わたしらの相性、確かめてみない?
オンラインで出会う日になった。
こういった怪しいDMは直接会うのはやめておいている。
出会い厨だったり、
普通に風俗のスカウトだったりする可能性があるからだ。
だから大概オンライン会議システムの予定をとっても直前に
「やっぱ忙しくて無理っす。」
みたいなDMが届いて何も話が進まないのがほとんどだ。
だからだ。
時間になって目の前に現れたショートカットヘアの女性。
青い髪がさらさらしており、ショートヘアという点がなんとなく
親近感を覚える。
ただ。
たぶんこの人。
ものすごくコミュ障だ。
オンライン会議が始まって30分。
付属のチャットシステムでしか会話してこない。
キーボードを打つ前に、口をもごもご言わせるが
結局キーボードをカチャカチャさせる。
視線も合わせようとしない。
ただ、私のファンであることはよくわかった。
・ずっと見ていました。
・1年生の時のルナさんの演技を見に行きました。
・全国のイベントにもよく出ていましたよね。
・私が一番好きなのは、東京で開催されたあの伝説の・・・
・また見たいです。しばらく見れていないので。
・ルナさんの実情を見て、私何かお手伝いできないかなと。
ただ。
何も見返りを求めないのはかえって不自然だ。
彼女は見たところ、そんなに歳は離れていない。
社会人かもしくは学生か。
学生にしても何かお金とかもらってやるレベルのコミットを彼女はしようとしていたのだ。
・リハビリテーションのプロをつけます。
・動画配信者として一流にします。目指せ、登録者50万人
・動画配信から、TVにつなげて瑠璃大学ダンス部復興を
みたいなレベルでコミットすると話をしている。
もとい、チャットでそのように入力されてきた。
「・・・・・・。」
私は思い切って返事をしてみた。
「で・・・・見返りは何を求めるの?」
テルという青髪のコミュ障は少し顎に手をあてて、あからさまに
焦っていた。
頭から汗が飛ぶのが見えるようだった。
この子、コミュ障だけど頭は悪くないのだろう。
下手に「何も見返りを求めません。」なんて返した日には、
私は断ろうと思った。
ボランティア的にかかわられても結局どこかで
無理になる。
コミットも中途半端になる。
だったら、関わる時間こそ無駄なのだ。
そのくらいはわきまえているだろう。
何か報酬を求めるくらいでないと。
テルはしばらく考えこんで、答えた。
「・・・・・ってほしい・・・・」
「うん?なんて・・?」
テルは顔を伏せながら、喉から鉄でも絞り出すように声を出す。
「私と・・・・恋人になってほしい。」
「恋人・・・・」
少し頭を整理する。
「え・・・と。支援を受ける代わりに、恋人として過ごしてほしいと。」
「は・・・い・・・。」
うーん。
百合かあ。
「テルって・・・いったっけ?まだわたしらオンラインでしか会ってないじゃない?
そういうのは一回会ってから。そうだね・・・・相性というか空気感で確かめた方がいいと思うんだ。」
「は・・・い。」
「うーん、どうしようかなあ。」
なんせりょーちゃんにここに連れてこられて以来の外だ。
だが、そろそろ通院もしたい。
りょーちゃんも通院くらいなら許してくれるだろう。
「じゃあ・・・・〇月〇日に瑠璃市立病院に通院するからその帰りにお茶しようか?」
私は待ち合わせ先の地図を送った。
「は・・・・い!!!」
テルは初めてこちらに目を合わせてきた。
瑠璃色の瞳。
吸い込まれそうな蒼。
深い海のようなそれに私は少し心奪われた。
ずっと無表情だった女の子が、満面の笑みでこちらを見ている。
それだけでさ・・・・・
なんだか体の芯は熱くなっていた・




