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白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第三章 バタフライフェザーカノン
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第三章 第二十五話 一時の休息

 スノラトの下に命令書が届くのと同時に援軍の詳細まで記載されていた書類まで受け取ったので,早速とばかりにスノラトは各隊の隊長を集めて軍議を開いた。とは言ってもスノラトが一方的に援軍の詳細を述べているだけで有り,その詳細はこのように成っていた。

 援軍として向かわせた兵力は十万,それを率いているのはフォルグナー=スノス上級大将である。スノラトがイブレの助言で作成した地図を使っているので,援軍が到着するまでの数日間は引き続き,山頂近くの陣営で待機せよとの事。また後続隊として砦の建設をする大工達も向かわせるので必ず守れと命令が下っており,援軍が付き次第スノラトはフォルグナーの下に入れとの内容だ。

 聞いていたフライア兵の隊長達はやっと援軍が来てくれる事を素直に歓喜し,状況が好転した事を喜び合う。だがその中で笑ってはいなかったスノラトが糠喜びだと釘を刺す。なにしろ援軍は到着してはいないし,退いたブラダイラ軍を斥候が追跡していないからには状況が分からないので油断は出来ない。その事を諭すようにスノラトは隊長達に告げる。

 流石に大将たるスノラトの言葉を聞いては素直に喜べなくなった隊長達が静まると続いて今後の事を話し出した。とは言っても最終的にはフォルグナーが決める事なので,今までと同じく周囲の警戒を厳重にしておくように言い渡し,スノラトは軍議の終わりを告げると各隊長達は立ち上がってスノラトに敬礼して天幕を後にする,その中に役目を終えたとばかりにスノラトに一礼して出て行くイブレの姿も有った。

 吉報というのは広がるのが早くてフライア陣営は援軍の話題があちこちで嬉しそうに語られている。スノラトの命で覚悟を決めていたとはいえ,やはり寡兵でロミアド山地に陣取るのを不安に思っていた兵士が多いからだ。そこまで広がっているのだから当然の様にエラン達の耳にも入るが当人達は呑気にお茶を楽しんでいた……久しぶりに加わってきたイブレを含めて。

「いや~,やっと将軍付の軍師を辞める事が出来たよ」

「まだ引き継ぎをやってないから辞したとは言えないですよ」

「その資料は作成済み,後は後任に全てを任せよう」

「なんか丸投げのように聞こえるですよ」

「俺様も同感だな」

「……んっ,どのみち援軍が来ればスノラトも含めて今の上層部は解散」

 ヒャルムリル傭兵団の調理場を借りてアップルパイを作ってきていたエランが,口に入れた一欠片を飲み込むとその様な言葉を発した。

「つまり援軍が来ればそこの大軍師も用済みって事ですよ」

「あははっ,そうなるね。まあ,やっとやるべき事に集中する事が出来るって訳だね」

「って事は,遂にブラダイラ軍もイズンを出してくるって事だな」

「そうなるだろうね。特にエランがトジモ将軍を見逃したのが大きいかな」

「あの時は追撃する理由が無かっただけ」

「まあ結果としてエランの存在がブラダイラ軍にも知れ渡ったからには,イズンとエランをぶつけようと両軍は動くだろうね」

「んっ,フライア軍もそう考える理由は何だ?」

「実に簡単だよ,エランとイズンがぶつかれば,どちらかが命を落とし持ち主を失ったスレデラーズを手に入れる事が出来るからね」

「つまり漁夫の利ですよ」

「ぎゃはははっ! そいつは残念だったな。俺様達がイズンを倒したらすぐにスレデラーズを俺様が喰っちまうからな」

「けど相手も相当使えるからには簡単に倒せるとは思えない」

「まっ,そうだけどよエラン。前にも同じような事が有ったじゃねえか」

「うん,だから絶対に負けない」

「ぎゃはははっ! そう来なくちゃな」

「はいはいですよ,五月蠅いから捕らぬ狸を数えなくてもいいですよ」

「別に良いじゃねえか,こうなったからには」

「イクス」

「んっ,なんだエラン」

「五月蠅い」

「……すまんっ!!」

 エランの指摘に全力で謝るイクス。もしイクスが人の姿をしていたら土下座をするぐらいに謝罪の言葉をエランにぶつけた。それで納得したエランは一度だけ頷くと再び手にしているアップルパイをかじり味わうと話が一段落付いたとばかりに話題が変わる。

