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その従魔おかしくないですか?~ダンジョンボス(元人間)ですが、主人の平穏な生活目指して頑張ります~  作者: 東風 晶子


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44.ランクアップ

 

「おめでとうございます、ランクアップです」


 冒険者ギルドの受付で思わぬ言葉を告げられて、ふたり揃ってぽかんとなった。

 たった今達成した依頼は、エリアーテからの薬草採取依頼だ。

 いつものごとく、何度も森の中に分け入ってはこれでもないあれでもないと繰り返し、ようやく完了できた依頼である。

 達成感はあるけれど、ランクアップに大きく貢献しているかと問われると微妙だ。討伐依頼のほうが加点対象になると聞いていたのだけれど。塵も積もればというやつだろうか。

 戸惑ったままの俺たちに、受付嬢が笑顔でランクアップの説明をしてくれる。

 Dランクになることで、受注可能な依頼が増えるということだった。

 まず地理的な範囲の拡大。マリードの町やその周辺の依頼に限定されていたが、そこから近隣の町や、果ては王都の依頼まで受けられるようになる。

 次に、内容の拡大。討伐や採集、ちょっとした雑用が中心だったこれまでに加え、護衛や特定地域の調査、鉱山での採掘なんて依頼まで受けられるようになる。移動先の町によってはその地方特有の依頼を受けられることも。

 最後に、ダンジョンへの入場が解禁される。俺たちは『炎の剣』があれこれと手伝ってくれたので、Eランクにもかかわらず幾度かダンジョンに入っていたが、本来はDランクからである。

 もちろん、ランクアップに伴って注意点も増えている。ただ、聞いた限りは常識の範囲内だった。依頼を無断で放棄しないとか、複数の冒険者と一緒の依頼では揉めないようにとか。

 他にも細かな相違点があるようだったが、受付嬢は「困ったら私たちか、『炎の剣』の人たちに聞いて下さいね」と締めくくった。

 『炎の剣』の名が挙げられたのは、彼らが俺たちの保証人になっているからだろう。

 この保証人制度、一体いつまでなのだろうか。ジーク達が面倒を見てくれるのは有り難いのだけれど、彼らに迷惑をかけっぱなしなのも気が引ける。

 そんなことをつらつらと考えながら、手続きのためにギルドカードを預けた。


「ああ、そうでした。ギルドマスターからお話がありますので、少々お待ちください。リズ、今大丈夫かしら? よかったらお二人を案内して貰えない?」


 ギルドカードを受け取った受付嬢が、手元の書類を見て隣へと話しかける。

 早朝や夕方ならばごった返すギルド内だが、今は中途半端な時間帯。並んでいる冒険者もいなかったようで、リズと呼ばれた隣の受付嬢がぱっと顔をあげた。

 同僚の顔を見て、書類を見て、それから俺たちを見遣ってにこりと笑みを浮かべた。


「わかりました。『金色の羽』のお二人ですね。こちらにどうぞ」


 彼女に案内されて向かったのは、何度か訪れた2階の応接室だ。

 まだ誰の姿もないそこに通されて、ノアと顔を見合わせる。

 何かマズいことでもしただろうか。

 この呼び出しがランクアップ由来だとも思えない。CランクやBランクになると言うならまだしも、上がってもDランクである。冒険者のなかで一番人口が多いランクなのだから、わざわざギルドマスターが面接めいたことをするはずもないわけで。


「やれやれ、待たせたな。ランクアップだって? 思ったより早かったな」


 やらかしの心当たりが見つからないうちに、ギルドマスターが現れた。どこか草臥(くたび)れた様子の彼は、溜め息と共にどかりとソファーに身体を沈める。かなりお疲れのようだ。

 座れ、と書類を持ったままの手で示されたので、ノアを対面のソファーに座らせた。俺はそのままソファーの後ろで待機である。他のギルド職員ならともかく、ギルドマスターは俺の正体を知るひとりだ。あまり()()()()()行動は慎むべきだろう。


