第10話 ヒメごと①
「次の行き先だけれど——」
「僕にも、差出人からの手紙を見せてもらえませんか」
深く椅子に座るプロファーンが、大きな猫のような瞳を鋭くセイヤに向ける。
「いいわよ」
プロファーンは、まるでマネキン人形のような白く細長い指で挟んだ手紙をセイヤに渡す。
セイヤは開封すると、ゆっくりと紙に目を通す。
「…この願いを叶えるのですか?前回とはまた違った分野というか…」
「そうかもしれないわね」
「大昔から続いているこの村では、最近になって村の自然を伐採し始めた。埋め立て、新しい街を築こうとしている村長を改心させて欲しい、とは…。前回と比べると平和というか、極まともな願いに思えます」
「そう」
「はい、また前回のような願いを叶えるのかと構えていたので、そうではなくて少しホッとしました」
セイヤは安堵からプロファーンに笑いかけると、プロファーンは視線をそらし暖炉の火を見つめる。
「1つだけ、伝えておくわ。人間は結局のところ、私欲にまみれた生き物よ」
「?はい…分かりました…?」
「それでは、いってらっしゃい」
首から下げたユニコーンのネックレスが胸元で揺れ、セイヤはハッとする。
「あ!そういえば、このユニコーンのネックレスは——!」
聞きかけたが、既に視界はグルグルと回転し出し、前回と同様、セイヤは意識をすぐに失った。
◇◇◇
どのくらい気を失っていたのだろうか、セイヤは急に目が覚めた。
すると、いくつもの大きな瞳が、こちらをじっと覗き込んでいた。
「だ、誰だ!?」
セイヤが驚いて声を上げると、大きな瞳たちはパッと目の前からいなくなった。
セイヤは勢いよく起き上がると、茶色い肌に坊主頭の子供たちが数人こちらをじっと見つめていた。肌の色のせいだろうか、白目の部分がとても目立つ。
そして、服は薄い布をまとっているだけで、決して華美な服装ではなかった。
「君たちは…何をしてるんだ?」
驚かさないよう、セイヤはゆっくりと問いかける。
すると、子ども達は顔を見合わせた後、中の1人がすっと一歩前に出る。
「何って、お兄さんこそここで何してるの?」
「ああ、そうだね、僕は…」
言いかけて、セイヤはハッとする。
プロファーン宛ての手紙は、必ず大人からだということ。
そして、来る前に読んだ手紙も確かに大人からだった。
前回は、手紙を出した三島紗子の前に出現したため、今回もてっきり手紙の主の前かと思っていたのだが。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけれど、プルーニさんていう人を知らないかな」
すると、子ども達は顔を見合わせ、頷き合う。
「知ってるよ!村の中で一番美味しい料理をつくる人だよ!」
「そっか。そうしたらさ、プルーニさんの所へ案内してくれないかな」
「いいよ!着いてきて!」
ワーッと慌ただしく草木の間を走り降りていく子ども達を見て、初めて周りをみまわすセイヤ。
セイヤは悟った。辺りは高低差様々な植物が鬱蒼としげっており、自分がいる場所が山の中であること。そして、自分は今から子ども達が走っていった道無き道、そうまるで獣道のようなこの坂を、自分も降りなければならないということ。
「人生初だな。これは、大変だ…」
セイヤは、下で手招きしている子ども達の方を見て呟いた。




