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一本道の幻夢?

一本道に入ると、戻るべき扉は消失した。

この道を進むしかない。


あれからどのくらい経ったのか?

全く変化のない一本道を急ぎつつも、時間感覚が麻痺し始める。

身体よりも精神的に限界がだんだん迫ってきていた。


「あの。」

遠慮がちなゼルの声に、一旦止まる。


「どうした?具合でも悪いのか?」

海月族との繋がりを絶った状態での移動はやはり無理があったのか?


「違います。

もしかすると後ろからついてきている者がいるかもしれません。

でも、扉が消失した状態ではこの空間に入れないはず。

だとすれば、元々いる何者かでしょうか?」


エドと顔を見合わせて、お互いに首を横に振る。

サーチ最高レベルの俺と隠密スキルの高いエド。お互いに全く気がつかなかった。

でもそんな事あるのか?


「ここでその者らと対決しましょう。突然後ろから襲われるのでは不利。」バイロンの一言で待機。


音が聞こえ始める。

ヒタヒタヒタと。走る足音なのか?

全員がその時に備える。


だが、不思議な感じ事にサーチには何も反応しない。他のメンバーも同じようだ。

いったい何者なのか?

ま、まさかの幽霊??


追いついた者達の姿を見て全員が絶句して固まる。


ケルム達だった。

ただし、全身が傷だらけで何かから逃れているように見える。もちろん俺達は見えてない。


「ユナ姫。このままでは最後の秘宝は奴らの手に渡る。それだけはダメだ。ここは俺が引き受ける。先に行ってくれ。」


ケルムの瞳には覚悟の静かな決意がある。


ユナ姫は何度も首を振る。


「例え封印を魔人達が手に入れても彼らには使い方が分からないわ。だから皆んなで戦って」

最後まで言う前にもう一人の神官風の男が遮る。


「それは無理だとユナ姫が一番分かってるはずだ。例え俺達の誰が倒れても先に行け!

火の山までたどり着いてくれ。それがこの世界に魔王の闇を撒き散らしてしまった俺達の取るべきだったひとつの道だ。」


目に沢山の涙を溜めながらユナ姫は、前を向いた。そのままケルムを置き去りに三人は先に進む。

駆け出すユナ姫達をケルムは笑顔で見送る。

「有難う。皆んなと仲間でいれて良かったよ。」小さな呟きは俺達にしか聞こえない。


大量の魔人が押し寄せる。

魔人にも俺達は見えない。

ケルムは、満身創痍とは思えないほどの力強さで戦い続けた。

倒れた魔人がそこかしこに転がっている。

何という迫力なのだろう。

だが、それでも最後はやはりやってきた。

右腕を失い、それでもニヤリと笑うと魔法を展開する。それはまさしく命の炎を糧とした最終魔法。

激しく襲う炎の乱舞にほとんどの魔人が倒れてゆく。微かに笑顔を見せてケルムも倒れた。


もちろん、助けられないと分かっている。

例え、握りしめた拳から血が滲んでもそれは叶わない。


倒れたケルムに触る事も出来ず、見る間にそのまま全てが消え去る。

いったいなぜ?

心の中の疑問を全員が持ちながらも先を急ぐ。

まるでユナ姫の後を追うように。


どれほど走った後か、一人またひとりと魔人と共に彼らの倒れた姿を見つける。

ひとりでどれほどの魔人を倒したのか。

累々と倒れる魔人の姿が彼らの強さと覚悟なのだろう。

まだ、ユナ姫だけは…


あっ。光が見えてきた。

出口だろうか?


上り階段の上と下でユナ姫と魔人がせめぎ合っていた。


「彼等の想いを無駄にはさせない。絶対に火の山にこの秘宝を隠してみせる!」

彼女の使うレイピアは先が折れて既に敵には届かない。それでも彼女の目だけは光を失ってなかった。勝機を確信したいるように薄い微笑みすら浮かべて華麗に魔法と剣で彼等を躱す。


「最早ここまで。最後に我が王家に伝わる秘儀を見せよう。


『地の精霊にこの身を捧げる。

故に我が望みを叶えよ。

この秘宝を火の山に。

真なる秘宝の持ち主が現れるその時まで永遠に眠れ!!』」


彼女の身体がゆっくりと土に沈んでゆく。

魔人がどれほど手を伸ばしても届く事はない。

その手に握られた秘宝も同じく土の中に。


彼女が完全に沈み込むその瞬間に囁く声が聞こえた。


『秘宝を手にした者よ。火の山へ秘宝を捧げよ。

秘宝を失う事を恐れるな。その一滴はこの星の命の水なり。』



彼女の姿が消えると辺りは真っ暗になる。

エドが光石で辺りを照らした時には、

彼女も

魔人も

そして出口の階段も消えていた。


暗闇の中にまだ先の見えない一本道があるだけだった。

ため息とも深呼吸ともつかない息をつき、耳飾りを触る。


「彼女達はまだ戦っているのだ。この別空間で魔王を封印するその時まで秘宝を守って。」

俺の感想にゼルから一言。


「我々の言い伝えでは、あの秘儀を行う者には輪廻の輪に入れないとの一節があります。もしかしたら彼女がこの空間で秘宝を守り続けているのかもしれません。」


ふと見るとゼルの身体が小さくなっていた。

まさか…


「ゼル。身体が小さくなってないか?」


リーヴァイが静かに頷いた。

「海月族の人型には危険か憑き物なのですよ。とは言えリミットは近いかと。」


獣人の全員が頷く。えっ?エドも。

俺だけが気がつかなかったのか。

そんな中でもゼルは。


そんなの。そんなの絶対にダメだ。

そう一旦思うと色々な想いが一気に俺の頭の中に溢れ出す。

ケルムや冒険者の倒れた姿。そしてユナ姫・ゼルと次々と頭の中を駆け巡る。

こんな事あってはダメだ。

絶対に。その想いがどんどん大きくなり何か身体の中を蠢いているように感じる。

やがてそれは体中を駆け巡るようになる。

もうそうなるとグツグツした何かは止められない。

だんだんと音が遠ざかる。

エドの声がしたような気がするがもう、耳も聞こえないほどグツグツの音が高まる。


そして、体中のグツグツが一気に飛び散る。

身体から広がっていくのを感じるがどうにも出来ない。

一本道が崩れる様子が見えた気がしたが、それも微かなものになって行く。


そこまでで、俺の意識は完全にプチっと途切れた。



途切れる寸前に

『火の山が生まれるわ。』と微かなユナ姫の声を感じた気がする。





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