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第3話「親バカ」

 ボクはドレスがきらいだ。きるとおちつかない。


「ミア。貴女にはこのドレスです」


 まっかなドレス。ハデなドレス。こんなもの、きたくない。


「みてみてー。おかあさん、おねえちゃん」


「あーら! やはりユキは何を着てもかわいい! 私の自慢の娘です」


 ユキはなんでもにあう。みずいろのドレスをきこなしてしまう。ボクにはできない。にあわないし、きたくない。


「おねえちゃんもドレスきてよ」


「ボクはきない。ボクにはにあわない」


「ミア、ワガママ言わないでください。折角貴女のために仕立てたのです」


「たのんでないもん」


「ミアも絶対に似合います。自分がかわいいことを認めてください」


「かわいくないもん」


 こういうのをおやバカっていうんだ。


「仕方ありませんね。ミアが欲しがっていたぬいぐるみを買ってあげようと思っていたのですが」


 ぬいぐるみ!?


「ぬいぐるみが遠ざかりますねえ」


 ぬ、ぬいぐるみ。ボクがほしいぬいぐるみ。

 かあさんはずるい。そうやってボクをつろうとして!


「ぐぬぬ……! き、きる!」


「そうですか! そうと決まれば早く着ましょう。心変わりする前に」


 かあさんのかおがゆるんでいる。おやバカだ。

 そうこうしているあいだにドレスをきせられてしまった。


「ほーらご覧なさい。こんなにかわいいのですよ!」


 かがみにボクがうつっている。これがボク……なの……!?


「おねえちゃん、かわいいよ!」


「私は幸せです。幸せで溶けちゃいます!」


 ユキとかあさんがボクにだきついてくる。おみせのひとがみているのに。はずかしい。


※ ※ ※


 俺はデレデレしている。鼻の下を伸ばしている。さっきから頬が緩みっぱなしだ。


「騎士長、また娘さんですか?」


「分かってしまったか」


「分かりやすすぎます。騎士長が娘さんを溺愛しているのは有名ですよ」


「俺の娘は絶対に美人になる。妻が美人なのだから間違いない。そうなると今から気をつけなければ。変な男が寄ってくる可能性が高い」


 今から娘たちの結婚を想像してどうするか! か、簡単には嫁にやらんぞ! 俺が認めない限りは!


「騎士長、目が怖いです」


「まさかお前、娘たちを狙っているのか!?」


「どうしてそうなるんですか!? 18歳が6歳や7歳を狙うわけないでしょう」


「さっき捕まえた男のこともある。18歳で結婚できる。11年後、お前は29歳、ミアは18歳だ。あり得ない話じゃないだろう」


 部下だろうと関係ない。ミアとユキに近づく野郎共は、問答無用で追い払ってやる!


「こ、怖いです……目が血走ってます……」


「ね・ら・う・な・よ!」


 早く帰って抱きしめてやるんだ。

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