第四章 第三話 剣の楽園にて
ユウリエは背負っていた縦長の荷物を降ろすと少し鋭い視線をエランに送りながら口を開く。
「さて,それじゃあエラン,一つずつ説明して貰いましょうか。なぜ剣の楽園を出たのかしら?」
「目的は幾つか有る,一つは姉さん達を追う為に」
「……相変わらず端的な話し方ね。まあ良いわ,貴方が剣の楽園を出てここに居るという事はイブレの力を借りたって事よね?」
「うん,姉さん達と同じように旅の仕方を教えて貰った」
「エラン,それがどういう事か分かっているの?」
「充分に分かってる,だからスレデラーズを集める旅に出た」
「スレデラーズを集めるね,エランはそんな事をする必要はないでしょ。大人しく剣の楽園で過ごす事は考えなかったの?」
「無理,姉さんがあんな事をしたから。だからイブレに全て教えて貰った」
「そう,全てを知った上での行動なのは分かったわ。それで私達を追ってどうするつもりだったのかしら,もしかして仇討ちなんて言わないわよね」
「違う,ただ理由が知りたい。それはイブレも同じ」
話がイブレにも振られたので自然とイブレはエランの隣に並ぶとユウリエに問い掛ける。
「ここで再会したのだから僕はユウリエ,君に問い掛ける事を止める事は出来ない。だから答えて貰おう,何でスレデラーレを殺したんだ」
「その答えは簡単よ,全ては主の為にやった事よ」
「君の主なんて存在しないだろっ!」
「それは貴方の主観でしょっ! 私達は自分の意思で主を決めたのよっ!」
「くっ」
「なら,話してあげるわ,あの夜の事と剣の楽園での事を」
「それなら振り返る意味でも僕も話そう」
世界の中心から北部にある広大な大陸をアクロライト大陸と呼んでおり,その大陸北部は荒廃地域と成っており,人どころか草木すら生えない死の大地と成っていた。だが,そんな荒廃地域に世界一の名工と呼ばれたスレデラーレは居を構える事にした。全ては自分が思い描いている剣を作る為に。
スレデラーレは荒廃地域に独自の道を見つけると巨大すぎる工房を作る事にした。そして,とある交渉が成立して工房造りを手伝ったのがシャルシャ家,イブレの一族が秘密裏に力を貸していた。そのおかげで晩年のスレデラーレは誰の目にも触れる事なく最強の剣を作る為に研究と制作に没頭していた。
それ以前のスレデラーレはとある結論に達していた。どれだけ強力な剣を作ろうとも使い手が使い熟していなければ剣の力は発揮されない,だったら使い手も作れば良いという結論に。そこでスレデラーレが目を付けたのは裏世界では世界最高峰と言われる錬金術士の一族,シャルシャの一族と接触して交渉を成立させたのだ。交渉内容は技術交換,つまりシャルシャの一族から一人弟子を持つのと対価に錬金術の知識を手に入れる事がスレデラーレの狙いだった。そこで長い議論の末にイブレがスレデラーレの弟子として行く事に成った。
イブレがスレデラーレの工房に辿り着くと驚くべき事が行われていた。シャルシャ家では禁忌とされていた人工生命,ホムンクルスの製造が行われていたのだ。イブレはその事をスレデラーレに問い詰めるとあっさりと答えが返ってきた。『最強の剣を作る為には剣を振るう者も作る必要が有った』と,つまりスレデラーレは最初から錬金術の禁忌で有るホムンクルスを作ったのは,自分が作った最強の剣との波長が合う人間を作り出す為だ。
全てを知ったイブレは事が遅かった事を痛感する。既に二本の剣,ガンギエスとイクスエスは完成しており,ユウリエもイブレが工房にやって来る時には既に作られていたのだから。そして,この後にエランが作られ,後に最強の盾としてハトリも作り出される事に成る。そう,エランとハトリはスレデラーレによって作られたホムンクルスだった。そしてユウリエとエランが作られる前に数多い失敗作が多く存在しており,それは工房の地下で唯々存在し続けた。
