17話 ヒーローさんたちは東京へ
アジトに戻ると、京介がベッドの中でポノラと一緒に爆睡していた。
それも上裸で。
「おい……起きろや」
京介の肩を揺らし、目を覚まさせる。
京介は眠そうに目を擦りながら上体を起こす。
「んあ?」
「んあ?じゃねーよ!何で寝てんだよ!」
「何でって……眠いから?」
「そうじゃないそうじゃない!
絵面がやばいって言ってんの!
お前そういうキャラじゃねーだろうが!」
なんだこの雑なボケは。
こんなコメントに困るボケを拾った俺を褒めてくれ。
「あらまぁセクシー」
「京介さん……流石に無抵抗の女の子にそれは……」
どこ見てやがるこのオカマ。
瞬はドン引き。当たり前である。
「待て待て!俺の話を聞けって!」
「いいよ。計画を始める前にお前を警察に引き渡す」
「冗談だろ!?待てって!
忘れたのかよ!?俺寝る時、全裸じゃんか!」
あ、そうだった。こいつ、俺の家でも全裸で寝てたわ。
って違うわ待て。お前もしかしてその下履いてないのか?
とりあえず確認もかねて京介に出るようにうながした。
結果、ガタイの良いフルチンの男がゴスロリ幼女の寝ている布団から出てくるという、事案が発生しそうな絵面が濃く出てしまった。
失敗した。中で着替えさせれば良かった。
俺は瞬の目を塞ぎ、どうにか少年のトラウマにならないように善処した。
「……」
「サラちゃ〜ん?どうして凝視してるのかな?
どうして顔を赤らめてるのかな?
やめろよ!?ダメだからな!?小さい子供いるんだから!!」
恋した乙女のように顔を赤らめ、男の全裸を凝視するおっさん。
俺もそこまで理解のある人間では無いからこの光景は少しキツい。
「ん?この人サラちゃんって言うの?
どこの人よ?」
ズボンを履きながら、サラちゃんに顔を向ける。
「こいつはサラ……あれ?フルネームってなに?」
「サラちゃんでいいわよぉ。
別に興味ないでしょあなた達」
「僕は興味ありますよ」
目を塞がれた瞬は穏やかにそう言った。
まあこれから一緒に行動するんだから聞いておきたいわな。
「んー。そうねぇ……分かったわ。
私は猿真健一。
なんか男臭いでしょ?
そこでねハッピーちゃんにあだ名つけてもらったのよ」
ハピネスからもらったあだ名がよほど好きなのか。
サラちゃんは嬉しそうに語った。
本人が本名を嫌がるならサラちゃん呼びでいくのが良いか。
「ふーん。猿真を少し変えてサラちゃんねぇ……中々良いじゃん」
京介は服の首元から顔を出してそう言った。
「そうでしょ」と言わんばかりに鼻を鳴らすサラちゃんだが、可愛くはない。
まあ見方によれば愛嬌があるんだろ。知らんけど。
「よし。待たせたな。
それじゃあこれからどうすんのか教えてくれよ」
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俺と京介が床に座り、瞬とサラちゃんはベッドに腰掛けながら、京介に大方の流れを説明した。
まずは最初に。
サラちゃんがオークション会場を知っているのでそこまでの移動は簡単なのだが、問題はどこでやっているか。
これを話した。
今回のオークションにハピネスは参加していないので、どこで開催されているのかがまったくの不明。
なので全てを片っ端からあたる。
「片っ端からって……どうすんのよ?」
「そのままの意味だよ。
浅草、新宿、八王子、渋谷、そして原宿の5つの会場全てを襲撃する。
まあ向こうも非合法の販売だから大丈夫でしょ?」
「そんな甘い見積もりで……
それになんで僕が必要なの?
ぶっちゃけ僕いらないよね?自分で言うの悔しいけど……」
しょげる瞬に京介は優しく答えた。
「瞬も大事な戦力の一つなの。
それにオアシスがどういうモノなのかを知ってるのは瞬とサラちゃんだけでしょ?
こちら側としては君にも来てもらうとかなり助かるわけよ」
瞬はそれならと頷く。
たしかにそれの方が効率がいい。
サラちゃんは重労働だが、オークション会場を行ったり来たりしてもらい、俺は一人で、京介は瞬と二人で襲撃する。
「簡単に言えばこうだな」
「ん?お前はどうすんの?」
「俺は迎えのサラちゃんに見てもらうよ」
それに念のためだ。
サラちゃんのことはハピネスから信用されてるというから少しは信用しているが、正直信用しきれていない部分がある。
こいつは控えめに言って強い。
多分、京介よりも数段上の強さ。
大体国2つくらいは落とせるんじゃないかな?
「あらやだ。そんなに情熱的な視線を送らないでくれるかしら?」
「見てないわやめろ」
顔を赤らめ、わざとらしく言うサラちゃん。
少し視線を向けたらこれだ。
勘が鋭いだけなのか、それとも強さゆえか。
まあさっきも言った通り後者だろうが。
……熱い視線を送っていたわけでは断じてない。
「行くとこは適当で。
どうせ強いやつなんていないだろうし」
「ん?強いわよ?」
サラちゃんは不思議そうに首を傾げる。
いるのはどうせ、人間のガードかと思っていたがどうやら違うらしい。
「どういうと?」
「あそこの奴らはちょっと異常でね〜。あいつら全員オアシスを使ってるから変なやつらばっかり」
瞬が聞き返すと、サラちゃんは嫌そうに語った。
またオアシスか……。
「オアシスを使ったら死ぬんじゃなかったのか?」
「僕も初耳だよ!
ジュピターも実験で使ったけど大抵の人は死んでたよ。生きてたのはこの子だけ」
ポノラを見やる瞬にサラちゃんは驚いたように言う。
「それは原液の……ってええええ!?
この子原液耐えたの!?
普通は何千分の一に薄めないと飲めたもんじゃない劇薬よ!?」
やべーなオアシス。それにオアシスを使った後の人間を俺はよく知っている。
たしかに、あれはちょっとおかしい。
簡単に人間を超えた存在へと昇華させるあれは、人が使っていい代物じゃない。
俄然、このポノラという女の子に対して興味が湧いてきた。
必ず起こす。
そう奮起して立ち上がる。
「さあ行こうか。
相手がたとえオアシスで強くなっていてもなんとかなるさ。だろ?京介」
京介に手を差し出して言った。
「ひゃはっ!当たり前だろうが!
俺らは最強。あのジュピターに吠え面かかせてやろうぜぇぇ!」
手を取り、勢いよく立ち上がった京介は余裕そうに笑った。
さあ、『オアシス強奪作戦』決行だ。