「今日呼んだのは別件だ。ランクアップ自体に問題はねぇから安心しろ。帰りに更新したギルドカードを渡してやるよ」


 最初にそう前置きをして手元の書類をめくる。


「つっても全くの無関係ってわけでもない。お前らが先日討伐した森淵猪の件だ」


 懐かしい……と思うほど昔でもない話がでてきた。なるほど、やらかしはこれか。

 とはいえ残骸はちゃんと埋めてきたのだけれど。何か問題でも起きたのだろうか。こう、野生動物が掘り返したとか。

 俺同様にやらかしの心当たりを探っているらしいノアが、目に見えて落ち着かなくなる。


「え、えと、猪は……」

「お前らが討伐したってことはわかってる。『楽園の蛇』から詳細な報告が上がってるからな。……で、素材はどうした?」

「角は孤児院に置いてます」

「はぁ? 置いてる? なんでだ」

「薬草依頼、終わりそうだったから。一緒に持ってくるつもりで……でも、今日忘れちゃって」


 森淵猪の角は現在、孤児院、もといノアの部屋に鎮座している。

 もちろん、最初から飾りにするつもりはなかった。でかくて場所を取るし早々に換金しようと話をしてはいたのだ。

 ただ、『楽園の蛇』の話しぶりから換金に時間がかかりそうな気がしたため、なんだかんだと日を選んでいるうちにこうなった。まあ数日で劣化することはないだろうと高を括っていた部分もある。


「お前……はー、あいつらの言うとおりかよ……あのな、素材は早めに売りに来い。劣化するだろうが」

「はあい」

「わかってるか? Cランクの素材はひと財産、あー、かなり大金になるんだぞ。……そういえばお前、魔術鞄(マジックバック)は?」


 もってます! とノアが見せた魔術鞄に、ギルドマスターが溜め息をついた。

 森淵猪の角が置物と化した理由の一端である。ごく普通の一般的な魔術鞄なので、容量を軽く超える巨大な森淵猪の角は入らない。

 ちなみに、森淵猪の角もすんなり収納できるような魔術鞄はそれなりのお値段がする。

 早めに新しい魔術鞄を購入するように勧められた。角の売却額でまかなえる範囲らしいのでそのうち検討しよう。


「で、本題だ。今ギルドではDランク以上の冒険者に調査依頼を出してる。調査範囲は東の門からダンジョンまで。森淵猪が現れた原因究明が目的だ」

「でももう危なくないって……」

「ああ、『楽園の蛇』から聞いたか。森淵猪は単独行動が基本だからな、もう一頭見つかるなんてことはねぇよ。ならもう安全かっつーとそうでもなくてな。森淵猪(ヤツ)がこんなとこまで現れた原因を調べる必要がある」


 とはいえ原因はわからず仕舞いだろうともギルドマスターは言った。

 森の奥深くで何が起きてるかなどと、森の浅い所を探っても簡単にわかるものではない。何か異変があったかもしれないし、ないかもしれない。単純にあの個体の事情の可能性だってある、と。


「ギルドとしちゃあ放置もできねぇからな。わからんならわからんでいいが、調査くらいはしとかねぇと」


 半分くらいはギルドの体面だと、ギルマスは明け透けに説明した。


「お前らは今回ランクアップ条件をクリア、晴れてDランクだ。調査依頼も受注可能。つーわけで、受けてもらうぞ、『金色の羽』」

「えっ、僕たちも?」

「当たり前だろ。森淵猪を倒すだけの力があるやつを遊ばせておくわけねぇだろが。……まあどうしても嫌ってんなら断ることもできるがな。報酬はなかなかにいいぞ? Dランクの初仕事としちゃあ悪くねぇと思うがな」


 森淵猪ではなくともCランクの魔物が出るかもしれない場所。本来なら同じDランクでもそれなりの腕や経験がある冒険者向けの依頼だろう。少なくとも、たった今ランクアップしたばかりの冒険者向けではない。

 それでも広く募集するのは、それだけ調査範囲が広く、人手がほしいからか。

 町の門からダンジョンまでは結構な広範囲であり、整備されているのはダンジョンまでの一本道だけだ。道から一歩踏み出せば鬱蒼とした森が待ち構えている。そこを分け入って調査するというのだから、ひとつやふたつのパーティーでどうにかなるものではない。

 ならば多少条件を緩めてでも早く調査を進めてしまおうということのようだ。

 当然、冒険者側のリスクは上がる。

 ランクに見合わない魔物にうっかりかちあってしまえば、相手によってはかなりの被害を受けかねない。それを含めての「なかなかにいい」報酬なのだろうけれど。

 