自分達の技術が他人の手で禁忌に至るまで作られた事に罪悪感を感じたイブレはスレデラーレの弟子を止めてユウリエの教育者として名乗りを上げた。なのでイブレがスレデラーレに教えを請うた事は一度も無い,それ以上に作られてしまったユウリエを一人の人間として育てる事に邁進する事にしたのだ。もちろんユウリエをガンギエスが使えるようにするのが前提とされていたが,イブレはユウリエにいろいろな事を教えてガンギとの訓練も欠かさなかった。なのでスレデラーレは自らの工房を剣の楽園と名付けてユウリエの訓練場も作り出した。
ユウリエの訓練が行われている間にスレデラーレはイクスエスの使い手を作り出そうと必死になっていたが,イブレはユウリエの事で精一杯だった為に止める事が出来なかった。それ以前に狂気染みたスレデラーレを自分では止められないと思い込んでしまっていた,そうしているうちにエランが作り出された。
作り出されたエランにイブレはユウリエの妹だと教える,そう説明するしか出来なかった。そしてエランには姉妹という概念から教え,そのままエランの教育係も引き受ける事に成った。その頃にはユウリエはスレデラーレの手伝いが出来る程に知識を身に付けており,外に出る用事が出来るようにイブレと共に旅に出て,旅の仕方を教わっていたのでスレデラーレは外に用事が有る時にはユウリエかイブレに言い付ける事が多くなった。そうして成長したユウリエは確実に最強の剣となりかけていた。
その一方でエランもユウリエから戦い方を学び,イブレから知識を学んでいた。剣の楽園にある訓練場,円形の広場を白い柱が建ち並んでおり柱の間には木々が植えられていた。そこでエランはユウリエから死落舞ともデスティブとも呼ばれる戦い方を訓練していた。この戦い方もスレデラーレが考案したモノで有り,その実用性はユウリエが外に出て戦う事で証明された。なので三十本と決められたスレデラーズの幾つかはエランの為にユウリエが集めた物だ。
ユウリエが持ち帰ってきたスレデラーズをイクスが喰べる事でイクスはスレデラーズの特性を吸収して自分の能力に出来る剣として作られたからだ。こうしてエランとイクスはスレデラーズの能力を会得していった。それでも基本としての戦い方ではエランがユウリエに勝る事はなく,訓練の日々が続いた。そのうちスレデラーレは剣だけでは不足と考えるようになり,新たなホムンクルスを作り出す事に没頭した。自分の技術と錬金術の秘術を用いてスレデラーレは最強の盾となるハトリを作り出した。
この事が更にイブレの頭を悩ませる事になった。なにしろ生み出されたエラン達は見た目は少女だが知識や意識は何も知らない赤子と同じなのだから,ハトリにも常識という概念から一つずつ教える事になった。だが,幸いだったのはエランが物覚えが良かった事だ。一から十を得る,それが出来たからこそエランは急速に成長する事が出来ていた。とはいえ,少しずつ成長をしていくエラン達を見ていてイブレは時折楽しいと感じる時もあり,ユウリエ達も含めてエラン達との時間を大切にしていた。それはエラン達も同じで有った。
スレデラーレがその様に作ったのかは分からないがハトリも物覚えも良く,それ以上に性格的に成長するのが早かった。なのでユウリエやエランの後に作られた存在だが,イブレが常識という概念を教え終わる頃には今の性格と知識を獲得していた。だからこそ,エラン達というホムンクルスが作られた事を実家に帰っては一族で情報を共有してスレデラーレに関して相談し合う時間が取れた事はイブレにとって心が軽くなるのを感じた。そして剣の楽園に行ってはエラン達と楽しい時間を過ごす,イブレはこのような時間が続くと思っていたがそれは突如として破られる事になった。
