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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました 〜サイドストーリー〜  作者: 林海
第五章 新たな事態?編

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1 朝の爆弾

新たな展開ということで。


 「話がある」と美岬に切り出された朝、俺は焦っていた。


 なんせ、久野さんが来てから輪をかけて忙しい。

 共感覚って奴だろうか?

 今までの仕事の報告書を数十年遡って読み直し、全然関係ないとされてきていた事例から共通項を見つけ出し、次から次へと今までと別のシナリオを描き出しているのだ。

 どうも、久野さんの中では、事例ごとに色分けがされているらしく、「同じ色の事件だから作戦立案者は同じ人かも」なんて言われても、他の誰も理解できない。ましてや、それが複数の陣営の国家に跨るとなれば、今までの作戦の前提自体が大きく異なってくる。


 まずは、「その感覚がアテになるか」から実証する必要があるし、深く調べてそのような痕跡があったりすれば大変なことになる。当然、裏を取り直さないといけなくなるし、協力機関にも話を通さねばならないこともある。しかも、その一方で、敵味方の陣営分けすらがあてにならない発見事例もある。

 正直言って、てんやわんやだ。


 十日間を共にし一緒に走り、肉体言語は共有しているからね。彼女の言うことが、あてにならないことではないことはよく判っている。

 先ずは坪内佐が事例洗い出しのフィルターにはなっているものの、その坪内佐ですら読み切れない事例があるらしい。

 オカルト的ですらある陰謀論を持ち出されても、裏取りしてなんらかの証拠が出てしまえば、調査レベルを上げざるを得ない。

 善意の存在は疑っても、悪意の存在は疑う余地もない。それが、時代を超えて俺たちのスタンスだ。


 従来から、世界の進む方向はある程度のシナリオがあった。

 理想、安定と繁栄。

 各国で目指すものがあれば、どうしても選択肢は絞られるものだ。その予想の組み合わせで、おのずとシナリオは描かれていく。

 でも、それとは違う次元で、何らかの意志が働いている。


 だからといって、作戦行動に今までと変わりはない。

 むしろ、変わりを作ってはいけない。

 こちらが気が付きつつあることを、知られてはならないからだ。

 坪内佐のフィールドである理性とは違う次元で、なんらかの事が起き続けている。

 蜘蛛の巣の中心にいるのがどんなモリアーティなのかは、今の段階では予想もつかない。


 ただ言えることは、久野さんと同等の知能と感覚を持っているであろうことは間違いない。

 論理を組み立てる頭脳のレベルとしては、坪内佐や武藤さんより上は想像しにくいけど、もう一つ別の世界を想定しないわけにはいかないだろう。

 石田佐がいて、武藤佐がいる安心感はもはやない。

 ただ、その安心感を保てるような体制を、俺たちは自らの手で新たに作り上げなければならないのだ。


 「帰ってから聞くのでもいいかな?」

 「じゃ、これだけ見ていって」

 そう言っても美岬が差し出した、体温計のようなものに目を走らせ……。

 脳がそれを理解するのに、明らかに時間がかかった。処理量がオーバーフローしたのだ。

 「男か女か、は、まだ判るわけないね。

 嬉しいけど、実感が……。

 嬉しいけど、今日からはもう、君、走らないほうが……。

 嬉しいけど、ああっ、なにをどうしたら良いんだっけ、こういう時は……」


 「予想以上に、ぼろぼろだなぁ」

 笑いながらため息。まぁ、そういう表情になるよね。

 「考えることが多すぎて、処理しきれてない……。感情が追いつかない。

 大切なものがいきなり増えて、何をすべきか、何ができるかわからない……」

 「いいから、いってらっしゃい。

 一時間遅くなっても、新幹線使って。運転は避けたほうが良いかも。

 今日も遅くなるだろうけど、晩御飯、用意して待っているから」

 「はい」

 ぎくしゃくぎくしゃく。

 歩くときは、足を前に出して、えっと、交互に前に出さないと歩けないんですけど。


次回、職場にて、の予定です。

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