が似合うのかって。そしたら、親切な人がこれがいいって」
騙されてるぞ瞬。おじさん、君の将来が心配だよ。
「瞬……後でネットの使い方、勉強しような」
「?うん。分かった」
「それにしても……まさかポノラちゃんが怪人だったなんてねぇ」
サラちゃんが頬に手を当て、ポノラを見た。
「それもめちゃくちゃにつぇぇ」と言って、俺はオレンジジュースを最後の一滴まで味わう。
酸味が強く感じた。
「隠すつもりは無かったんです。驚かれないようにポノラが目覚める前に言おうと……」
ポノラが悲しそうな顔の瞬の頬をつつく。
特に理由は無さそうにも見えるが慰めているようにも見える。
「ま、次からは言ってくれや。
──んでもよ……なんだってジュピターは怪人の研究なんてものを?
それもこんな子供使って」
「それは……僕にも分からない。
でも、多分ポノラの英雄戦技が関係してると思うんだ」
あのジュピターを大爆発させたやべーのか。
「どんな能力?」
「それは──」
瞬がそう言いかけると、ポノラは撫でられるのに満足したのかムクリと起き上がった。
すると、悠里を指差した。
「嫌い」
ただ一つだけそう言い放たれた。
唖然。今、部屋にいる人間の表情を説明するならば、これに尽きるだろう。
子供の思考はまったく読めないものだとつくづく思う。
しかし、ただ一人だけそれを意に介さない人間がいた。
当の本人、悠里だ。
「だから?」
冷たくそう言われるとポノラはふてくされて頬をぷっくりと膨らませた。
「ポノラあいつ嫌。瞬なんとかして」
「そんなこと言われても……」
ポノラの子供らしいワガママに困った顔をする瞬をカバーするためにサラちゃんが一つの提案をした。
「そうねぇ……そうだわポノラちゃん」
「なに」と、ポノラは煩わしそうに言った。
「みんなで遊んでみない?」
「は?」
言ったのは悠里だった。
「ふざけるな……もう時間は無いんだ。早いところ計画を進ませるぞ」
「そんなこと言ったって。あなたたちこの子の力が必要になるのかもしれないんでしょ?
この子には協力する理由はない。じゃあどうやったら協力してもらえるか。
協力したくなる人になることよ。
そうするには、まず絆を深めることが重要。子供なら尚更でしょうに」
「瞬はすぐに協力したぞ」
瞬は瞬時に言い返した。
「あれは状況が状況だったでしょ。
そもそも悠里、最初僕のこと信じてくれなかったじゃん」
悠里はぐっと喉を鳴らす。
まあ確かにそうだと、また思った。
悠里が俺からも何か言ってほしそうにこちらを見るが、俺から何か気の利いた言葉が出ると思ってんのか?
言うだけタダだし、言ってみるか。
「そんな何週間も遊ぶわけでもなし、少しくらいならいいんじゃないか?
流石にギスギスしたままは良くない。
ポノラちゃんも良い、かな?」
悠里からは許可を貰わない。
どうせ反対するし。
「……瞬が良いっていうなら」
「良いよ」と即答した。
実際のところ、遊ぶと言ってもそこまで流暢にはしていられないのだ。
サラちゃん曰く、浅草は崩壊した。
その崩壊を起こした張本人はだれか。
そう、悠里だ。
ただでさえ、世間から言われのない非難を受けている中で起きたこの事件。
すがるちゃんと同等、もしくはそれよりも上の怪人と見なされるだろう。
もちろん、悠里は怪人ではない。
しかし、それを一般人は判断することが出来ない。
人類に危害を加える英雄戦技を持つ人間は国民からしたら怪人にしか見え
そうなると、どうなるか。
良く言えば怪人の退治、悪い方だと公開処刑だ。
それも放送コードにひっかかかる程のグロさでだ。
決して健全ではない。だが、国民はそんな些細な事を気にも留めない。
怪人は人間ではないのだから。
どうなろうと、いつかの日曜の朝と同じテンションで見るのだ。
「そうと決まれば話は早いわ。
これから皆でご飯を食べましょう!」
パンと手を叩き、なんともフレッシュな笑顔をして言った。
……ご飯?遊びじゃなくて?
「うふふ。そうよね。遊びとは思えないわよね。
でもねこれはれっきとした遊びよ」
サラちゃんが信者を呼びかけ、キッチンを用意させる。
えっ……これマジで何の時間?