「それで援軍はいつ頃到着予定ですよ?」

「途中で何事も無ければ五日後だね」

「随分と早いですよ」

「ここには野生生物は居ても魔獣は居ない,それにイブレが作った地図を持ってるはず」

「納得ですよ,あの測量を手伝わされた地図が有るのなら大軍での進軍は速いはずですよ」

「あ~,あの測量計を使って使ってたやつか」

「そうですよ,イクスが自分には関係が無いと鞘に引き籠もっていた時に作った地図ですよ。役立たずが本当に役には立てなかった時のですよ」

「おぅおぅ,随分と言ってくるじゃねえか。俺様は武闘派でそういう事には付き合えないんだよ」

「急に三下の雑魚みたいな言い方に成ったですよ」

「このクソガキがてめえだって」

「イクス」

「……へいへい,分かったよ」

「それはそうとですよ,援軍が到着したらどうなる予定ですよ?」

「スノラト将軍から聞いた人柄から推測してみても,まずは僕達はここ下りて援軍と一緒にヘルレスト草原に駐在する事に成るだろうね」

「十万という数を聞いただけでも分かるですよ」

「まあ,そうだろうね。後はフォ……っと,そう言えば援軍としてくる新しい将軍に付いては話してなかったね」

「うん,聞いてない」

「名前はフォルグナー=スノス,フライア帝国の上級大将で既婚者の女性だね」

「結婚していても軍に残って居るのですよ?」

「元々騎士の家系に生まれた事も有るけど,彼女の気質自体が家庭に収まるだけでは許さなかったようだね。騎士として将として未だに軍の上層部に位置しているのはその為だろうね」

「それで,後はその将軍様が決めるって事だな」

「そういう事だね,だからやりたい事が有るのなら今のうちとも言えるね」

「また不穏な発言をしてきたですよ」

「分かった,じゃあ後でやる」

「エランもエランで何をやるつもりですよ」

「大した事じゃない」

「そう言って大した事をいつもやってるじゃねえか。まっ,俺様は構わねえが」

「そういう事ならフライア軍からも少しぐらいは人手を出せるけど必要かい?」

「大丈夫,レルーン達の手を借りるから」

「分かったよ,必要な物が有ったら出来る限り調達するよ」

「じゃあ,防水性の布を大きいのを何枚も」

「分かった,用意しとくよ」

 この後はいつものように騒がしいお茶会となり,それぞれに楽しんだ。そして翌日からエラン達は動き出した。まずはカセンネとレルーンに話を通すと,二人とも喜んで手を貸す事を約束したのでレルーンはエラン達と一緒に場所を確保した。それからヒャルムリル傭兵団の団員も巻き込んで作業を始める。

 手始めに傾斜が有る地面を掘り,一定の深さまで掘るのに一日を要した。なにしろエランはイクスをブレイクスレッドホースにして地面に叩き付けた後にそのままイクスで地面を掘ったのだから作業が速いのは当然と言えるだろう。それにカセンネがヒャルムリル傭兵団を率いてそれぞれの作業を指揮していたので,そちらの作業もはかどっていた。

 地面を掘った翌日にはイブレに用意させた布を縫い付けて隙間が出来ないように一枚の布にすると掘った地面へと広げた。その頃には周辺に柵が設けられており準備は着々と整っていた。そして三日目に完成すると早速とばかりにお湯を大量に沸かして布が敷かれて巨大な穴と成っている場所へと注ぎ込まれた。

 ここまで来れば分かると思うがエランはカセンネ達と相談して大きな露天風呂を作ったのだ。なにしろ遠征続きで身体を拭く事しか出来なかったのだからお風呂好きのエランや女性だけで構成されているヒャルムリル傭兵団も,喜んでエランの提案を受け入れたという訳だ。そんな訳で出来上がって湯気が立ち上っているお風呂にエラン達とヒャルムリル傭兵団の数人と入る。もちろん,その中にはレルーンとカセンネの姿が有ったのは言うまでもないだろう。