「でも……僕、倒してないです」

「ん? ああ、そいつがとどめ刺したってことか?」

「魔術、あんまり効いてなくて……ルーチェが助けてくれて」


 ノアが眉を下げて、あの時の状況を説明する。

 確かにとどめを刺したのは俺だ。だが、難なく倒せたのはノアが森淵猪の注意をひいてくれたおかげだ。そもそもノアが介入しなければ俺が手を出すこともなかったのだから、ノアの手柄だと俺は認識しているのだけれど。

 まあ手柄云々はともかく、実力という意味では俺たちはまだまだEランクそこそこだろう。Dランクの熟練者向けの依頼はまだ早いのではなかろうか。


「そのへんは聞いてる。そのうえで、『金色の羽』も条件をクリアしてると判断したんだが――自分じゃ倒せなかったから不安か?」


 こくりと頷くノアに、ギルドマスターが頭を掻く。


「わからなくはねぇよ。そういう慎重さってのは冒険者には必要なモンだ。

 けどな、お前が持ってるその武器はアホみたいに強い。お前がウサギ並に弱くても、振り下ろすだけで相手をぺちゃんこにできる武器だ。その武器がありゃ、この程度の調査に危険なんてあるかよ。お前はそいつの手綱(たづな)握ることにだけ気をつけときゃいい」

「武器……? この杖?」

「違ぇよ。魔術士の武器は杖だが、従魔術士の武器は従魔だ。お前は杖と従魔のふたつの武器を持ってんだよ。そんで、アホみたいに強いのは従魔のほう」

「ルーチェ?」

「お前も知ってるだろ、そいつが強いってことは」

「知ってる……でも、ルーチェは、武器じゃなくて」

「ああ、お友達だったか? まあお前が思う分には好きにすりゃいい。友達でも家族でもペットでも。ただな、一般的には従魔は武器扱いだからそこんとこ忘れんなよ」


 ノアは不満顔のまま、小さく頷いた。一応、対外的には()()()()()()であるとは理解しているようだ。


「ま、そうはいっても、お前にはまだ早いってのはわかってる。実力とかじゃねぇぞ、経験がな。森淵猪の件がなきゃまだランクアップしてなかっただろうし」


 ランクアップは、森淵猪の討伐が加点された結果だったようだ。

 まだ早いと思っているのなら、それこそギルドマスターの権限でどうにかならないものか。

 ノアが気が進まないなら別に受ける必要はないと思う。報酬は魅力かもしれないが、それはそれ。活動の幅を広げるのは、ノアがある程度『Dランク』に慣れてからで十分だろう。

 ちなみに依頼の安全性についてはあまり心配していない。Cランクの見知らぬ魔物と遭遇することを思えばやや不安ではあるが、ギルドマスターが打診してくる時点でその可能性はとても低いとみている。要は俺が油断さえしなければいいだけの話だ。


「お前は外してやりたいとこだが、森淵猪の討伐者が『金色の羽』だってことは公開されてるからな。下手に口だしすると余計な勘ぐりをされかねん。そうでなくてもソイツの噂が俺の耳にも入ってきてるし」

「噂?」

「喋らんしその恰好だろ。暇な連中が素性をあれこれ探ってるみてぇでな。今のところ的外れなモンばっかだが」


 ソイツ、と示されたのはもちろん俺だ。

 周りが慣れたかと思っていたが、やはりしっかりと不審者だった模様。

 そうはいっても、この恰好は不可抗力だ。顔を隠せと仮面を渡してきたのは目の前のギルドマスターである。そして、喋らないのも「喋れない」からで。

 ――まあ、今はすんなり喋れるのだけれども。

 俺が喋るのは、屋内では孤児院内、屋外ではノアとふたりの時だけである。

 特に冒険者ギルドでは、以前との齟齬がないように色々と注意を払っていた。俺が魔物であることがバレないよう、多少なりとも人らしく見えるよう、それでいて人らしく()()()()()()よう。

 言ってみれば「近寄りがたい人間」と認識されるのがちょうど良いかと思っていた。近寄りがたさが不審者側に寄ってしまったのは残念だけれど。

 ただ、最近は隠し続けるのも面倒になってきていた。何しろ普通に喋れる。

 絡まれることも随分減ってはきたが皆無ではないし、下手に暴力で解決するわけにもいかないので、オハナシアイで解決できるなら越したことはない。 

 

