1/3
話す絵画
ある街外れにある小さな画廊に1人の男が入っていきました。
彼は画廊の隅にある絵の前に立ち止まりました。
青い空と海に飛んでいる微かな鳥。
端に無機質な工場のパイプらしきものが描かれた絵画。
彼は顎に手をあて、その絵画の前で長らく顔の角度を変えていました。
そしてつかつかと店主に近づき「あの絵をくれ」と願い出ます。
「あの絵でしたらもう何年も売れていませんでしたからタダでお譲りしても構いません」
店主の言葉に目を細めるも本来の提示額を支払いました。
「ありがとうございます。興味本位で伺います、あの絵の何を気に入られたのですか?」
「気に入った訳じゃない、ただゆっくり眺めたいんだ」
「それだけで?」
「あぁ、このキャンバスに閉じ込められなかった物を見てみたくてね」
そう言って男は絵画を大切そうに抱え画廊を出て行きました。