イブレが実家に報告へ帰っている時だった。エラン達はとある夜に寝ようとすると突如としてスレデラーレの命乞いに近い悲鳴を聞くとスレデラーレの部屋に向かった。そしてスレデラーレの書斎に辿り着くと,そこには真っ二つに斬られてたスレデラーレの姿と血濡れたガンギに返り血を浴びたユウリエの姿が有った。最初は何が起こったのかエランは分からなかったが,現状を見る限りではユウリエ達がスレデラーレを殺したのは確かだからこそエランはユウリエに問い掛ける。
「ユウリエ姉さん,何でこんな事を?」
「もちろん主の為よ」
「イブレはユウリエ姉さんには主はいないって」
「それはイブレの主観でしょ,私達を所有する主は確実に存在するからこそ私達は行かないといけない」
それだけ言うとユウリエはガンギの血を払うと背中に背負っている鞘にガンギが収まると未だに言葉が出ないエラン達の横を通り抜けて,そのまま姿を消すように旅に出てしまった。そしてイブレが戻って来るとエラン達が既にスレデラーレを弔っており,何をすべきか分からないという状態だった。
一連の騒動を順番に辿るように語ったイブレとユウリエは少し話し疲れたのか,少しだけ黙り込むとその間にイクスがガンギに問い詰める。
「ガンギよぉ,俺様達はスレデラーレの仇を討とうとは思ってねえが,あれだけの事をしでかして,しかもさっさととんずらしか事には納得はしてねえんだよな。俺様達にもいろいろと話す事が有るんじゃねえか」
「分かっていないようだから改めて言おう,イクス,お前達に我から言うべきとは何一つもない。それが全てだ」
「それで納得が出来ねえから話せって言ってんだよっ!」
「お前は相変わらず感情的になるな,自分が剣だという事をしっかりと認識しているのか」
「話をずらすんじゃねえよっ! 俺様が言いたいのはテメー達が何で俺様達に何も語らずに置いて行ったって事だよっ!」
「子供でも有るまいし,作られてから何十年が経っていると思ってる。それとも未だに子守が必要なのか」
「はんっ! そういうテメーは未だに自分の意見が持てねえみたいだなっ! それとも俺様達は対等に話をする価値すらねえって事かっ!」
「なら我の意見を言ってやろうか,片割れのユウリエと同じだ。お前達に語る事は我は何一つして持ち得ていない」
「つまり,未だにだんまりって事かよ……」
最後には言葉を無くしてしまったイクスがエランの背中で刀身を震わせて鞘とぶつかり合い,小刻みに音を鳴らすと今まで黙っていたエランが口を開く。
「ユウリエ姉さん,私達はただ知りたいだけ。主とは誰なのか,そしてユウリエ姉さんがスレデラーレを殺して姿を消した理由を?」
「……話すことは一つとして無いわね」
「それで私達が納得するとでも?」
「別にエラン達に納得して貰う必要はないわね,私達は私達の意思で主に使ってもらう事を決めたのだから。そこにエラン達が介入する理由は何一つして存在していないわ」
「けど私達には介入する理由はある,スレデラーレを殺した理由に最も大事な理由,何で私達を置いて旅に出てしまったのか。あれから姉さん達を待ったけど帰っては来ないし,この偶然が無かったら私達は再会する事も出来なかったから」
「全く皮肉めいた偶然よね」
「いや,偶然とは限らないかもしれないよ」
イブレの言葉に反応するエランとユウリエ,そんな二人にイブレは偶然では無い理由を話し出す。
「ユウリエは知らないだろうけど,エランはあの夜の後にスレデラーズを集める旅に出た。そして次に標的は戦場の黒き死神だった。けど,こうして再会したからには結論は一つしかない。僕は黒き死神という異名を別の異名と結び付ける事をしなかった,それはあまりにも違いすぎたから。けどこうしてユウリエ達と再会したから導き出される結論は一つ,戦場の黒き死神と黒耀妖精と呼ばれていたユウリエ達が同一人物だったという結論がね」
「今更何を,っ! まさかっ!?」
