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第10話「悟り」

 神経衰弱にここまで熱くなるときが来ようとは思わなかったねえ。ユキもリンさんも熱心だ。


「やりました! 私の勝ちです」


「また負けちゃったよ。リンさん強い」


「私自身も驚いております。こんなに記憶力がよかったとは自覚しておりませんで」


「リンさんを騙すのは至難だな。こんだけ記憶力がいいんじゃお手上げだ」


「ミア様は褒め上手でございます。悪い気はいたしません」


「本当に思ったことを言ったまでだもん」


「お姉ちゃんは、太鼓持ちだね」


「そう言われると違う気がするなあ」


 ヨイショしているとかじゃないわけだしな。


「そろそろトランプも飽きちゃったね。わたし、別のことがしたいよ」


「別のことって言われても……。外は生憎の雨なわけだし」


「ミア様は雨がお嫌いでしたね。どうしてでしょう?」


「え? 雨が嫌いな理由なんてない。理由なんてないけど嫌いなんだ。こればっかしは」


「姉妹でもいろいろと違うのですね。不思議なものです」


「わたしは好きなんですよ、雨。雨音も独特の空気も好きです。なんで好きなのかは分からないんだけど」


「あら、そういうところは似てらっしゃいますね」


 リンさんが誰かに対して興味を持つとは。

 そういえばボクたち。リンさんのことをそんなには知らないんだよなあ。わざわざ訊くのは迷惑かと思っていたから。


「リンさんには……その……」


「私は独りっ子です。寂しいと思ったことがないと言うと嘘になります。ですが、両親は私にたくさんの愛を注いでくれたので感謝しております」


「それならよかったじゃないか。なるほど。どうすればリンさんみたいな秀才に育つのか分かった」


「どの親も子には愛を注いでらっしゃいます。私は、自分が優れているとは微塵も思ってはおりません」


「ボクは掃除をサボることなんか茶飯事だ。毎日毎日、宮殿の清掃をしているリンさんには頭が下がるばかりだ」


「わたしも。リンさんは綺麗好き?」


「どうでしょうか。正直なところ、私にも分かりかねます。綺麗にすることと、好きということはイコールではないのです」


 なんだか深いな。18歳で悟ってるな。


「よーし。こうなったら絵を描くよ」


「藪から棒だな!?」


「思い立ったら即行動だよお姉ちゃん! お題は花!」


「ボクが絵が苦手なのは知っているだろう」


「絵を描くということと、苦手というのはイコールじゃないよ」


「ユキ様、お上手です」


「しゃーない。描かなきゃ終わらないだろう」


 やれやれ。座布団1枚ってやつかねえ。

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