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第11話.作戦を立てます

 


 翌日。

 私はリィカちゃんとシルビアちゃんと一緒に掲示板の前に立っていた。


「見てくださいリオーネ様! 私たち全員、同じクラスです!」

「イークラスですわね。おふたりと一緒だなんて嬉しいわ」


 うんうん。五回繰り返した流れだけど嬉しいのは事実。

 掲示板の方を眺めている振りをしながら、私は油断なく周囲を観察していた。


 ……だけどやっぱり、ユナトの姿はないな。ライルが前に言っていたとおり、もう教室に行ってるんだろう。

 クレアちゃんはといえば、さっき見かけたばかり。左側の隅っこに所在なさげに立って、人だかりで見えにくい掲示板を遠くから見つめていたみたいだ。


 本当なら挨拶でもしたいけど、あまり公衆の面前でクレアちゃんと仲良くするわけにはいかない。

 昨日、クレアちゃんにもそのことは伝えていて、本人は少し戸惑いながらも同意してくれた。

 公爵令嬢が平民の女の子に絡んでいる絵面はどうしても目立っちゃうからね。それでクレアちゃんに迷惑がかかったら困るし。


 ……というのをオブラートに包んで伝えたら、「あたしのことをそんなに気遣ってくださるなんて……!」と涙ぐまれてしまった。

 本当は何がキッカケでいじめっ子認定されるか分からないから、予防線を張っただけなんだけど……ううっ、今さらながら良心の呵責! 私ったら純粋な女の子を騙した最低な詐欺師みたい!


 で、でもね。私はふたりを応援する友人ポジの人間として、あまり目立っちゃいけないからさ。そういうことなんだ。うん、そうしよう。


 さて。それじゃライルに見つかる前にさっさと退散しようかな?




 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪




 その日、校舎の見学や説明だけの授業を無事に終えた私は自室に戻り、机の前に座ってぺらぺらとノートを捲っていた。


 ベッドに入るとすぐ眠たくなっちゃうからね。春といっても夜はまだ少し肌寒いので、寮の食堂で作ってもらったホットミルクをこくこく飲みながら、ノートの内容を確認していく。


 ユナトとクレアちゃんの恋のサポートと言っても、具体的に何をすればいいのか?

 フツーの人なら迷うだろうけど、私は筋金入りの『恋プレ』オタク。全ルートの細かいイベント内容は、すべて秘伝の『恋プレノート』にまとめてあるのだ。


 虐めによる妨害サポートは行えないので、私はゲームのイベントをそれ以外の方法で出来るだけなぞって、二人を接近させるつもりだ。

 恋愛は障害があるほど燃え上がるって言うけど、無くたって好き勝手に燃え上がって構いませんことよ?


 確認すると覚えていたとおり、ユナトルートで発生する大きなイベントは主に五つ。



 一つ目――出会い。

 二つ目――お花見。

 三つ目――新入生交流会。

 四つ目――中間試験。

 五つ目――エンディング。



 一つ目と五つ目に関しては全員のイベントで発生する。それ以外はすべてユナトルート独自のイベントだ。

 一つ目の出会いイベントに関しては、本来なら時計塔の裏で上級生に叱られるクレアちゃんをユナトが助けるイベントだけど……これは一応、クリアと言っていいのかな? ユナトは笑顔で挨拶してくれたクレアちゃんのことを、あれでしっかり認識したはずだし。


「となると、次はお花見かあ……」


 お花見が催されるのは四月中旬だ。

 スティリアーナ魔法学園では毎年恒例のイベント。生徒の参加は自由だが、毎年のように学年問わずかなりの人数が参加しているそうだ。


 ニホン育ちの私としてはお花見といえば桜、あるいは梅だけど、この世界ではまったく違う。

 学園に一本しかない桜の樹を見るというより、みんなでワイワイ賑わいながら学園中に咲き誇る見事な花壇を眺め、お菓子を食べたり、駄弁ったり……つまり、ほとんどお茶会か立食パーティ。

 取り仕切っているのは生徒会と学園の教師だけど、食堂の従業員に全面協力してもらい、その日限定の料理やお菓子を振る舞ったりするのだ。


 それが本当に美味しいんだよねえ! 私もループ二周目のときに食べてからすっかり虜になって、それ以降四回連続で食べさせてもらっている。今回もゼッタイ食べるぞ~!


 また、学園の敷地内には大きな池があるので、そこでその日限定でボートの貸し出しも行っている。

 それを知ったときは、私も誰かと乗りたーい! とはしゃぎましたとも。リア充っぽいイベント経験したかったんだもん!


 確か三周目のとき、なぜかそういう雰囲気になってユナトと一緒に乗ったりもしたけど……正直、ずっとドキドキしてたな。逃げられない状況でいつ刺されるか不安で不安で。




 ゲーム内では、リオーネに連れられたユナトは渋々お花見に参加する。


 だが途中でリオーネをうまく撒くユナト。ムカついたリオーネは取り巻きたちと合流するんだけど、そこで一人でポツンとしているクレアちゃんを発見して、八つ当たりで水をかけて虐めるんだ。

 クレアちゃんは桜の樹の下で一人で泣いてしまうんだけど……そんなクレアちゃんをユナトが発見して、「あまりに儚くて、桜に攫われてしまうかと思った」と囁くんだ。

 うはあ、やっぱ担当声優さんの声の良さとスチルの美麗さが相まって、あのシーンはめちゃくちゃ好きだなあ。何度思い出してもキュンキュンしちゃうよ。


 よくよく考えるとユナトが逃げ出した所為でクレアちゃんが虐められてる気がするけど……そこには触れないでおこう。何せ今の私は虐めの主犯、リオーネ・カスティネッタ……ユナトより立場は下だ。


 私は涙ながらにホットミルクをスプーンでぐるぐる、ぐ~るぐる。

 せっかくならチョコスプーンが欲しかったな。カスティネッタの家だとお願いすると専属の料理人さんが用意してくれたんだよね。

 ビターチョコに、ホワイトチョコやストロベリーチョコ。

 ハート型や星型の、甘いマシュマロがスプーンの先についていたこともあった。私はそれに気がつくと嬉しくて、ねえお兄様これ見て? って見せびらかしたものだった。


 ……いいえ我慢よリオーネ。夜に甘いものは、おそろしいほど太るのだから!




 で、お花見の場にユナトを引っ張り出すのは問題ない。ゲームと違って、アイツは無類のお花見大好きお祭り王子らしく、ループした五回中の五回とも、私をお花見の相手に誘いに来ているし。

 まあ、春は虫が活発化するシーズンだからね? 虫除けスプレーを連れて歩きたいお気持ちは分かりますけれども?


 私はイベントの最中、そんなユナトをどうにかして桜の樹の下に誘導しなくてはならない。

 そしてクレアちゃんにも、そのタイミングに合わせて桜の樹の下で待機してもらわなくては。

 クレアちゃんを泣かせるわけにはいかないので、素面で会ってもらうことになるが、そこは彼女の類い希なる魅力でどうにかなるはず。


 仲人のリオーネおばさんもがんばるから……頼みますよ主人公。

 ばっちり桜に攫われそうになってちょうだいね!




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― 新着の感想 ―
[一言] さてさてシナリオ通りに進められるのやら…(笑)
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