「そうだよユウリエ,白銀妖精はエラン達の事だ」
「そう,そういう事だったのね」
「ユウリエが持っている見慣れない袋,その中には今までユウリエが集めたスレデラーズが入っているはずだ。同じスレデラーズを探している者同士,持っている可能性が有るのなら当たってみるのが当然だ。つまりユウリエは白銀妖精がエランとは知らずにスレデラーズを持っており,近くを通ると思い探していた。僕達は黒き死神がユウリエの異名黒耀妖精だと知らずに,黒き死神がスレデラーズを持っていると考えて同じく近くを通ると思い探していた。後はお互いに持っている可能性という考えがイクスとガンギ,エランとユウリエ達の共鳴を呼んだという訳さ」
「偶然から生まれた必然という訳ね」
「うん,それなら尚のことユウリエ姉さんには話して貰わないと納得出来ない。この偶然を無駄には出来ないから」
「相変わらず好機を逃さないのね。けど,その前に私の質問にそろそろ答えて貰いましょうか。エラン,貴方は何故剣の楽園を出てスレデラーズを探してるの?」
「長く話すのは嫌い」
「だったら僕から話そう」
「相変わらずね。まあイブレなら一つ残らず話すでしょうから聞いてあげるわ」
ユウリエがそう言い切るとイブレはあの夜に後に剣の楽園に戻った時から語り始めた。
剣の楽園に戻ったイブレはハトリからユウリエ達の事を聞いた。それを聞いた上でイブレはエラン達に全てを教える覚悟をした,自分達が作られた存在である事を,だからイブレはエラン達をある場所へと連れて行った。そこはエランやユウリエ,そしてハトリが作られる前に作られたホムンクルス達が眠る場所。剣の楽園の地下にあるスレデラーレが失敗作として,そして研究対象として残したいた場所だった。
エラン達は自分達と似た姿をしている少女達が保存液の中で唯々眠り続けている様に存在している事を,この時初めて知る事に成ったのだ。名前すら与えられなかった姉妹が数え切れないぐらいに唯々眠り続けている事をエラン達は知った。そしてイブレはエランに尋ねた,これからどうしたいのかを。だが,その質問にエランはすぐに答える事が出来ずに唯々目の前に広がる現実に打ちのめされていた。
イブレは質問だけを残してハトリと共に地下を出た。それはエランなら,これからの未来をしっかりと見つける為にしっかりと自分達の過去を見詰める事が出来るという確信が有ったからだ。それから数日の間,エランは考え続けた,地下で眠り続ける姉妹の事,理由も告げず姿を消したユウリエ達の事,そして何故自分だけがイクスと波長が合ってしまった事を。様々な事をエランは考え続けた。そんなエランをハトリは心配そうに世話をするしか出来なかった。その間にもエランは着々と答えを出し続けた。
表面では見えないエランは結論に至るまでの道を着実に進んでいた。そして一ヶ月ほど悩んだら,遂にエランは一つの結論へと辿り着きハトリとイブレにもそれを話す。まずはユウリエ達を追う事,その為に自分達がもっと強くなる必要が有るという事,そして最後に帰る場所を無くす事,この剣の楽園が有る限りでは,ここに執着してしまう事を懸念しての結論だ。そして,それを聞いたイブレは再びエランに問い掛ける,これからどうするのかと。
イブレの問い掛けの今度は迷う事無くエランは答える。旅に出たいから旅の仕方を教えて欲しいと,そしてこの剣の楽園を完全に消し去りたいと,そんな要望を出してイブレはエランの答えを真剣に受け止めて実行する方法を提案するとエランは頷いてイブレの提案通りに剣の楽園を壊す事になった。とはいえ材料が限られている僻地にある剣の楽園だからこそイブレは施設の装置を暴走させて破壊する事にした。そしてエラン達に旅に必要なモノだけを持つように指示して旅に備えさせる。そして遂にエラン達が剣の楽園を去るのと同時に破壊する日が来た。