「お前がDランクになったらソイツを”従魔”として正式登録させようと思ってたんだが、こりゃ当分見送りだな」


 7歳でDランクに挙がってくるとは思わなかった、とギルドマスターが苦笑する。

 恐らくノアのランクアップは成人後くらいの想定だったのだろう。早くてもせいぜい10歳は過ぎるものだと思われていたに違いない。

 成人すればノアの立場は今よりマシになる。()()のない孤児ではなく「冒険者」という一個人となり、冒険者ギルドの後ろ盾を得られる。

 もしかしたら、いずれはノアを『炎の剣』に入れるつもりだったのかもしれない。人の良い彼らならば拒むことはまずないだろうし、ノアの特異性をある程度隠すことができる。少なくともノアと従魔(おれ)という組み合わせで活動するよりはずっと安全なはずだ。

 まあ、あくまで俺の想像でしかないが。


「そんな訳で、お前らにこの依頼を受けてもらわねぇとちと困る」


 困る原因は、Cランクの魔物が云々というより俺たちの噂のほうと見た。

 俺たちというよりは俺か。囁かれている的外れな素性とやらが、面倒の種である可能性が高い。

 俺がまともに「冒険者」をしている姿をアピールすることで、噂を沈静化させたいのではなかろうか。


「ええと……」


 うろ、と視線を彷徨わせたノアが、どうしようとでも言うように俺を仰ぐ。

 ギルドマスターの話を理解できていないわけではなく、判断に迷っているようだ。

 だから俺は仮面の下でにこりと笑った。

 ちょうど良い機会だから、ギルドマスターにも俺の事情を知ってもらおう。

 本当は少し面倒ではあるのだけれど。姿が変わった時のように騒がれるのは目に見えているし、警戒されるだけならいいがいきなり斬りかかられる可能性だってゼロではない。

 アンジェリカにも同行してもらって出直すべきだったか、とちらりと過ぎったが、彼女の手を煩わせるのも申し訳ないと思い直す。


「ノアはどうしたい?」

「……僕、森淵猪みたいなの倒せない……」

「怖い?」

「怖くはないけど……ルーチェの邪魔になっちゃうかなって」


 いつものようにノアに話しかける。

 ノアはどうやら、恐怖や不安ではなく「足手まといになる」ことを危惧していたらしい。

 そんなことないよとノアの頭を撫でる。


「ノアがいなきゃ俺は役に立たないからね。一緒に頑張ってくれる?」


 足手まといどころか、そもそもノアがいなかったら俺は戦わない。

 相手から攻撃を受けたら話は別だが、そうでなければどんな魔物でも放置である。他の冒険者はどうでもいい、とまでは言わないが、彼らの身を案じるほどの思い入れもないのが正直なところだ。

 だってどう考えても、7歳児よりは知識も経験も判断力もあるだろう。いい大人は自力で頑張れ。


「……うん! ……あのっ、僕たちその依頼受けます! 調査依頼!」


 俺の意図が伝わったのか否か、ノアはぱっと顔を明るくして頷いた。その勢いのままギルドマスターに宣言して。


「――待て、今そいつ喋ったか?」

「え?……あっ」


 ノアがしまったという顔で俺を仰ぐ。大丈夫大丈夫、ちゃんとその()()()で喋ったから。その背を軽くぽんぽんと撫でて、ギルドマスターに笑みを向けた。

 大半は仮面で隠れているだろうけれど、口元はしっかり見えている筈だ。


「挨拶が遅くなったね、ルーチェだよ。ノアの従魔の泥人形。よろしくね?」


 ノアに対するそれと同じ、やや柔らかめの口調で挨拶をしておく。

 ギルドマスターは生前の俺より年上だし、本来ならばもう少し畏まった口調のほうがいいとはわかっているのだけれど、怪物(モンスター)がそんな配慮をするのもおかしいので妥協案である。

