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第21話「仕草」

 王都を出たはいいが、何にも当てがない。

 リンさんもユキも無言で道を歩いているだけ。辺りを見渡しても草木だけ。眠さが深まるだけ。


「ミア様、ユキ様。このまま当てもなく歩いていても時間を浪費するだけになります。ひとまず目的地を決めましょう」


 リンさんが地図を広げてくれた。流石はメイドさん。


「わたしたち、王都以外は分からないよ。フュミラだって名前を聞いたことがあった程度だったしね」


「面倒だから魔法で移動しちゃおうぜ」


「それはなりません。フュミラのときは助かりましたが、今は当てがありません。ただの道で遭遇することは充分に考えられます。少々ご面倒とは思いますが我慢なさってください」


 なかなかにSじゃないかいリンさんよ。確かに言っていることは正しい。ボクに何か案があるかと訊かれれば、ないとしか言えない。


「今は歩こうお姉ちゃん。新鮮な空気を吸いながら歩くのって気持ちいいよ」


「しょうがないねえ。レイダスの大地を踏みしめていこう」


「寛大なご判断ありがとうございます。では一応の目的地を決めましょう。どうなさいますか」


「リンさんに任せる。ボクもユキも土地勘ないんだ」


「分かりました。暫し歩くと村があります。私は何度か足を運ばせていただきましたが、とても安らげるところです」


 村、か。小さな集落ってイメージしか湧かないのはボクの想像力不足かねえ。万物創造が聞いて呆れるなあ。


「なんだかワクワクしちゃうよ」


「RPGみたいだな、なんか」


「あーるぴーじー、でございますか……?」


「ははは。リンさんには分からないよな。まあ、旅とか冒険のことだ」


「そうでございましたか。旅とか冒険は確かに胸を踊らせるかもしれません」


 ふう。随分と適当な説明になったが構わないよな。

 それよりも! 首を少し傾げて頭上にハテナを浮かべた青髪メイドのかわいいこと! リンさん駄目だぜ。そんな仕草を大衆に披露すれば大事になる。


「お姉ちゃんがリンさんを見てにーやーけーてーるー!」


 しまっ!? ユキに気づかれてしまった。


「私、何か変でございますか?」


「そ、そんなことない! リンさんは変じゃない!」


 しかしあれだな。宮殿の執事や近衛騎士は何とも思わないのか? いや、絶対にリンさんを狙っているやつがいるだろう。


「そうでございますか。では行きましょう」


 よくよく考えると、ユキを狙っているやつは宮殿にもいるのかねえ。ラブレターが宮殿に届くたびに胃をキリキリさせていたりして。


「お姉ちゃん。早く早く」


 ユキに手を引っ張られる。こうして一緒にいられるのは、あとどのくらいかねえ。ボクには、浮いた話なんて無縁だ。ボクの分までユキには幸せになってもらいたい。

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