WHO IS INJURED?
ケイ・・・・。
誰かしら?
私の名前を気安く呼ぶんじゃないわよ。
ケイ!
「はっ!!」
天井がいつも見慣れた自室とは違うことがわかった。
布団の質感もいつものものとは違う。
「ここは・・・・・いったい・・・・。」
「ケイ!!」
声がする方を見る。
金髪にオールバック。
目はぱっちりとしていてとても美人なお顔立ち。
「りょーちゃん様・・・・・」
「ケイ!!あなた一体何をして・・・・・」
あたりを見わたす。
ここは・・・・
合宿の部屋だ。
「なんであんなところから飛び降りて・・・・」
「飛び降りて・・・?」
体を起こす。
「あたたた・・・・・」
「大丈夫?まだ寝てなくて・・・」
「いえ。。。すみません。それより200キロマラソンはどうなりましたか??
「いったん中止にしているわ。あなたがけがをしたもの。」
「私がけが???」
思い出す。
エリカを突き落とそうとしたら、
エリカの感触はなくそのまま体が宙に放り出された。
あれは・・・・・
幻覚だったのか。
「すみません。。。。ご迷惑をおかけして・・・・」
体を立ち上げようとする。
「今日は練習はいったん終わりよ。こんな状況だもの。」
そうだ。
200キロマラソンという一見無謀なメニューはどうやら私が崖から落ちたことで中止になったようだ。
「みんなは・・・・どうしてますか?」
「お風呂に入って寝ているわ。」
時計を見る。
朝6時。
4時間近く気を失っていたのだろうか。
「きょ、今日の練習メニューの時間!!」
「だめよ。けが人を出したもの。見直しが必要だわ。」
けが人?私のことだろうか。
「今日は1日オフにしたわ。初日からやりすぎたのもかもしれない。。。」
りょーちゃん様はうなだれている。
目元には少し涙がたまっている。
「そ、そんな!!りょーちゃん様は正しかった!!我々部員がついていけなかっただけ!練習と気合と根性が足りなかったんです!だから今からでも本日のメニューを・・・・」
「だめよ。今日はお休みにしたの。」
「そ・・・・そんな・・・・。」
「もう少し寝てて頂戴。水をもってくるわ。」
りょーちゃん様はそういって部屋を出て行った。
私がけがをしてしまったからこんなことになったのだ。
「く・・・くそ・・・・」
りょーちゃん様に嫌われてしまう。
なんとかしてすぐに練習できるようにコンディションを整えないといけない。
立ち上がる。
「あれ・・・・?」
すくっと立ち上がることができた。部屋を出て歩く。
トイレに行こう。
トイレは200メートルほど先にある。
音をたてないように小走りで走ってみる。
体の痛みはどこにもない。
「私は・・・・ケガをしたのかしら?」
練習場に降りてみよう。
♦♦♦
「おかしいなあ・・・・どこも痛くないし。なんなら今すぐにでも練習できそうだ・・・・」
走り込みも、ステップも何も問題なく刻むことができた。
体が痛いところはない。
私がけがをして中止になったのではないのだろうか。
少しクールダウンも兼ねて歩く。
練習場は木の板で床がびっしりはられており、しっかり磨かれている。
音響設備もしっかり整っており、長野の山間だからとくに歩いている分には暑さを感じることはない。
2,3週歩いたところでそれは唐突に表れた。
「あ・・・・・。」
頭がくらくらしてくる。
眠気だろうか・・・・・
練習場のソファーに座る。
ぐわんぐわんと頭が揺れてくる。
「な・・・え・・・・・。」
ソファから崩れ落ちる。
頭を打ったのか。
少しゴンという音とともに、私はそのまま意識を失った。