エランは未だに忘れる事が出来ない夜,そう剣の楽園が炎に包まれて名も無き姉妹達が目を覚ます事無く炎に消えて行った。その事にはエランは決意は出来てた,ハトリは少し心配そうな声を出していたけど,旅に出たら順応する事に集中したから問題は無かった。イクスは最初からエランと同じく決意を持っていた,そしてイブレがエランに尋ねるとハッキリと答えた『私達が最強の剣に成る』と。そしてエラン達は剣の楽園を名もなき姉妹達の墓標として確実に焼き尽くされる事をイブレに確認すると,そこで夜を越してから旅に出るのだった。
イブレは語り終えると全てが終わったように息を吐いたが,逆にユウリエは顔を伏せて微かに震えていた。そんなユウリエを見たエランは表情を崩す事無く,唯々ユウリエからの言葉を待つ。そしてユウリエは自分の中で整理を付けるとエランに激しく問い掛ける。
「エランっ! どうして名もなき姉妹達を殺したのっ!?」
「それが私に出来る弔いだから,誰も帰らない場所で存在し続けるよりかはしっかりとケジメを付けた方が良いから」
「これがケジメと言えるのっ! 貴方は自分の都合だけで剣の楽園を壊しただけでしょっ!」
「半分ぐらいは否定しない」
「半分っ! エランっ! 貴方にとってはその程度の事なのっ!」
「剣の楽園を捨てたユウリエ姉さんには,既に関係無い筈」
「っ! ……そう,全ては私達が悪いと言いたいの」
「そうは言わないけど,全ての発端はユウリエ姉さんにある。だからこそ私達は理由を知りたい,私達を置いて行った理由を」
「まるで他はどうでもいいって言い方ね」
「……そうかもしれない,私にとって重要なのはそこには無かったから」
「そうかしら,私にはエランは重要なモノを切り捨ててここに居るように聞こえるけど」
「それはユウリエ姉さんにとって重要なモノ,私達にはそれについて理解も介入する事も出来ない。そうしたのはユウリエ姉さんだから」
「それはエランなら分かってくれると判断したから,けど違ってたみたいね。私にはエランが分からなくなってきたわ」
「私はあの夜からユウリエ姉さんの事が分からないまま」
「そう,結局はお互いに理解は出来ないという事かしら,なにしろ私とエランは違う思想から作り出されたんだから」
「それは関係無い,私は考えた末に出した決意と覚悟。だからユウリエ姉さん,話してほしい。姉さんの主に付いて,何であの夜に去って行ったのかを」
「何度も言わさないでちょうだい,話す事は何一つして無いわ」
「なら話は何時までも平行線で進まない,私達から話す事はもう無いから,それしか私達を納得させる方法は無い」
「あら,方法なら有るわよ」
言い放った後に右手を斜め上に挙げるユウリエにハトリとイブレは驚き,エランも困惑の表情を浮かべる程だった。そんなユウリエが微笑みながら言葉を放つ。
「力尽くで追い返すという方法がね,ガンギ,良いわね」
「了承した」
「そうユウリエ姉さんがそうするしか無いなら,私もそうする」
エランも右手を斜め上に挙げてユウリエの意思に答えるように応えるように戦う意思を見せた。だからエランとユウリエは躊躇う事無く,それぞれに次の言葉を口に出して片割れ達がそれに応える。
「ガンギ」
「イクス」
「承知した」
「いくぜっ!」
イクスとガンギが同時に鞘から飛び出ると半回転してエランとユウリエに握られるとエランは続け様に言葉を放ち,ユウリエはそれが終わるまでガンギを肩に掛けながら待つ事にしている。
「イクス,オブライトウィング」
「おうよ」
イクスが白銀色の光りに包まれる刀身から翼が生えて羽根が周囲に現れては落ちて消えて行く,そして白銀色の光が消えるとイクスから生えている翼が一回だけ羽ばたく。そして次にエランが剣を抜く。
「抜刀,フェアリブリューム」
