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間章 予告状 

 お茶会から、数日が経った。

 いよいよ舞踏会の当日を迎えた。

 会場の大広間では、舞踏会の準備が着々と行われている。

 使用人達が忙しく動き回り、瞬く間に一階部分の装飾を整えていく。

 出入口から料理が運ばれ、各テーブルに並べられる。

 「…私、次の準備をしてきます。」

 その途中で、金髪のメイドが言うと作業の輪から外れ、階段を登って二階へと辿り着く。

 さらに扉を抜け、渡り廊下を通り過ぎ、城内の廊下を進む。

 その先には、シヤリーの控え室があった。

 すると部屋の前には、人影がいた。

 金髪のメイドが側まで行くと、全貌が露となる。

 「シヤリーさん、…ナンリーですわ。…入っても宜しいかしら?」

 そこには、ナンリーがいた。

 ちょうど扉をノックしながら、声をかけている。

 すぐ後ろには、側使えのメイドも控えている。

 「…はい、…どうぞ。」

 次の瞬間には、部屋の中からシヤリーの返事が聞こえてくる。

 ナンリーは入室していく。

 側使えのメイドは、恭しく御辞儀をしながら見送っていた。


 やがて控え室の扉は、静かに閉まる。

 やや遅れて金髪のメイドは、部屋の側を横切っていき、曲がり角の先へと姿を消した。

 (行ったわね。…)

 その直後、側使えのメイドは扉に顔を押し当てて、静かに聞き耳を立てだした。

 両目は血走り、凄まじい形相だ。

 「……です、わ……。」

 暫くすると、部屋の中の声が聞こえてきた。


 ※※※


 一方で、ーー

 控え室では、楽しげな雰囲気が漂っていた。

 ナンリーは目を輝かせて、喋っている。

 シヤリーは椅子に座ったまま、微笑んでいる。

 互いに向かい合いながら、他愛ない話をしていた。

 「わぁ。…シヤリー様、綺麗ですわ。ドレスも凄く似合いますわ。」

 「…うふふ。…ありがとう。この服は、お母様が譲ってくれたのよ。…今日は、両親共に、参加出来ないから代わりにって。」

 「それは素敵ですわね。」

 「…この姿を、ヴィシュー様にも早く見せたいわ。」

 「あの、…シヤリー様。…お願いがあるんですけど。」

 すると途中で、ナンリーは照れながら、両手の指を絡める様な仕草をする。

 さらに辿々しい喋りで、お願いをしてきた。

 「…今日の、…舞踏会が終わりましたら、シヤリー様を、義姉様って呼んでも宜しいですか?」

 「え?」

 「…あ、あたし。…ずっと前から、姉がほしかったんです。」

 「!!」

 「…うちはお母様は、もういませんから。…女性同士だけの話とかを出来る方と、一緒に居たかったの。…だから、…その。」

 「…こんな私が姉でも良ければ、これから宜しくね。」

 それをシヤリーは聞くと、優しい口調で答えた。

 「あ、ありがとうございます!」

 すぐにナンリーも瞳を輝かせながら、返事をした。頬も緩んで、満面の笑みを浮かべだす。

 だが次の瞬間、ーー

 「あれ?…」

 と、ナンリーは首を傾げながら、今度は不思議そうな顔となった。 

 シヤリーも気がつき、すぐに後ろを振り返る。背後の壁側を見ていると理解したのだ。

 その視線の先では、窓の戸の間に便箋の封筒が挟まっていた。

 「…何、これ?…さっきまで無かった筈。」

 と、シヤリーは言いながら、恐る恐る手を伸ばして取った。


 それは、普通の封筒である。手で触れば、微かに厚みがあり、手紙が中に入っているようだ。

 シヤリーは蝋の封を剥がすと、中身の手紙を広げて確認する。

 隣からナンリーも、覗き込んできた。

 その手紙には、つたない文字で、短い文章が書かれていた。


 シヤリー令嬢。

 今夜の舞踏会にて、【貴女の大切にされている人】を頂戴いたします。

 どうか、御容赦願います。

            アルジェンより。


 手紙の内容を、シヤリーは見た途端に驚愕していた。

 顔色も一瞬で、真っ青になってしまう。

 「…この手紙、…アルジェン!?…シヤリー様の大切にされている人って、…お兄様?!!」

 と、ナンリーも慌てふためきながら、大きな声で騒ぎだした。

 


 ※※※


 時同じくして、側使えのメイドも話を耳にしていた。

 (…何ですって!!?…アルジェン?!)

 激しく動揺を露にし、ようやく理解すると、怒りに身体を震わす。

 すぐ扉から離れて、何処かへ向かう。

 (…何で、このタイミングなのよ?!…今さら計画は変えられないし。)

 ずっと思考を、巡らせていた。

 ガチャ。

 すると突然、部屋の扉が勢いよく開いた。

 「え?」

 と、ナンリーは驚きながら、すぐに扉越しから周りを見渡す。

 さらに目の前の様子に、思わず声をあげる。

 「…どうして、誰もいないの?」

 「如何なさいましたか?」

 ほぼ同時に、金髪のメイドが廊下の奥から駆けつける。

 「…これを見て!!…すぐにでも、お兄様やお父様に知らせないと!」

 ナンリーは部屋を出て、利き手に持った手紙を手渡す。

 アルジェンの予告状である。

 「!?…解りました。…此方を、お借りします。」

 と、金髪のメイドも手紙を受け取ると、廊下を駆けて行き、来た道を戻っていく。

 向かう先には、王族の居住区へと向かった。

 やがて金髪のメイドは曲がり角に身を隠すと、利き手で顔を撫でる仕草をした。

 すると一瞬で、姿が変わる。

 それはライルだ。

 「…釣れたかな?…次は、…。」

 と呟いた後に、指を鳴らす動作をすると、姿を一瞬で消してしまったのだった。


 ※※※


 「あら?」

 そしてシヤリーも呟くと、封筒の中に何かが入っているのに気がついた。

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