巫女姫様のお告げ?
「ですから、何度も申し上げておりますのに。
あの異名持ちの方は、人違いではないかと。」
縋るような風情で私に話しかけるのは巫女姫様本人だ。
気弱になられた。絶対の権力は今や風前の灯だ。
神殿内には未だ巫女姫様贔屓はいても、最早動く事も出来まい。
なにせ、予言を外したのだから。
あれは、三年前だろうか。
勇者が転移者として現れた。
驚きと喜びで迎えた我らの元に魔王出現の一報。
その時、勇者が仲間を集めて魔王を倒すべく出掛けると申し出た。
国民皆が安堵した時!巫女姫様はお告げをしたのだ。
「かの方は、魔王を倒せません。」と。
それは、人々に大いなる不安を与えた。
それでも一縷の希望を繋いで勇者一行は魔王に戦いを挑み、そして勝利を与た。
その時から巫女姫の一族はその絶対権力の終焉を迎えたのだ。
飾り物。今は正にその通りだ。
私自身は、もう予言を信じない。
国民の望む言葉を言わせて王宮を凌ぐ権力を手にする。
その為の巫女姫様よ。
そう、神殿こそが絶対の権力者 となり人々を導かねばならない。
王家は魔王を倒せないし、巫女姫の力もない。
新しい異名持ちを発表した神殿の価値はうなぎ登りなのだ。
自信に満ちた表情の神殿長に比べて、巫女姫の顔色は冴えなかった。
その神殿長のそばで、一人の男が微笑んでいた。
神殿長の側仕えの一人だ。
だがその首には、蛇の痣が浮かんでいた。