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もしかして

神様。私、何か悪いことでもしてしまったのでしょうか。


鏡を見つめると、どんよりした目が見つめ返してくる。


これは一体、何の拷問なのだろう。



私の身を包むは、クリーム色のボリューミーなドレス。そのそこかしこには色とりどりの小さな花飾りが散りばめられているのだが、私にはボルダリングの壁にしか見えない。全面には巨大なリボン。手首に付けられた謎のシュシュのような飾りも、邪魔くさいし今すぐにでも外したい。

靴は黄色。

そして、髪型はツインテール。……ツインテール。出来れば一生したくなかった髪型。しかも髪を飾るのはこれまた大きなアザレアピンクのリボン。


母上。私に死ねと?死ぬほどの大恥をかけと?

そう言いたくて仕方なかった。

でも、すごく嬉しそうに楽しそうに


「特注で作って貰ったのよ!やっぱ可愛いわ〜!流石ね、キャサリン!せっかくのパーティーだもの、可愛くしなくっちゃね!」


なんて言われちゃ、とてもじゃないがそんなこたァ言えませんよ。




時は夕刻。私は、パーティー会場に付いた。パーティーはまだ始まったばかりだった。


自分ごときが注目されるはずはないとは分かっていても、やはり、消え入りたくて仕方ない。

周囲を見渡す。

ほら、皆もっとオシャレな格好してるよ……いや、微妙な格好の人らもいるな。良かった。

大丈夫、ここに仲間がいるぞ、恥じ入ることなど無いんだぞ!と心の中でエールを送っておいた。バチコーン、とウインクも添えて。



「キャサリン」


涼やかな声がした。

慌てて振り向き、そのまま勢いよく礼をする。


「おはようございます!あっ、ちがう、こんばんは!!」


顔を上げれば、目の前にはあの方の姿が。

細い肩紐で吊られたライトグレーの上品なドレス。髪型はツインテールで、それを飾るは白いリボン。同じツインテールでも、私とは雲泥の差だ。


あぁ、私は今この格好を彼女の目に晒しているのか。死にたい。


ポーラ様が、じいっとこちらを見つめる。どうなさったのだろう。

次に体を捻ってご自身の腰の後ろあたりをご覧になり─────そこにはリボンがあった───その後また私を見つめる。そして、自身の髪に触れる。



「おそろいね」


女神が微笑んだ。


どうしたことでしょう。遥か彼方の空に、天からお迎えが……。

ふらついた私は、誰かにぶつかってしまった。


「すすすすすみません!」

慌てて身を起こし振り返ると、そこには。


「きみ、大丈夫?」



ぎょああえああ!?

ベベベネディクト様じゃないですか!!


タキシードがシャツ含め真っ黒なので、明るい金髪がよく映えている。ポーラ様の時のような感動はないとはいえ、やはりテンションは上がる。


じゃなくて。ベネディクト様じゃん。次期侯爵じゃん。



「たたた大変失礼致しました」


さっと礼をし、謝罪する。


「いいよ、大丈夫!」


彼も慌ててそう言った。


「ありがとうございます」

「うん。それでえっと……あ……」



彼の視線がポーラ様に止まった。


「ポーラ・オリヴィエ辺境伯令嬢様ですね。初めまして。僕はベネディクト・ナイトリーです、お見知りおきを」


と言い、綺麗にお辞儀すると、ポーラ様のお手を取って甲にキスをした。

ポーラ様は黙って頷いた。


おのれええ……紳士の嗜みとはいえ、ポーラ様の美しいお手に……。



続いて彼は、こちらを振り返った。


「ごめんね、きみは、えっと……」

「キャサリン・クラリスです、お初にお目にかかります」


ごめんね、とは何だろう。後回しにしたことへの謝罪か?気にしなくて良いんですよ、私はそれに関しては気にしてないんで。


「ええと、クラリス……あ、クラリス男爵家か。すみません。キャサリン・クラリス男爵令嬢。初めまして、ベネディクト・ナイトリーです。お見知りおきを」


と私の手の甲にもキスをする。律儀っすね……。



つい、と袖を引かれた。

その犯人はポーラ様だった。


「どうなさったのですか、ポーラ様」

「あちらにおかしがあるわ。たべましょう」


およそ高貴な令嬢らしからぬ言葉。


「引き止めてしまってごめんね」

「いえ、こちらこそ失礼致しました、それでは……」


いい加減な返事しか出来ないまま、ポーラ様に引っ張られて退場する。


彼女は、お菓子の並んだテーブルの前まで来ると、ぴたりと立ち止まった。でもお菓子を食べようという素振りはない。


「どうなさいましたか、ポーラ様」

「キャサリン」

「何ですか?」


何だろう。


「ナイトリーと、なかよくなりたい?」


ベネディクト様のことですよね。


「え、いえ……」


いや、どうだろう。友達になれたら嬉しいかな、とは思わなくはないかな?それよりポーラ様と仲良くなって欲しいし……いやでもそのためにはまず私が友達になっといた方が良いのか?


ポーラ様を見ると、何か不服そうな顔をしていらっしゃる。どうなさったのだろう。


考えた私は、一つの可能性に思い至ってしまった。

いやでも。そんなまさか。



「……ならいいわ」


彼女はほっとしたように言った。


私はぶっ倒れた。


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