第1話 俗なるサンタクロース
「ふぉっふぉっふぉ、今日もたくさんの子ども達から手紙が届いておるの」
赤い服を来たサンタクロースは暖炉の前にある大きなふかふかの椅子に座ると、目の前の巨大な箱の中に手を伸ばし、世界中の子ども達から届いた手紙に、1つ1つ丁寧に目を通す。
「おや?これは……セイヤ、ちょっと来てくれるかね」
サンタクロースが声を張ると、すぐに部屋に現れたのは深い緑色の服を着た黒髪の青年だった。
「はい、なんでしょうか」
「すまないが、この手紙をプロファーンの所へ届けてくれないか。おそらく、プロファーン宛ての手紙なのだが、誤ってこちらに紛れ込んでしまったようじゃ」
「承知しました。今すぐ行って参ります」
青年は手紙を受け取り頭を下げると、すぐに部屋を出る。
部屋を出た先のフロアには、同じく深い緑色の服を着た若い女性達が忙しそうに動き回っている。
「あら、セイヤどこに行くの?」
セイヤの存在に気が付いた少女や女性達が目をキラキラさせて、ワラワラとキリヤの周りに集まってくる。
セイヤは、綺麗なアーモンド型の目に、通った鼻筋に長い手足に高い身長という見た目の良さから、女性達から情熱的な熱い視線を送られていた。
「サンタクロース様から、届け物を頼まれたんだ。これからプロファーン様の所へ行ってくるよ」
「——えっ、プロファーン様のところ…っ…?!」
女性達が一気にざわつき、空気がピシッと凍りつく。
「どうして、セイヤが行かなきゃいけないの?配達をしたモノに、もう一度預ければいいじゃない」
「そうよ。セイヤが行くことないわ」
女性達が次々と口にする言葉は、全てが否定的な言葉で、皆な顔は青ざめている。
「心配ありがとう。けれど、サンタクロース様からの頼まれごとなんだ。行ってくるよ」
引き留めようとセイヤの体に手を伸ばす女性達をなだめ、セイヤは1人サンタクロース邸を出る。
外は空一面真っ暗で雪が舞っており、上も下も右も左も視界一面が真っ白だった。
その白い世界の中に佇むサンタクロース邸から漏れる光だけが、暖かく辺りを照らしている。
「ルドルフ、僕を送って行ってくれるか」
トナカイ小屋に行くと、セイヤはトナカイにそう声をかけ外に連れ出した。すると、トナカイは嬉しそうに身震いをする。
「そうだよな、久しぶりの外出だもんな。よし…出発!」
セイヤの掛け声と共に、セイヤを背中に乗せたトナカイが真っ暗な空に向かって大きく駆ける。
どのくらい時間が経過しただろうか、辺り一面の雪景色だった世界は、いつの間にか紫色の宝石のような石のような塊が、地面や壁面のあちこちから突き出ている場所へとやってきた。
その中に、サンタクロース邸の10分の1程度の大きさの、こじんまりとした家が見えた。
サンタクロース邸とは違い家全体が薄暗く、外からでは家の中に誰かいるのかも分からない。
セイヤはトナカイに下へ降りるよう指示を出すと、その家の前にトナカイは軽快に降り立った。
「ありがとうルドルフ。もう君は帰っていいよ」
セイヤがトナカイの首筋を優しく撫でると、トナカイは心配するかのようにセイヤに顔を擦り付けた後、また真っ暗な空へと飛び立った。
「さて……」
セイヤは目の前の家に歩き進むと、ドアを軽くノックする。
「プロファーン様、私はサンタクロース邸から参りました、セイヤと申します。お渡ししたいものがあり、こちらへ参りました」
すると、セイヤの目の前のドアが勝手に開き、その後に、チリンチリンと小さく鈴の音が鳴った。
開かれたドアの先には誰もおらず、更に部屋の中は真っ暗だったが、セイヤは呼吸を整えゆっくりと家へと足を踏み入れた。