 敬語ではないがこれなら多少は印象も悪くないと思う。……まあ、舐められたと相手が受け取らない保証はないが。


「……は?」


 たっぷり5秒黙ってから、ギルドマスターは地を這うような声を出した。

 ノアがひっと小さく息を呑んで俺の腕にしがみつく。うん、ドスが利いていて普通に怖い。

 内心ノアと同じくらいビビり倒している俺だが、幸い仮面のおかげで表情を維持できている。口元だけ頑張れば良いから楽だ。


「ルーチェだと? おい、本当か?」


 尋ねる先は当然ながらノアである。

 話を振られたノアはぴょんと飛び上がって、がくがくと頷いた。ギルドマスターの顔が怖いので仕方ない。

 あと雰囲気というか、空気が一気にキツくなった。選択を間違えたら勢い良く斬られそうだ。さすが冒険者ギルドの長。殺意も害意もないはずなのに、警戒があがっただけで圧がヤバイ。


「あっあの、本当です! ルーチェだよ! 僕の護衛!」


 必死すぎて敬語が消えているが、気持ちはとてもわかる。

 むしろ俺はうっかり敬語で話してしまいそうだ。


「嘘じゃねぇだろうな……」

「疑うのはいいけどソレは仕舞ってくれないかな。ノアが怯える」


 あと俺も怯えている。こんなに命の危機を感じたのは生前以来かもしれない。まあ正確には今の俺は()()()()()()らしいのだけれど、それは置いておいて。

 少し現実逃避しながらギルドマスターに「落ち着いて下さい(意訳)」と伝えたら、眉根を寄せた彼が溜め息とともに力を抜く。圧はぐっと緩んだけれど、まだ警戒されてはいるようだ。


「……悪いな、職業病だ。で? わざわざここで話したってことは、説明してくれんだろうな?」


 なんのこと? と(とぼ)けられる雰囲気でもないので、頷く。

 ノアに説明してほしいところだったが、毛を逆立てた子猫のように俺の腕にしがみついているので俺が対応するしかない。まあ俺のことだし。

 ということで、ざっくりと経緯を話した。姿が変わったことで声が出るようになり、周囲の会話を聞いて言葉を覚え、混乱を避けるために孤児院内や人目がないところでのみ話していると。

 真実9割、捏造1割の事情説明によって、ギルドマスターにも納得してもらえたようだ。

 ソファーに座ったまま頭を抱えているけれど。


「……つまり、そいつは間違いなくルーチェってことか。信じられるかと言いたいとこだが。

 ……いやまて、仮面取るな。信じるからやめろ。まあいい。全く良くないがな。それで……ええと、どこまで話したんだったか」

「調査依頼を受けるってとこまでかな」


 別人の可能性を疑われたので「じゃあ顔を」と仮面に手を掛けたら即止められた。相変わらず劇物扱いである。いい加減慣れて欲しい。


「ちょうど良いかもしれん。お前らが倒したって事実を疑う連中は必ずいるだろうし、そいつらに実力みせつけてこい。そんだけ普通に喋れるなら噂も消えるだろうしな」


 やはり流れている噂がギルドの懸念点であるようだ。どんな噂なのか気になるところである。俺が冒険者らしく振る舞えば解消されるようなものなのだろうか。


「姿は変えなくても?」


 不気味と囁かれる原因は、何も口を利かないことだけではない。間違いなくこの恰好も原因だ。具体的にはこの珍妙な仮面が。


「変えちゃうの? ルーチェのお顔好きなのに……」

「顔は変えないよ。服とか仮面を」

「とるなよ。仮面が嫌なら変えてもいいが、顔は隠せ。逆の意味で目立つ」


 俺の感覚ではこの仮面の方が目立っていると思うのだが。

 即座にギルドマスターから待ったがかかったので、どさくさに紛れて仮面を捨てるという選択肢は消えた。素顔で闊歩(かっぽ)できる日は遠そうだ。

 最終的に、フードを外す許可が下りた。

 髪色が目立つのではと危惧したが、他国の人間であれば珍しくないとのことだった。この国より北にある国々では比較的色素の薄い人間が多いらしい。困ったら「シュマーナ」の出身だと答えろと言われた。

 俺の設定が更に追加された。

 そろそろ自分の『設定』を忘れそうなので、きちんと整理しておかねば。



ギルマスにバラすの回。他の面子にもぼちぼちバラしていく予定です。

そろそろメランも出したい……▽・w・▽


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます 柔らかい口調いいですね。 人外味がほんのりとしていて
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