第15話 ヒメごと⑥
プルーニの家に泊まることになり、プルーニと共に山を降っていたセイヤは、足元に気をつけながらも、頭の中では必死に考えを巡らせていた。
どうやったら、村長を改心させられるのか。
前回の仕事では、話を聞いているうちに、勝手にことが展開し任務遂行となったのだが、前回と同様に、今回もどう立ち回ればいいのか、さっぱり分からなかった。
「プルーニさ〜ん!ちょっと、こっちいいかいー?」
村に戻った途端、プルーニは女性に呼ばれセイヤの元から離れて行った。
そのとき、セイヤは光が遮られ自分のいる場所が暗くなるのを感じた。後ろを振り返ると、そこにはガタイがよく腕の筋肉がすごい、背の高い見るからに屈強な男が立っていた。
「兄ちゃん、あんたプルーニのなんなんだ」
「……相談にのっていただけですが、それが何か」
ギロリと見下ろすその鋭い目に、セイヤは怯まずに堂々と答える。
「はっ!プルーニの相談?どうせ、子どもの死体を探して欲しいだとか、そんなことだろうよ?前から村の中をまわってそう言ってたがな、はーっ、笑わせるぜ、全て自作自演だろうによ」
「…一体、なんのことを言っているんですか?プルーニさんのお子さんは亡くなったんですよね?先ほど山に入って、お子さんのお墓があるという場所まで行ってきましたが」
「はっ、崖の所だろ?あそこに墓はあったか?墓石でも見たか?なかったんじゃねえか?あそこは、ただの崖でしかねーよ。墓なんて最初っから存在しねーんだよ。なぜなら、プルーニが子どもを殺しちまったんだからな」
セイヤは、先ほどプルーニと並んで座った崖を思い出す。
プルーニと話すのに集中していて気にしなかったが、確かに、あそこには墓石はなかった。
「…なぜ、プルーニさんが殺したと?証拠でもあるのですか?」
「証拠はねーよ。だがな、村の大半の大人は、そうだと考えてるぜ」
「…その理由は…?」
「まだプルーニと村長が夫婦だったときよ、ある日の夜中に、えっらい剣幕で言い争ってたんだよ。そして、その日を境にプルーニんちの子どもを見かけなくなってよ、プルーニに子どもはどこに行ったんか聞いたんだけどよ、ハッキリしねー答えばっかりでよ。んで、しばらくして聞いてみたら、死んだっつーんだ。そりゃ、疑うのも仕方ねーだろーよ」
「…ちなみに…それはいつ頃のことですか?」
「あー?子どもが死んだんは、去年だったな。ああ、そーいやあ、元村長が亡くなったのも去年だな。プルーニにとっちゃあ、身内が2人も立て続けに亡くなったんは辛いと思うがな、こういう小さい村は信用で成り立ってるんだ。この村に人殺しがいるかどうか、ハッキリさせなきゃならねえ。」
プルーニがこちらに歩いてくる姿が見えると、男は背中を向けた。
「あんたがプルーニのなんの相談にのってるか知らねーが、プルーニにつけ込まれねーようにな」
男が去っていくと、プルーニがセイヤの背中を優しく叩いた。
「ごめんねえ、お待たせしちゃって。今から、うちに行こうか。狭い家だけど、セイヤさんが泊まるくらいは、なんとかなるからさ」
笑みを見せるプルーニの後に続くセイヤは、男の話が頭から離れないでいたのだった。




