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精霊の戦士たちへ  作者: 遠藤ゆきな
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第十一話 集う 精霊の戦士

船でイバラを出た三日後の、夏の月の二十日の朝。

ちょうど、オルタ達は王都の島に着いていた。

人気の無い砂浜を見つけ、ボートでオルタ・ミレット・ヴィネア・神の使者は島に上陸する。


最初は近くの村の港に着く予定だったが、

魔物だらけになってしまった、村の状況と、

次々と襲いかかって来る魔物のせいで疲弊してしまった、船員達を考えての上陸だった。


ミレット「ここからさらに、魔物に支配された王都に行かなくちゃならないなんて…」


ミレットも疲れていた。


神の使者「はい。 なので、ここからは最短かつ、最も安全な道を通りたいと思います。

きっと、この島の北と東でも、精霊の戦士が到着していると思います」


オルタ「精霊の戦士って、アイラス大神官が名付けたんだよね」


ヴィネア「そうね。 精霊の力を持つ戦士」


オルタ「プッ! ミレットが戦士ねえ」


ミレット「あっ! ひどいなオルタ!」


ヴィネア「ほら行きましょう。 …戦士様!」


オルタとヴィネアは笑う。

ミレットは半分怒り、神の使者の案内のもと、王都へ急ぐ。



夕方になり、三人は野営をした。

確かに今までの村より、魔物の数が多く、強かった。

明日に疲れを残さない為、早めに休んだ。


神の使者は状況を確認する。


神の使者(…アイラス大神官様。 こちらアインです。

水の戦士殿達と、王都から西の森にいます)


アイラス大神官には届かなかった。


アイン「アイラス大神官様の身になにか…」


アイスタ(こちらアイスタ。 聞こえますか? アイン殿)


アイン(!! あなたは確か、北の神の使者! 今どちらに?)


アイスタ(それはこちらのセリフです。 私は既に風の戦士と、セラフィリア大神殿に入りました)


アイン(なんと! アイラス大神官様は…?)


アイスタ(ご無事です。 疲れておいでですけれど…)


アイン(…… 明日には、水の戦士と大神殿に着くはずです)


アイスタ(分かりました。 大神官様に伝えておきます)


連絡が切れる。

アインも明日に備える。



次の日、簡単な朝食を食べ、出発する。


ミレット「王都までは、あとどれくらいですか?」


アイン「もう少しです」


オルタ「! あれは?」


オルタは遠くに見える、崩れかかった大きな塀を指さす。


アイン「…あれが、シエル王都の城壁です」


ミレット「えっ! あれが、王都…」



オルタとヴィネアは静かに城門の見張りを倒し、四人は侵入する。

まず、セラフィリア大神殿を目指す。


そこが王都とは思えないほど、荒らし、壊され、人がいなかった。


ミレット(…こんな魔物達にどうやって……)


オルタ「ミレット!! 伏せろっ!」


壁の裏から襲いかかって来たオークの棍棒を、オルタは剣で受け止める。


レッドオーク「ブフォフォー!!」


オルタ(力、つよっ…!)


