第52章
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「ふふふ。」おれは上機嫌で笑う。
そっか・・・いい方法だ、確かに。
凄ぇわ、・・・あの爺さん。
確かに・・・それしかないわ。
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・・・。
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見上げる。そらは高くて。雲が白くて。季節は・・・もうすぐ冬だ。
おれ冬は嫌いだけど。・・・・はは。声に出して笑った。その頃には、もぅおれ。・・・・
この世に、いねぇわ。
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「なぎーーー!!」
「・・・・。」大声で。おまえを呼んで、手を振る。
「こっちおいで。」手でもおいで、おいでする。
「・・・なんですか。」
「なにそんな。コワイ顔して。可愛い顔が。」
「・・・。」
「台無しじゃねぇか。」
ちゅ。
「・・・。」
ちゅっ、隣に座ったなぎの。あごに手を添えて、こっち向かせて、可愛いほっぺにキスをする。
「可愛い。可愛いなぎ。」
「もぅ。」
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「どうしたの。・・・?」おまえが、おれを眉根を寄せて見る。
「どうもしない。」
「・・・。」
「ただ、おまえが好きなだけ。」おまえを・・・見つめる。
「・・・・。たけし。」
「なに?」
「頭でも、打った?」
「ふ、はははは。」
「振られた僕に。そんな事言うなんて。」
「振ってねぇじゃん。・・・・」おまえの。耳に唇を、近づけて言う。
「振った。」くすぐったそうに、おまえが身をよじる。
「振ってねぇよ。・・・・」
そんな、仕草が。たまらなく、可愛い。・・・
ほんと、たまんない。
「おまえここ、だめなの・・・?・・・ぁ、違うか、ここ好き?みみんとこ、こぅされんの、好き。・・・?」またおまえの、耳元に近づく。
「たけし。」
「何だよ。」
「僕もう、あなたの担当を外れましたから。」
「・・・・。」
「これ以上僕にできる、事はなにもない。だからあなたも。僕に何も。する必要はない。何の責任も、感じる必要はない。」
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「・・・。」
「・・・そう言えば、いい?」
「なぎ。」
「そう言えばあなた。・・・楽に、なれる?」
「わかんねぇ。難しいことはおれ、ほんとわかんねぇよ。でも。」
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「またさ、おまえんち、行っていい?」
「・・・。」
「・・・・。いい・・・?」
「・・・いいよ。」
「んでまた。あれ、作って。」
「・・・ふふ。ハムカツ?」
「そう、ハムカツ。・・・・そんで、またさ。おまえと。・・・」
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「いっぱいキスして。」おまえの、あごを掴んで。
「・・・。」
キスして。・・・そう言って。その、・・・唇を、見つめる。
確かに・・・・
その唇に・・・唇で、触れたはずなのに。
触れたどころか。
自分のものにするみたいに・・・・
強引に、奪い合うように、激しく、求めあった、はずなのに・・・・
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今はその思い出さえ、遠い昔の出来事だったんじゃないかと思う。
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「・・・それでさ、今度はおまえんち。泊まっていい?」
少しだけ、怖くなる。
おまえが・・・どんどん、遠くなる。
「・・・。」
・
こんなに近くに、いるのに。
「・・・だめ?」おまえの。瞳をのぞき込む。
「ふふ。・・・泊まって、・・・何するの。・・・?」
なぎが、いつもの優しい瞳でおれを、見つめる。
「なに、するって。決まってんじゃん。」
「たけし。」
「なぎ。・・・・」
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「好きだよ。」おまえを、腕の中に入れて言う。
「・・・。」
「なぎ、好きだよ。大好きだよ。」
抱きついて、
ぎゅぅぎゅぅ、その身体を抱きしめる。
「あはは、」
なぎが、あの時みたいな。
声を出して嬉しそうに笑う。
「おれと・・・朝まで一緒にいてくれる・・・・?」
「・・・。」
「もし、良かったら、だけどさ、」
「・・・。」
「おれのそばにいてくれる・・・?」
ずっとなんて言わねぇから。
せめてひと晩だけ、・・・ぃや、
最期の。その時だけ・・・・でもいい、
「どこにも行かないで、おれの・・・そばにいて。」
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「・・・・。たけし、」そう言って、
おまえが初めておれを、
優しく抱きしめてくれる。
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「いるよ。どこにも行かないよ、ずっと、一緒にいるよ。」
・・・優しく・・・優しく、何度も、髪を撫でてくれる。
「なぎ・・・渚。」
おまえの胸に顔を埋める。
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「・・・。」つぶやくような、なぎの。声が聞こえる。
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やっぱり・・・・
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・・・。なぎ?
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・・・やっぱり、・・・・最強、だね。
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・・・・。眼を閉じる。
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・・・素直な、あなたは・・・やっぱり・・・・
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・・・・。
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最強だよね。
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