「くぅ~,久しぶりの風呂はしみるね~」

 そう言いながらお湯に浮かべた御猪口おちょこに入っている酒を飲み干すカセンネ,団員達もそれぞれに嬉しそうに久しぶりのお風呂を堪能していた。それはエランも同じで,すっかり癖になっている為に右手には抜き身のイクスを手にしてお湯に身体をつけて久しぶりのお風呂を堪能していた。ちなみに覗き防止として露天風呂を囲むようにヒャルムリル傭兵団の団員とフライア軍の女性兵が一緒に警備していたのも,露天風呂の順番待ちと戦続きで心が疲弊してる男性兵を警戒する為でもある。そんな中でゆったりとお風呂を満喫しているエラン達のところにレルーンがやって来ると早速とばかりに会話が始まる。

「いや~,エランがお風呂を作ると言い出した時には驚いたけど,こういうのも悪くないよね~」

 言いながら手を組み腕を上げて身体を伸ばすレルーン,そんな満足げなレルーンにエランは頷いてから会話を続ける。

「レルーン達なら必ず手伝ってくれると思ってた」

「あははっ,この気持ち良さなら当然だよ~」

「まあですよ,エランは甘味とお風呂の執着はそこまで強いですよ」

「へぇ~,そうなんだ~」

「うん,ずっとお風呂に入る機会を探してた」

「まっ,今ならブラダイラ軍を追い返してやったばかりだからな。こうした物と時間が取れるって訳だな」

「ってか,ちょっと思ったんだけど?」

「んっ,なんだレルーンの姉ちゃん」

「何でイクスまで居るの?」

「そいつは仕方ねえだろ,エランは風呂の時でも俺様を傍に置いていくんだからな」

「つまりイクスは助平?」

「おい,どうやったらそんな疑問が出て来る」

「だってイクスって声が男だし~」

「その前に剣に性別が有ると思ってんのか」

「無いの?」

「有ってたまるかっ!」

「そこはあった方が面白いよ~」

「そんな面白さは不要だってのっ!」

「でもでも」

「レルーン,イクスで遊ばないで」

「あははっ,エランにそう言われたら何も言えないね~」

「ったくよ」

 流石にエランに言われては黙ってエラン達と並ぶようにお風呂に浸かる事にしたレルーン,手足がゆったりと伸ばせるお風呂を満喫するように再び身体を伸ばすと話題を変えて会話を始める。

