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第三話 ラプラスの兄

「ほほぅ……昨日は混ぜご飯にしたのか。」


私は、あまり炊飯器のご飯は食べない。

親父も滅多に食べないと言っていたから、炊き上がる九割は弟の分だ。

普段は何もしない弟が、勝手に炊いてくれている。


炊飯器は、炊き上がりから12時間までは「何時間前に炊き上がったか」を表示する。

それを過ぎると、現在時刻の表示に切り替わる。

そして、そのまま保温を続けるとエラーとなり、停止する。


で、だ。

エラーで止まっても、炊飯器の中には一杯分のご飯……

私の分が、残されている。


この残された一杯には、理由がある。

お優しくヒマな弟が、忙しい私のために残してくれている……わけではない。

「お前が最後に食ったんだから、洗っておけよな」という、無言の意思表示だ。


おそらく、ご飯がカビても、この一杯は残っている。

以前、故意に四日ほど放置してみたが、それ以上は私が耐えられず、片付けた。


ところでさ。

混ぜご飯って、美味しいよね。

おかずが不要なところも助かる。


普通の白米より粘りが強くなるから、洗うのが若干大変だけど。

今回も、最後の一杯は私が片付けて、お釜を洗った。


そして……時は動き出す。

弟が、引きこもり部屋から出てくる。


私がご飯の残りを片付けた気配を感じ取り、

新たに炊飯器をセットするために。



さて。今回も軽く兄弟の攻防戦を披露したところで——こんにちは。

兄です。



話は変わるけど、みなさんは、子供の頃の恥ずかしい思い出ってあるだろうか。

私は、ある。


あれは、小学校低学年くらいの頃だったと思う。

通学途中に友人宅へ寄り、家から出てくるのを待っている時、ふとした行動を取った。


自衛隊がするような、カッコいい敬礼。

ケロケロした軍曹が、無機質な瞳で繰り出す敬礼。

某・永田殿を彷彿とさせる敬礼。


そんな敬礼ポーズを、友人宅の前で練習していた。

ビシィ!ビシィ!! と、擬音を思い描きながら。

なぜそんなことをしていたのかは、まったく思い出せない。


そして——窓ガラス越しに、目が合った。

ほほえましく笑みを浮かべた友人のお袋さんと、

「あのお兄ちゃん、何してんの?」って表情の妹ちゃんと。


いやぁ……ポージング練習してるところを目撃されるのは、マジ恥ずかしいよね。

今でも思い出すだけで赤面する。

できることなら過去に戻って、やり直したい。


「では、今日のところはこの辺で……おやすみなさい。」


恥ずかしい思い出に顔を染めながら、私は深い眠りについた。

やべぇ。恥ずい過去逸話とか、ノリで晒すもんじゃねぇ。

こんな時は……とっとと寝て〆ちまおう。


…………。




「過去に戻ってやり直しても、君は敬礼するけどね。」


……ん?

どこか、頭の奥の方で声がする。


「宇宙に存在するすべての粒子の位置と運動量は、過去から未来まですべて決まっているんだよ。

君の因果律に基づいた未来も、完全に決定されている。

そして、それを覆す行動を取れば、未来は変わるけど、それはもう今の君じゃなくなってしまう。

だから……ごめんね。今も君を見守ることしかできないんだ。」


ラプラスの悪魔の概念。

近代では、量子力学の不確定性原理によって、素粒子の位置と運動量を同時に正確な特定をすることは不可能とされている。

決定論が成立する場合でも、初期条件のわずかな差異が時間の経過とともに大きな違いを生むため、現実的には未来の予測は不可能——それが、現代の主流であるカオス理論だぜ?


ヅバーーーン!


そんな哲学的なツッコミを、頭の奥底で入れながら、私は覚醒した。


「……ここ……どこ?」


目を覚ますと、

うっすらと霧のヴェールに包まれた森の奥にいた。


朝露のひんやりとした冷たさが、足元でそっとざわめく。

新緑の香りが優しく呼吸を満たし、

小鳥たちのさえずりが、木々の間を踊る。


私の声はそっと静寂へと溶けていき、

木立のざわめきだけが遠くでささやく。


見渡す限り、私以外の気配はない。



ええぇぇぇ~~~???



もう第三話だし、そろそろイベント発生するかな〜とか思ってたけどさ。

このくだりって、絶対マズい流れだよね?

まさかの『俺が転生しちゃった件』?

あ、こっちの“件”の詠みは、“くだり”じゃなくて“けん”ね。


「って、どーでもいいわ、そんな事!!」


作品タイトルにも『弟を異世界転生させたい』って書いてあるじゃん!!

ちゃんと遵守しようよ!! ねぇ!? ねぇぇーー!!


……返事がない。ただの屍のようだ。


「って、俺ぇ!何でこんな時までドラクエ語遊びしてんですかぁぁ~?!」



家計が火の車であることは、もはやどうでもいいが………

我が家は、今日も平和である。


私以外は。

この作品は不定期進行です。

更新するかどうかは、私の気分次第であります。


気楽に待って、軽く笑い飛ばしていただけたら幸いです。


ではでは・・・アディオ―――ス、アミーゴ!

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