ヴィネアはオルタを助けようとしたが、もう一匹現れたオークに邪魔をされる。


ヴィネア「ちっ…!」


ヴィネアはオークに魔法を食らわせる。


オークを倒し、オルタを見る。

一匹のオークに苦戦していたオルタの後ろに別の魔物が迫っていた。


ヴィネア「オルタ!!」


その時、二本の矢が魔物を刺す。

一本はミレットの放った矢で、もう一本は遠くから放たれた矢だった。

オークが急に倒れてきて、オルタは驚く。


オルタ「とわっ!」


ミレット「これは?」


青年「まったく、オークに真っ向から勝負を挑むとは、馬鹿な奴だな」


一人の青年が現れる。赤茶色の髪に端正な顔立ち。

剣を腰に差し、弓矢を持つ。


ヴィネア「あなたは?」


青年「おいおい。 お礼は無しかい? お嬢さん?」


オルタ「俺、助けられたの?」


青年「ふう。 いいから大神殿はこっちだぜ」


謎の青年は裏通りを通り、大神殿の地下通路の入り口を開ける。


アイン「この通路を知っていたとは」


青年「まあな」


青年と四人は通路を進み、大広間に着く。

大広間には沢山の人々がいた。


ミレット「こんなに沢山の人が…」


青年「いいから、こっちだ」


さらに奥の部屋に入る。


青年「連れて来たぜ」


アイラス「ご苦労様です」


アイン「アイラス大神官様! こちらが、水の戦士、ミレットさんです。

ミレットさん。 こちらがアイラス大神官様です」


アイラス「よくぞ、辿り着いてくれました。 私がアイラスです。

あなた方を案内したのは、風の戦士・ディハール殿」


ディハール「どうも」


アイラス「そして…」


長身で鍛えられた男性が前に出る。


アイラス「こちらが、この神殿を守り続けてくれた兵士、

土の戦士・バゼルです」


バゼル「よろしく頼む」


ミレット「こちらこそ!」


ミレットとバゼルは握手をする。



オルタ「なんで、ミレットが精霊の戦士だと分かったの?」


ディハール「こんな時に、王都を歩く奴はなかなかいないさ。

それに、西城門に向かったんでね」


オルタ「ふーん」


ディハール「それより。 これで、あとは雷の戦士だけか…

まだ連絡が取れないのか?」


アイスタ「はい。 さっきの連絡が最後で… おそらく、王都の近くには来ていると思うのですが…」


アイラス「ディハール殿。 また、探しに行って来てはもらえませんか?」


ディハール「はあ… 仮にも精霊の力を持つ者が、そんな簡単にくたばる訳…」


アイスタ「…雷の戦士は女性ですよ…」


ディハール「…しょうがない! このディハールが連れて帰ってみせましょう!」


扱いが簡単な奴だなとオルタは思った。


ディハール「もし良かったら、ミレット殿も行きませんか?」


ミレット「…僕は怪我を治す事が出来ます。 だれか、怪我人はいませんか?」


アイラス「なんと… それでは、人々の傷を…」


ミレットはアイスタの案内のもと、部屋から出る。



ディハール「ふう。 俺も行きますか」


オルタ「俺も行くよ」


ヴィネア「私も!」


オルタは前に出る。

ディハールはオルタの目を見る。


ディハール「…足手まといはごめんだからな」


オルタ「分かってる」


ディハール・オルタ・ヴィネアは神殿の外に出る。



三人は王都の東城門を目指す。


ディハール「それにしても、傷を治せるとは羨ましいな」


ディハールは歩きながら矢を放ち魔物を倒す。


オルタ「アンタはやっぱり風の力なの?」


オルタは襲って来た魔物を斬る。


ディハール「まあな。 だがお嬢さんの魔法もなかなかだな」


ヴィネアは針を一斉に飛ばし、魔物を一気に倒す。


ヴィネア「どういたしまして」


東城門に辿り着く。城門から離れた所で女性が一人、見張りの魔物に道をふさがれていた。


ディハール「おっ! あの方かな? 坊主、見せてやるよ。 俺の風…」


ディハールが言い終わる前に魔物は女性が出した、電流により、痺れ、倒れた。

ディハールの周りを僅かに吹いた風が虚しい。


オルタ「俺、坊主じゃないよ」


ヴィネア「オルタ… 彼女で間違いないみたいね」


女性は一度、木の裏に回り、女の子をおんぶすると、こっちに向かって歩き出した。

緑色の髪を一つに束ね、露出度の高い服を着ている。


女性「!? アンタらは?」


ディハール「俺は風の戦士・ディハール。 お迎えにあがりました」


女性「助かったー! 誰か傷薬を持ってない!?」


ディハール「怪我ですか?」


女性「チカが… ああこの子ね!」


ディハール「それはいけない。 すぐに神殿に行きましょう。 私がおぶりましょ…」


女性「汚い手でチカに触るな!!」


女性はディハールの差し出した手を払う。

オルタとヴィネアの案内のもと神殿に急ぐ。

一人、取り残されるディハール。


ディハール「……なかなか、たくましい女性だ…」


ディハールも後に続く。



チカ「……ありがとう」


ミレット「どういたしまして」


女性「本当にありがとな。 ミレットさん! 私はライメイだ」


ライメイはミレットに握手をし、腕をブンブン振る。


ライメイ「いやーここまで来るのは本当に大変だった。

王都なんて、来たこと無いのに、神の使者さんとはぐれちまうし、

私の妹分のチカが怪我をしちゃうし。 ううっ…」


チカ「姐さん。 私を見捨てないでくれてありがとうございました…」


ライメイ「当たり前だろ!?」



四人の精霊の戦士と仲間達がアイラスの部屋に集まる。


アイラス「ライメイさん。 こちらが、土の戦士・バゼルです」


バゼル「ライメイさん。 心配していました。 無事で良かった」


ライメイ「ああっ! …イケメン……」


ディハール「うっ!」


ミレット「……」


この四人を離れた所からオルタとヴィネアは見る。


オルタ「精霊の戦士は四人だけで、珍品揃いだね」


ヴィネア「ミレットが可哀想よ」



アイラス「…気を取り直して。

皆さん、とうとう精霊の戦士が集まりました。

…本来は“神を復活させる”ために集めた皆さんだが、皆さんなら

この王都を奪還できると私は思いました。

どうか、力を貸してください」


バゼル「もちろん」


ライメイ「私も!」


ディハール「……」


ミレット「…王都を奪還とは具体的に…」


アイラス「現在、王都の魔物を支配する魔物はシエル城内にいます。

この魔物を倒せば、魔物は南に逃げるはずです」


ディハール(……そうやって南方を見捨ててきたのが、この国だ)


バゼル「私は国王の兵です。 城内の魔物を倒し、国王を救い出します」


ライメイ「その魔物を倒さない限り、故郷が真に平和とはいえない…

私も戦います!」


ディハール「なら俺もそういうことで…」


ミレット「僕も戦います!」


アイラス「決まりました。 それでは、明日の朝に乗り込みたいと思います」


アイラスの話が終わる。



ミレット「オルタ達はどうする?」


三人は配られた食事を食べながら、話す。


オルタ「俺達も行くよ」


ヴィネア「あの濃い三人だけじゃ、ミレットが可哀想だからね」


ミレット「あはは…」


オルタ「それに魔物は仇だから…」


ミレット「オルタ…」


ヴィネア「……」



様々な思惑はあるが、今、王都奪還への決意が決まった。

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