「それにしても~,よくお風呂を作って良い許可が下りたよね~」

「後で将軍様も利用したいからだとよ」

「あ~,エラン達もそうだけどずっと山奥に居たのなら身体を拭くぐらいしか出来ないからね~」

「うん,ずっとお風呂が恋しかった」

「あははっ,敵を撃退した今ならゆっくりとお風呂にも浸かれるからね~」

「数ヶ月も敵襲に備えた後に敵との決戦ですよ,ここまで来れば誰しもが気を休めたいですよ。だからお風呂ぐらい簡単に許可が下りて当然ですよ」

「これ位で士気が挙がるのなら安上がりって事だね~」

「そうですよ,けどその言い方はどうかと思うですよ」

「あははっ,気にしない気にしない~。それに折角のお風呂なんだからのんびりとしようよ~」

「レルーンの姉ちゃんはなんだかんだ口実を作ってはのんびりしてるじゃねえか」

「確かにそうですよ,先の決戦でも自分達の役目は終わったとばかりに燃える敵陣を前にのんびりと紅茶を飲んでたですよ」

「それを言うならハトリも一緒でしょ~」

「私は半ば無理矢理に連れて行かれたですよ」

「だって一人だと寂しいでしょ」

「おい,当然の様に言いやがったぞ。俺様達が最前線で奮戦している間にそんな事をしてやがったのか」

「それにですよ,エラン達に追い付こうとしたのを止められて付き合わされたですよ」

「だって~,ハトリが一人だけで燃えている敵陣に突っ込もうとしたから止めただけだよ~。あの煙と炎の中だとエラン達を見つけられないでしょ」

「見つけられるですよ」

「えっ,そうなの」

「何か言葉と違ってまったく驚いてはいねえぞ」

「そんな事ないよ~,それにハトリと一緒にお茶した事実は残ってるでしょ」

「確かにですよ。なにしろフライア軍が突撃してきて敵陣右翼を瓦解させようとしてきたからには無理にエラン達の所に行く必要が無くなったですよ」

「えっ! そうなのっ!」

「何でそこには驚いてんだよ,この姉ちゃんは」

「確かですよ,あの時もそれに近い事を言ったような気がするですよ」

「あははっ,そうだったね~」

「笑って誤魔化しやがったな」

「笑って誤魔化したですよ」

「まあまあ~」

 それからも和やかに会話が弾む,エランも時折会話に参加しては場の雰囲気を楽しんでいた。だが,そんな時間も長くは続かなかった。その理由は明確でハトリとレルーンはすっかりのぼせる寸前だったからだ。だからエランにお風呂から出る事だけを告げてハトリとレルーンはお風呂場から出て行くが,エランはまったくのぼせる気配も無く唯々お風呂の温もりを堪能していた。

 エランのお風呂好き,またはお風呂の熱耐性が思いっきり強いのか周囲の面々が次々と変わる中でエランだけはお風呂のお湯に身を浸していた。なのでエランはすっかり気が抜けて目を閉じて,時間がどれだけ過ぎたのかすら忘れる程に堪能していた。それにお風呂のお湯は常に掛け流し,山地から汲み取った水を魔法でお湯に変えてお風呂に流しているので温度が一定なのもエランが長湯をする理由となっていた。すると不意に聞き覚えがある声が聞こえて来た。

「おや,エランは未だに居たのか」

「エランは相当なお風呂好きだからな,軽く数時間は動かねえぜ。スノラトの将軍様よ」

「そうか,それでは隣は構わないか?」

「うん」

 エランが返事をするとスノラトはエランの隣に座り肩までお湯に浸かった。その心地良さで思わずスノラトからも声が出る程なので,スノラトも心地良く思った事が言わずとも分かる。安堵したかのような表情を見せたスノラトだが,すぐにエラン達に話し掛けて来て,珍しくエランも口が軽くなる。

「今回は大いに助けられた。改めて礼を言う」

「その必要はない,私は自分の役目を全うしただけ。スノラトの方が頑張っている」

「いや,イブレ殿やエランにヒャルムリル傭兵団と私は助けられてばかりだ」

「それでもフライア軍にはスノラトが必要」

「そうでもないだろう,軍議ではイブレ殿がいつも主導権を握っていたからな」

「けどイブレは部外者,スノラトの代弁者という形を取らないと誰にも話を聞いてもらえないから,そうしただけ」

「要は使いやすかったというだけか」

「それは違う,イブレとしてもスノラトは決して欠かせない人物だった。どんな形だろうとスノラトが将軍として希望の光を放ち続けたからこそ,私達はブラダイラ軍を撤退にまで追いやれた。先に光が見えない戦いに赴く程に兵達も馬鹿じゃない」

「少し持ち上げ過ぎではないか」

「それも違う,逆にスノラトは自分を卑下しているとしか思えない。イブレやカセンネがどれだけ頑張っても,この結果は得られなかった。八千のフライア兵が動いたからこそ撤退にまで追いやれた。それはスノラトが将軍として常に兵達に光を見せてきたから,続いていけば勝てるという希望の光を」

「そうなのだろうか?」

「うん,そう」

「私は将軍という役目を果たしただけという訳か」

「それだけじゃない,本来なら部外者の私達を取り立てた。そしてとても大事な役目を担わせてくれた。凡将なら面子を気にして全てを自分達でやろうとするはず,けどスノラトは私達を信じて任せてくれた。その結果として八千のフライア兵が無傷のまま敵陣に突っ込む事が出来た,本来なら矢を射かけられ半数になってもおかしくはないけど的確な時を選んで突き進む事で一気に白兵戦に持ち込めたのはスノラトの技量」

