第6話「絶望」
うわあああ! ふざけるなこのー!
折角気持ちよく寝ていたってのに。最悪だ!
「大丈夫? お姉ちゃん」
「大丈夫じゃないけど大丈夫。鳥の糞が頭に落ちたんだ」
「運が付いたと思えばいいよ」
ボクの銀色の髪に落とすとは。臭いだって付いた。魔法がなければ大慌てなところだ。
それにしても、さっきの夢は何だったんだろう? 5年前のことを思い出すなんて。
「今日は雨らしい。傘を用意しないとだね」
「雨か。好きじゃないんだが」
「お姉ちゃんの好き嫌いで天候は変わらない」
「ユキならできるだろう。雨雲をパッと散らしてくれ」
「だーめ。わたしは雨が好きなの」
傘を差しても画になるから言えるんだよなあ。雨上がりの太陽が金髪を照らせば天使の降臨だもん。
「ちぇ。じゃあせめて雨が激しく降る前に済ましちゃおう。墓参り」
「うん。お父さんとお母さんに話したいこと、いっぱいある」
そう、5年前のあの日、父さんと母さんは殺されたんだ。
※ ※ ※
パーティーはきらいだ。だけど、りょうりはおいしい。こうすいのにおいはするけど。たべてたべてごまかす。
「ヒッハッハッ! 旨い食いもんがあるってのはここか!」
だれだろう。なんかこわい。ぶきみ。
「ミア、ユキ。私の側を離れてはなりませんよ。あの者、異様な気配をさせています」
ボクとユキは、かあさんのうしろにかくれる。ユキがぼくのからだにしがみつく。こわいんだ。
「君、場所を弁えるべきだ。そんな相手を威圧する態度で接していると誤解を受ける」
「知らねえ。俺、礼儀とか知らねえ、興味ねえ! ちょいとおめかしして何様だ? 雑魚の分際でさー!」
「がはっ……」
あわわわわ……!? おとこのひとが……きられちゃった。ちが……。
「生憎、俺は吸血鬼じゃないんで。血なんかには興味ねえ。が、俺は男なもんで、女には飢えているんだ」
「やめないか!」
「邪魔だジジイ! 俺に触れるんじゃねえ!」
おおお……おじいさんが……。
「おぉん? いい女がいるじゃねえか。そこのべっぴんさん、来な」
あいつ……かあさんを。
「貴女たちは動いちゃいけません。大丈夫です、私が強いのは知っているでしょう」
「かあさん」
「おかあさん」
かあさんは、ボクとユキにせなかをむけたまま、かいじょうをでていっちゃった。すごくむなさわぎがする。
※ ※ ※
「いい子に……育って……」
わたしとおねえちゃんは、おかあさんをおいかけた。
おとこのひとに、おかあさんはさされていた。
「おかあさん!!」
はなしかけてもこたえてくれない。
「まったく。抵抗しなけりゃ死なずに済んだのによ。惜しい女だったぜ」
おかあさんが……しんじゃった……!?
「かえして! かえして! かえして! かえして! かえして! いますぐ、おかあさんをかえしてよ!!」
おとこのひとをパンチする。でもぜんぜんだめだ。わたしのちからじゃ。
「悪いが俺、ガキには興味――ねえ!」
「ぐはっ!?」
からだがとぶ。おそらをまっておちる。いたい……いたい。
「ユキ!!」
「見られちまったらしょうがねえ。口封じに殺すか。ガキ2人、ましてや女だ。アリを踏み殺すようなもんだ」
わたし、しんじゃうんだ。しにたくないよ。
「や、やめろ!」
おねえちゃんが、わたしにせをむけてたつ。
だめだよ。そんなことをしたらおねえちゃんが!
「健気な。虫酸が走るんだ、そういうの――さ!」
「ああああ――!!」
おねえちゃん……おねえちゃん……おねえちゃんが……!!
「たった一撃で血反吐流して死んだか。あっけねえ」
「お……ねえ……ちゃん」
「泣いたって無駄だ。安心しな、すぐに追わせてやる――よ!」
「――おりゃあああ!!」
「あぁん!?」
「よくもよくもよくも!! よくも妻を!! 娘を!!」
しろいよろい……おとうさん!
「その鎧、近衛騎士かよ」
「喋るな。今すぐ首を跳ねてやる!!」
おとうさんがきてくれた! わるいひとをこらしめるために。これであんしん。おとうさんをおうえんしなくちゃ。
「おとうさん、がんば――」
「俺は、白が嫌いなんだ。気取ってるのが気に食わねえ」
「そ……んな……す……まない」
「――って」
わたしのおうえんはとどかない。おとうさんもしんじゃった。うわあああ!!