エランの中で剣が抜かれると切っ先が天を衝き,エランは白銀色の光に包まれて背中から翅が生えると白銀色の翅が砕けて独特の紋様を浮かび上がらせる。そしてエランを包んでいた白銀色の光が消えるとエラン達の戦闘態勢が整う。だが,あまりにも自然な流れで戦う事に成っている事に今まで黙り込んでいたイブレが言葉を放ってくる。
「待つんだユウリエにエランっ! ここで君達が戦う必要なんてないだろうっ!」
「そうですよ,エランにユウリエも止めるですよ」
ハトリまで止めに入ってくるが時既に遅しと言わんばかりに二人は戦う覚悟を示し,戦う事は回避する事が不可能だ。そんな中でユウリエがイブレに向かって言葉を放つ。
「イブレ,ここまで散々言葉を交わしたけど貴方達は納得しないでしょ。だから力尽くという手段になるのは当然の事よ」
「つまりユウリエの主はエランを倒してまでスレデラーズを集めるという訳かい?」
「個人の想像にまで介入するつもりはないわ」
「そんなんじゃ納得なんて出来ないですよ」
「ハトリ,貴方に納得して貰う必要はないと何度言えば分かるのかしら,今のハトリはまるでだだを捏ねている子供ね」
「子供でも構わないですよ,だから二人とも戦わないでほしいですよ」
「無理」
「エランっ!」
「もう戦う以外の道はない,そうしなければユウリエ姉さん達から何一つとして聞く事がかなわないから」
「あら,私達に勝つつもりなの,エラン。今までの訓練で一度でも勝った事はないでしょう」
「あれから私達も成長した」
「そうでしょうね,けどエラン,成長したのは貴方達だけじゃないのよ。私達もしっかりと成長しているのだから」
「分かってる,それでも姉さん達に追い付いてる可能性は有る」
「過大評価は危険と教えたつもりだけど,それを聞いても退かないのでしょうね」
「もちろん」
「ほら,イブレ,もうこれしか道はないのよ。だから黙って見ていなさい」
「……」
ユウリエの言葉を聞いて言葉が出ないイブレは,唯々顔をしかめる事しか出来なく,ハトリは今にも泣きそうな顔でエラン達とユウリエ達を見詰めていた。そして横槍もなくなった事でユウリエは始めようと言わんばかりに右横に構えると,エランもイクスを右横に構える。こうして二つのスレデラーズ,白と黒のスレデラーズがぶつかり合う戦いが始まるのだった。
さてさて,今まで秘密とされていた事を一気に明かしてみたけど,如何でしたでしょうか。まあ,かれこれと伏線を張りまくってましたけど,ここで一気に回収したかなと思っております。これで序章で何が起こったのかも分かったでしょうから,読んでくれた方が驚いてくれたのなら成功ですね。いや~,途中で少しだけなら書いても良いかと思い,伏線として書き続けたのでバレないかと心配する程でしたよ。まあ,何にしてもこれで全ての伏線を回収が出来ないですが,書きたかった事は書けたかなと思っております。
さてはて,まあ,ここに来てまた一つかな? 謎も出て来ましたけど,その答えも……今回は書きません。まあ,いずれ書くのかなと思っている次第でございます。何にしても未だに秘密が多いユウリエ達ですが,その答えもいつかは書けたら良いなと思っております。まあ,そこまで書き続けるかはまだ決めていませんけどね。でも,ぼちぼち評価と感想を貰っているので,このまま書き続けても良いのかなと思っている次第でございます。
さてさて,何かいろいろと書きすぎててゴチャっとしていないと良いのですが,まあ,分かり易く時間軸で書きましたので,分かり易くなっているとは思っております。まあ,何にしてもここまで書けた事で一安心しております。と,心境を書いたところでそろそろ締めますか。
ではでは,ここまで読んでくださりありがとうございます。そして,これからもよろしくお願い致します。更に評価と感想をお待ちしております。
以上,伏線回収をしってやったぞっ!! と叫びたい葵嵐雪でした。