「私だけではない,イブレ殿の的確な観察眼が有ったからこそ出来ただけだ」

「けど八千の兵を動かしたのはスノラト,そして八千の兵もスノラトだからこそ命に従った。そこに忠誠と信頼が確実に有ったのはスノラトが将として動いていた証,全てがイブレの思惑通りだった筈じゃない。スノラトならそれが出来ると確信して信じたからこそ余計な事をせずに任せた。これも信頼の証」

「エランには私がそういう風に見えているのか?」

「うん,もちろん」

「そうか……」

 エランの言葉を聞いて考えるように俯くと波打つお湯に自分の顔が微かに映る。お湯の心地良さが心までほぐしていくように感じながらスノラトは考える。

 あれは……単なる嫉妬だったのか? エランの武力,イブレの知略,カセンネの発想,どれも私に無いものだらけだと思ってただけなのか? ……いや,そもそも前提から違っていたようだ。

 私は誰かに成れないように,誰かも私には成れない。ならば私は私自身に成れば良いだけの事,これらの経験を糧にして自分を成長させる事が重要なのだろう。幾ら他人と比べても答えは出ず,自分自身と向き合う事で答えを得る。私にとって重要なのは,その事だったのかもしれない。

 結論を出したスノラトが再びエランとの会話を始める。

「ありがとう,エラン」

「っん? 特にお礼を言われる事は言っていない」

「なに,私が言いたかっただけだからな,気にするな」

「うん,分かった」

「まっ,エランは自覚が無いままに人の悩みを解決する方へと誘導するからな。だからスノラトの将軍様よ,随分とすっきりとした顔になってるぜ」

「あぁ,イクスの言う通りかもしれないな。エランのおかげで私も新たな事に気づけたのだからな」

「んっ?」

「あぁ,エランは気にすんな。こういう場合は俺様がいろいろと言うのが面倒だ」

「うん,そうする」

「それにしてもイクスはエランの事を良く理解しているな」

「まあ,俺様達は特殊な関係だからな。お互いに理解し合えないといろいろと都合が悪いんだよ」

「なるほど,まあ追及はしないでおこう」

「そりゃどうも,それはそうと将軍様よ,援軍を率いてくるのが次の大将という訳だろ,そっちには誰が来るのか分かってるなら,ここで話しても良いと思うがな」

「ふっ,聞きたいのなら,そう言えば良い。隠している訳ではないし,フライア兵達は既に知っているからな」

「そうかい,なら聞かせてもらおうか」

「あぁ,援軍を率いてくるのはフォルグナー=スノス上級大将,私が知っている限りでは優しさと厳しさを持ち合わせる女性だ。私もそうだが軍の中にはフォルグナー様に憧れる兵士も少なくはない」

「んっ,随分と親しげじゃねえか」

「なに,私が軍に入った時から世話になっている。というよりも,私にとっては姉のような存在だ。凜々しく堂々としており頼りがいが有る,それ故に面倒に巻き込まれる事も多いが平然と切り抜けるような知略と武勇を兼ね備えた方だ」

「なるほどね,スノラトの将軍様を知っていれば妥当な適材という訳か」

「まあ,そんな感じだな。とはいえフォルグナー様に来て頂くのは少し心苦しいのだがな」

「んっ,そりゃなんでまた?」

「フォルグナー様は既に結婚しているが未だに子供が居ない,フォルグナー様が自らの意思で軍属に残って居るのはありがたいが,ご自身の幸福を私達の為に蔑ろに成っている気がしてな。本当なら軍を辞して家に入るべきだろうが,自らの意思とは言えフォルグナー様には帝都に留まっている方が幸せだと思うからだ」

「なるほどな,確かにこんな場所まで来ちまったら夫婦円満も満喫をする事が出来ねえからな」

「まっ,そういう事だ。だが決まった,いや,既に動いている事に何を言っても仕方がない。おそらくフォルグナー様が到着すれば私は副将と成るだろう,その時にお役に立てるように頑張るだけだ」

