第55章
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すぐには。
それが夢なのか、現なのか。・・・
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それ以外なのか。
もうそれさえも。
分からなく、なっていた。
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ただ楽しかった思い出だけは。
それが夢のようだったなとだけ・・・思う。
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気が付いたら、
涙を、流していた。
息を、荒くして。
泣いていた。
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まぶたを・・・そっと開ける。
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・・・。
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濡れたまつげを・・・上げて、また頬に流れた涙を、優しく、
指先で、拭ってくれた人がいた。
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「・・・・。」すぐに、意識が覚醒、する。
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隣を見る。
なぎがいる。
白衣を、着て。・・・・・
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現実か。
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「そんなに・・・泣いて。」
「泣いてねぇよ。」
「ふふ。」
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顔を、近付けて。・・・
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・・・。
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ちゅ。
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・・・。
一度だけ。
「・・・。」なぎが、ほっぺに優しく、キスしてくれた。それだけで。
おれはにこっと、笑ってご機嫌になって。
真っ直ぐに、なぎの顔を見た。
「たけしは。」
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「愛にあふれた、ひとだよね。」
「・・・・。」
「色々な、ひとが。愛情をかけて、ゆっくりゆっくり、育てて、くれたおかげだね。」
ぽろりとまた。おれの目から涙が落ちた。
「ほら、また愛が溢れてる。」
「・・・・。」
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「・・・おれ、の、父ちゃん・・は。・・・背中で、もの言うひと。」
「・・・。」
「母ちゃん、は。黙って何も・・言わないひと。なんでも、受け入れるひと。」
「・・・。」
「結局ふたりとも。・・・ほんとに、・・なにも、言わなかった。」
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勉強しろだとか、あれ、やれだとかこれ、やれとか。
「・・・だから口うるさい、やつはおれだめだ。」
「・・・。」
「おまえみたいに。口うるさいやつはおれ、嫌いだよ。」
そう言って。
バランス取ろうとした。これから。
言おうとしてる事の。・・・
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「好きな子、いじめて。」
「・・・・。」
「ほんとに。仕方ないひと。」
そう言ってなぎが。可愛い顔して、笑った。
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