第33章
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おれは。・・・・
おれを産んでくれた母ちゃんに。
おれを育ててくれた父ちゃんに、感謝してる。
海辺で一緒に暮らした仲間やまちのひと、そして。・・・海と空に、感謝してる。
それを、全てなくしてから。
やっと、おれはそれがわかった。
それが、どれだけ、大切だったのかが。わかったから。
そうやって、育まれた。・・・おれの、命は。やっぱり。
父ちゃんと、母ちゃんのもんだ。
ひとは生まれれば、必ず死ぬ。
それを、教えてくれたのもあのふたりだ。
「・・・おれが、おまえに何かを指図される筋合いは、どこにもない。」
そう。同じ、セリフをまた言って。
「・・・・。」
「悪いけど。もう。おれに近づかないでくれよ。頼むから。」
「・・・。」
「おまえの言うことは・・・わかったから。」
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「それ、は。」
「・・・・。」
「随分と危険なアサインだな。」
「ん、」翼と、廊下で立ち話をする。人が。目の前を、行き来して。
「彼は明らかに、サバイバーズ症候群も患って、いるよ。彼の、お父さんやお母さんが。枕元に立たない事を祈るよ。」
「・・・・。」
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サバイバー症候群。・・・戦争や災害、不慮の事故などに遭遇し、生き残ってしまった自分に対する、罪悪感、フラッシュバック、心的外傷ストレス症候群(PTSD)・・・を、総じて言う。
人に対して信頼感を得られなくなったり、懐疑的に物事を考えたりも、する。
単純に、生き残り症候群と呼ばれる、事もある。
人知れず苦しんでいる場合が多く、一番の弊害は・・・・
やはり、自殺。
・・・。生きて行くのも辛いほどの罪悪感を感じ、自分を罰する事で、その、苦しみから、逃れようとする。
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・・・ただし、・・・僕が。そんな事は。させないけれど。
「はぁ。」ため息を、つく。
「なぎ、それについても、ちゃんと後で、報告書書いておいてよ。」
「うん。・・・」
「まったく、無茶な事して。あれだけ、やめときなよって、言ったのに。」
「・・・。」
翼を、上目で見る。
「・・・なんて言ってもどうせ考えは変わらないんでしょ?」
僕は・・・微笑んで。うなずく、・・・代わりにただ、・・・下を向いて言った。
「・・・あと・・・少しなんだ。」
「あと少しね。まぁ頑張って。」
「、あははは、」その、翼の言い方が可笑しくて。思わず、声に出して笑った。
「その頑固さ誰に似たんだろ。」
「ふふふ、」
「まぁいいよ、あとはさ。・・・きちんと自分で話して。その前に一度相談してみた方がいいと、思うよ?」
「うん。・・・・」
「・・・。ね、なぎ?」翼が、念を押す。
「・・・ぅん。わかってるよ。」
「・・・無茶すんなよ?」
「・・・。」
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その。言い方に心配と、僕への気遣いを、感じて。
「大丈夫。わかってる。」僕も。念を押して言った。
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