「それで良いと思う,視点が変われば見えるモノが違ってくる」

「ふっ,エランのお墨付きと成れば,より一層に頑張れる気がするな」

「そこまで大した事は言ってない」

「エランよ~,さっきと同じ展開に成りそうだから気にしない方が良いんじゃないかと俺様は思うぞ」

「……分かった」

 首を少し傾げて何の事かと理解が出来ないままにイクスの言う通りに返事をしたエランに,スノラトは声を出さずに少しだけ笑っていたがエランはそれにも気付かないで会話を止めたかのように姿勢を変えて方までお湯に浸かる。すると再びイクスが喋り出して会話を継続する。

「それでスノラトの将軍様は十万もの援軍をどう考えてるんだ?」

「どうとは?」

「俺様には十万という数が多いように思えてよ,そこに何かしらの意図が有るんじゃねえかって話だよ」

「そういう事なら一切話せない……と言ってみたものの実際に何かしらの意図が有っても今は知らされていないからな」

「つまり今はってことか」

「あぁ,とは言っても私には探れる程の腹を持たせてくれるとは限らないぞ」

「そうかい,まあ俺様達はイズンの討伐を任せられるのは確かだろうから,本当は他の事なんか知ったこった事ではねえからな。少し気に成っただけで深入りするつもりはねえよ」

「何か有るとすれば自分達の事だと思ったからではないのか」

「そうとも言うな」

「はははっ,心配するなお前達の事はしっかりと報告してあるからには下手な指示は出て来ないだろう」

「なら良いけどな,それはそうと……」

 イクスはスノラトとの会話を続ける。時折ながらエランも会話に参加して和やかな一時を過ごすと,のぼせるからとスノラトは風呂から出て行く。そしてスノラトが出てから三十分後にやっとエランもお風呂から上がるのだった。

 長風呂を出て自分の天幕へと戻るとイブレの場所に円卓を置いて紅茶を楽しんでいるハトリ,イブレ,レルーンの姿が有った。なのでエランもレルーンから招かれて円卓に座るとハトリが紅茶を煎れてくれたので少しだけ乾いた喉を潤す為に飲むと勝手にイクスが喋り出し再び和やかな一時を楽しんだ。こうして休暇のような援軍到着を待ちわびる日々が進む。

 六日後,遂に援軍が到着すると伝令がスノラトに山を下りて援軍と合流するように命令が下りてきたので,指示通りにエラン達やヒャルムリル傭兵団も含めて山を下りた。だが細長いロミアド山地を進んでいるからフォルグナーの到着が遅れ,その間の指揮はスノラトに任せるという事だった。なのでスノラトは援軍と合流して指示された通りに少し丘が高い所に本陣を構えると陣営の設営に掛かるように命令を出した。

 援軍が来た喜びと援軍の方もやっと険しいロミアド山地を抜けた事に安堵して,作業は思いの外に捗った。こうして陣営を構築し始めてから二日後,遂にフォルグナーが到着するのだった。




 さてさて,何とか無事に更新する事が出来ました~。しかも一ヶ月以内にっ!! まあ,本当はもう少し早く更新をしたかったんですけどね……未だに言葉を出すというのが難しい。頭の中では,ある程度の場面とかシーンは思い浮かんでいるモノの,いざ言葉にしようとするとまったく言葉が出て来ないという感じなのが少しもどかしいですね。

 さてはて,第三章はいよいよ終盤に入ってきたと言えるでしょうね。いや~,長かった,ここまで長くするつもりはなかったけど,本当に長かった。今更ながら何でながくなるねんっ!! とツッコミたい程に長かった。本当に頑張った……私っ!! まあ,まだまだ残ってますけどね。何とか今年中には第三章を終わらせたいな~と思っている次第でございます。

 さてさて,終盤もまだまだ始まったばかりですからね。一丁気合いを入れて……とは行かない私の精神をどないせいと。まあ,取り敢えずは一つ一つを確実に書いて行けたら良いかなと思っております。ひとまずは今月中にもう一本ぐらい上げたいなと思っております。と,一頻り書いた所でそろそろ締めますか。

 ではでは,ここまで読んでくださりありがとうございます。そしてこれからも気長によろしくお願いします。

 以上,頑張れ私と鼓舞しても気力と言葉があまり出て来ない葵嵐雪でした。



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