ランド族の問題解決ーコーティ視点ー
『無限大』の中から食糧・薬草・魔石などを次々と出すとハロルド殿が、それらの配布を開始する。
驚くランド族をよそに、この地下に集まった動物達にも餌などを与える。
無尽蔵に出てくる食糧などとは別に、ゴミ問題をまた、『無限大』に収納しつつ解決。
魔石を使ってこの空間に清浄な空気と清潔な環境を大急ぎで整える。
振り返ると、ハロルドが水魔法で水場を作成していた。ようやく立ち直ったランド族も手伝って数時間後には問題を粗方片付けた。
「ひとまずこれで問題は片付いたな。
しかし、この狭さでは最終解決にはならないだろう。」ハロルドの見解は正しい。
だから、ゴウライ殿に別の依頼をしてある。
「それにしても、ラルは既に地表の一部を回復させたらしいな。ランド族が興奮していたよ。
しかも、あの『万能肥料』でまたやらかしたらしい。凍りついた木々が生き返たったと叫んでたのを見たよ。」
諦めにも似た薄笑いのハロルド殿をこちらも苦笑いで見る。
規格外と分かっていても、やはり驚いてしまう自分がいるからな。
だが、出たとこ勝負がラル殿の持ち味だとすれば、我々の役割も大きい。
「ゴウライ殿が、大きな空間を作ってくれましたよ!」
ライナス殿の大声で振り返るとゴウライ殿の満足そうな笑顔。
成功だな。良かった。
「コーティ殿の言われた事はやったが、ひとつ問題がある。
この先の地表におそらく次元の裂け目がある。
ただ、物凄く硬い地層が邪魔をして俺でも穴を開ける事が出来ない。
何かが邪魔をしている。」
全て計画通りとはいかなかったが、予測点が立ったのは良かった。
戻ったラル達に言ったら驚いていたが、ヤーン様はその気配を感じていた様子だ。
「で、ゴウライの作った部屋は?
俺、良いもの持ってるよ。」
やな予感しかないのは何故だろう。
たぶん、物凄い物だろうが…
ゴウライの作った動物達の居場所は、かなりの面積があり更に種族毎に住み分けも可能な作り。
寡黙なゴウライ殿の能力の高さを改めて感じた。
「おー、スゲーよ。よし!俺の出番だ!!」
ラル殿特有の能力ではなく、空間魔法で取り出したものを風魔法で一帯に蒔いた。
ゴ・ゴゴゴゴゴーーー!!!
何だ。何が起こったんだ。
次元の裂け目が広がったのか?
「おーし。順調だな。」とラル殿。
「やり過ぎではないのか?これでは…ほら見ろ。」とヤーン様。
何がと、聞こうとしたその時!
地面が大きく揺れ出し、土から勢いよく伸び出したのは草・草・草。
一瞬で草原が出現。あちらには一瞬で森。
あーー。こちらは水辺まで。その泉達の中には沢山の水草が気持ちよさそうに揺れていた。
そこには、既にここを住処とする全ての者の楽園があった。
やはりか…ラル殿。
ランド族も最早無表情で固まっている。
既に俺達と同じ境地にたどり着いたのか。
ラル殿…これでは地中とは最早言えないのでは?
私の疑問に。
「大丈夫だよ。地下都市の光石達もあるからちゃんと育つよ。
もちろん、ずっとここで暮らせるように餌となるものを用意したよ。えっ?どしたの??」
ため息を飲み込んでラル殿に告げる。
「ラル殿。我々の目標は皆んなを地上に戻す事でここの環境整備では無いはず。」
ここで一旦言葉を切る。
ラル殿の落ち込む様子が目の端に映る。
「さ、それよりも次元の裂け目についてヤーン様が何かご存知の様子。
是非ともお教え願いたい。」
こういう場合は早々に話題の転換が必要。
だが、ここでヤーン様は思いがけない事を言われる。
「急がねばならない。水の精霊が消えかけてるぞ。」
その言葉に我々は、すぐさま出発を決意。
状況把握は充分ではないが今は進む時と、皆の意識は一致していたから。
ここの事をランド族に任せると、ラル達の作り上げた吹雪のない場所へと。
ここを足掛かりに。
『火の魔石』の在庫を一気に使用して、細い道を切り開く。
横を見れば、まるで吹雪に壁があるかの様だ。
道を一歩外れたら一瞬で凍りつくだろう。
恐怖を覚えながらも、一歩ずつ進む。
ラル殿が先頭に立ち数時間歩き続けるが、この道がいつまで保つかはラル殿も不安らしい。
しかも進めば進むほど吹雪は酷くなるばかり。
だからこそ目的地に向かっていると分かるのだが。
「着いたぞ。この洞窟の中から水の精霊の気配がする。」
ヤーン様の一言に今一度作戦を立てようとしたその時!!
「た、大変だ。」と叫んで魔石を凄い勢いで蒔きながらラル殿が突っ走って行く。
咄嗟の事に、着いて行けたのはヤーン様のみ。
洞窟の入り口で立ち往生する。
幾つもある分かれ道が行く手を阻む。
「大丈夫です。こういう時のラルは特別です。任せて安心ですから。」
珍しい柔らかな笑顔のハロルド殿。
こういう時にラル殿達の絆の強さを感じる。
信頼こそ力。
ラル殿を信じて私も出来るだけの事を。
まずはここにキャンプを張って…やる事は山ほどあるのだから。




