エルドの森はどこ?
こんな荒野なんて知らない。
馬車でようやくたどり着いた我が家は、荒野だった。
エルドの森には、家も畑も何も無いのだ。
なんで。。。ただの荒野なんて。
いったい何が起こったのか?
は! ! た、大変だ。
ララ達は?ベルンは?
無事か?頼む。無事でいてくれ!
ベルンに何もかも任せて、のんきな旅をした自分が許せない。
そうだよ。魔人に決まってるじゃないか!
また来ると予想がついていたのに。あんな石壁くらいで甘く見てしまった。
ララ、チル、マーナ、エルザ!そしてベルン。
済まない。
取り返しがつかない。もう、誰もいないとは。
あんなに幼子まで犠牲にしたなんて。
どこかで、ゲームの世界と侮ってたのかもしれない。
あまりの状況にプリモナも絶句したままで立ち竦んでいる。
「あの。あちらに何か地面の下から覗いてる人達がいます。もしかして、お探しの方では?」
遠慮がちなジェルドの声に一斉に振り向いた。
ララだ!
地下室の扉を上に押し上げた格好で、ララがこちらを手招きしていた。
ララ…良かった。無事だ。
本当に良かった。
一気に襲った不安と安堵が交差したのか、腰が抜けしばらくその場に座り込んだ。
「早く入ってよ。ラル!いい加減にして!」
ララの苛立ちの声に慌てて立ち上がり急いで地下室へと入った。
地下室は、かなり広く作ったはずだ。
倉庫も空の部分が多い筈だが、意外にも地上の部屋から様々なものを運び込んであった。
「よ。随分とのんびりした旅だったな。
こちとら、かなりの苦労の連続だったぜ。」
ベルンの声に振り向いて、再び絶句した。
あちこち傷だらけの姿に、この地下室へ逃げ込む事がいかに難しかったか理解出来た。
あの盾の勇者でさえ、この有様とは。
魔人の恐ろしさを甘く見ていた。つくづくと思い知る。
チル達が部屋の隅で固まった。
痛々しいその姿が何よりも俺に誓いを立てさせた。
二度と。
もう二度とこんな風に皆んなをさせない。と。
立ち止まったままの自分より素早く、ジェルドが薬で手当てを始めてる。
プリモナも、荷物をグレタと共に運び入れているところだ。
あの片足男のエドでさえ子供達のところへ行って、今日の昼御飯のサンドイッチを配っていた。
「ねえ、ラル。
家の精のホアンの姿があれから見ないの。
もしかしてたら。
ホアンは。
ごめんなさい。
私達留守番を任されてたのに、ホアンを守れなくて。」
感極まった様子のララが、俺に抱きついて泣き出した。
「大丈夫だよ。あの食いしん坊のホアンの事だ。
また、家を建てれば必ず現れる。
良く、守ってくれたな。
ありがとう。これからは、俺が皆んなを守るから安心しろ。」
ララの涙でようやくシャキッとした俺は、遅蒔きながらもそう言って労った。
ララも、涙を拭きながら何遍も頷く。
「さてと、呆けたラル君は終わったよな。
では、これまでの話をするぞ。
あれから、しばらくは何も起きなかった。
だが、魔人の事。
嫌な予感して地上の荷物を地下室へ移して子供らも全員避難させた瞬間だったよ。
あの爆発。正直見た事もないくらいの威力だった。もし俺が戦いを挑んでいても、家と同じ結果になっただろう。
俺の怪我は、地下室に潜るのが僅かに遅れた為のものだ。
いやー。あの馬鹿げた備蓄は正直助かったよ。
あれで、一応奴らの目を誤魔化した。
ま、こんな感じだ。」
簡単に言ってるけど、それがどれほど危機一髪だったか。
たぶん、ベルンだからこそ切り抜けられたんだろう。
本当にみんなが無事で有り難い。
「で、ギルドは許可証貰えたのか?
お土産は、そこの物騒なおっさんと怪しい美人と、優しい薬屋なのか?
しかしこれはまた、見事なバラエティーだ。」
「これは、これは盾の勇者では。
意外な出会いもあるものだ。」と、エドが嫌味っぽく言う。
え?その瞬間には二人はすでに刀で鍔迫り合ってた。
ベルンの大剣と、エドのレイピアが押しつ押されつの状況とは何でだ?
「ま、待てよ。なんで戦うんだ?」
「「なんとなく」」
二人は苦笑いして、お互いの得物を引いた。
いやぁ、危ない奴らだ。
取り敢えず、まずは魔人を驚かす家作りをするぞ。
もう、遠慮はしない。
『備蓄の守護者』の本気を見せてやる!




