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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました 〜サイドストーリー〜  作者: 林海
第六章 新たなる道へ編

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第4話 時を超えて


 病院の中の、個室に戻る。

 廊下では話もできないからね。みんなで移動だ。


 周りの迷惑にならないよう声は抑えるけど、でも良いことのあった集団ってのは、一目瞭然だったろうな。

 「僕が美桜に初めて会った時の話、したことがあったかな?」

 そう、義父(ちち)のバリトンの声が響く。


 嬉しさのあまり落ち着かず、誰もが落ち着いて座ってなんかいられない。

 赤ん坊も、一通り全員が抱いたあとで再び美岬の胸の中。

 そんな中でその声は響いた。


 「いえ、大雑把には聞いていますけれど、詳しくは……」

 そう俺は答える。



 「実は、僕も今日は運命を感じていてね。

 当時、美桜の家には、太一という犬が飼われていた。

 美桜はその犬の散歩の帰り道で、僕は朝倉家を探していて偶然路上で会った。

 その太一が美桜の手から逃げ出して、僕の方に走ってきたんだ。

 そして、僕を見ると、僕を振り返り振り返り、美桜のところに戻っていった。

 遊びたくて逃げ出したはずなのに、不満そうでもなく、また僕を怖がっているわけでもなく、だ」


 「あのときのこと、私もよく覚えている。

 そうね、太一は大人しく戻ってきたわね」

 義母(はは)も言う。


 「そうなんだよ。

 僕は、そこにちょっとした運命を感じていた。

 で、だ。

 今日は、その太一の命日なんだよ」

 「言われてみれば、そうね、今日はその日だったわね」

 その日って……。


 女子高生時代の義母(はは)が誘拐されかけ、それを阻止しようとした義父(ちち)と犬の太一が撃たれた、あの日だよね。

 義父(ちち)は刺された挙げ句に撃たれ、左肩から胸、腹にかけて、四発を食らい、肺と肝臓の一部、小腸の五分の一と脾臓の全てを失った。

 中型犬の太一も、その頭蓋と身体で複数の銃弾を受け止め、首から上は残らなかったと聞く。


 「太一が僕を美桜のところに案内し、さらに僕と美桜の命も救った。

 結果として、あの犬がいなかったら……」

 「ええ、それは考える。

 私たちはいない」

 つまり、美岬もいないということになる。

 俺は黙って話を聞いている。

 話の行き先は予想できるけれど。


 「その太一が、善行を認められて、やさしい良い資質のまま人として産まれてきたら……」

 「そうね、応報というものがあるのであれば、自ら悪いことでもしない限り、撃たれて死ぬようなことはもうないと信じたいわね」

 そう言って頷き合う。


 そして、義父(ちち)は続ける。

 「前世が犬かもなんて言い出して、真君を不快な気持ちにさせてしまったかもしれない。でもね、僕たち夫婦にとって太一は、あまりに特別な存在なんだ。

 産まれた来たこの子を貶めるつもりはないし、むしろ気持ちとしては逆だということを解って欲しい」

 「言われなくても解りますよ。

 大丈夫、そんなことは思いません。

 因果なんて言葉、非科学的だし、仕事にも有害な考え方だと思っています。

 でも、そうとしか捉えられないことも、たくさん経験しています。

 もしも、この子がそうだとしたら、幸せになってもらわないと。

 そして、それはそのまま俺たち家族の幸せに繋がりますよ」

 俺、そう答えていた。



 そのまま会話は途絶えた。

 ただ、部屋の中でゆっくりと時が流れていく。

 


 俺は考えていた。

 誰かを守りたい。

 それが美岬の動機だった。高校1年の時に聞いた言葉だ。

 「私に害意を持っている人であっても、守る、守れるのよ」

 そう話した十六歳の美岬の顔を、俺は忘れていない。

 いや、忘れられない。


 俺にも同じく、その思いがある。

 慧思だって、美鈴(メイリン)だって、みんなみんなその思いを持っている。

 関係者という意味では、飼い犬ですらその意志を持っていたということだ。

 俺だって、話に聞くその場にいたら、そして美岬を守るだめだったら、自らの身体で弾丸を止めようとしていただろうな。



 今産まれたこの子は、男の子だ。

 つまり、すでに明眼の呪縛を離れている。だから、将来どのような仕事に就き、どのように生きていくのかは判らない。


 でも……、でもだ。

 生きる目的に迷ったら、誰かを守るというその思いを。

 明眼が十代続き、受け継いできたそのバトンを受け取って欲しい。

 それは、どんな仕事に就き、どう生きようとも、それぞれの場で実現できるものであるはずだ。

あと1つか2つで、すべてのお話が終了の予定です。


淋しくて……。でも、さっとさアップしなきゃですね。

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