第13話「披露」
意外に走るのが速いよ。わたしが遅いだけなの? なんとか相手の背中を見失わないようにするのが精一杯。このままだと逃げきられちゃう。
「よーし。えい!」
わたしは、全ての属性を使うことができる。まだまだ充分に使えるわけじゃないけど。わたし自身、分かっていないことの方が多い。とにかく、今は逃がさないこと。
「なっ……!?」
「……そこまでですよ……食い逃げさん……!」
疲れたよ。息が苦しくて参っちゃう。はあはあ。
「何しやがった! 身体が急に重くなった」
「わたしの魔法だよ。重力を操ったまで」
「重力……ちっ! 面倒なのに追われたわけか」
「大人しく一緒に来てください。戻ってお金を払ってくれれば――」
「――バーカ。払う気があるなら、最初から払ってるってーの! じゃあな」
しまった! 一瞬でわたしの財布を……! 許さない……それはお姉ちゃんからプレゼントしてもらった大切な財布なの! お金じゃ買えない大切な……大切な……。
「食い逃げにスリ。もう謝っても許してあげないよ――」
「――え!?」
どうしてくれようか。
「な、何だってんだ。いきなり目の前に!?」
驚いた驚いた。
「お、俺だって魔法使いだ!」
液状化したよ。だから何って感じだけどね。痺れちゃえ。
「ぐはあああ――っ!!」
いい気味。
「土属性じゃなけりゃ重力は操作できない。それなのに今のは雷属性の魔法じゃないかよ。魔法属性は1人1つのはず……な、何もんだ!?」
「返してよ。わたしの大切な財布を」
「やなこった」
「あなたの意思は訊いてないの!」
「なぬ……!? 財布が引っ張られやがった」
「財布の中の硬貨を磁力で引っ張っただけ。お店に戻るよ」
「誰が戻るか。ここで溺死させてやる!」
わたしを水の中に……!?。
「子どもだからって容赦しねえ!」
食い逃げにスリに殺人行為。もう目も当てられない人。越えちゃいけない線を越えちゃった以上、容赦しないよ。
「な、なんだ?」
こんな水――こうしちゃう。
「こ、凍らせた……だと……!」
「まだ続けるの? わたしからは逃げられないよ」
「お前、いくつの属性を……!?」
「全部、だよ」
氷を熱で急速に解かしていく。こうでもしないと信じてくれなさそうだからね。魔法使うと疲れるのに。
「熱を発して……火属性じゃなけりゃ説明がつかない!」
「言ったよね。全部だよって。これが現実で事実なの。お願いだから降参してよ。わたし、疲れちゃった」
「ふざけんな! そんなデタラメ信じてやるもんか!」
今度は投げナイフなのね。付き合ってられないよ。
「早くしたらどう?」
「どうなって……いやがる……? ナイフが空中で止まって……!」
「ナイフの時間を止めたの。ほら、全然動いてないでしょう?」
「じ、時間を止めた……!?」
「この魔法の属性が何なのかは分からないけど、無属性ということで納得してね」
「な、納得できるわけないだろう! 時間を止める魔法なんざ聞いたことない」
「そうですか。なんにせよ戻ってよ。わたしにしたことは黙っていてあげる」
「――っ!」
「逆らうのであれば、あなたに待っているのは地獄だよ」
「ちっ!」
ようやく大人しくなってくれたよ。もうクタクタ~。戻ったら、お姉ちゃんに抱きついちゃおう。




