第3章
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「だから。そうじゃねぇって。」
自然と、前日の。話の続きをする。
続きって言うか繰り返しって言うか。
「面倒くさい以前の問題だな。」
「・・・。」
屋上の。柵の上の空に向かってまたうーーーんと、思い切り、伸びをした。
今日もまた。速攻で煙草は取り上げられて。
いつも通り、あいつがおれの隣に座ったその瞬間。
・・・やった、と思った。
これでまた。彼と話をする。口実ができる。
最近はこうして、彼と朝いっとき、意味のない、話を繰り返しし合うのが。
おれの一日の。何よりの、楽しみになっていた。
「最近さ、思うんだよ。」ベンチに背を付けて。
身体をずり下げて。
「結局さ、人なんて、何やってたって。ひとなんて、結局ただの、ヒトなんだなってさ。」
「・・・。ふふ。」
じっと。柔らかく笑う彼を、おれは見つめた。
「おまえ意味わかる?」
「人間ひと皮むけば皆同じってことでしょうか。」すかさず、そう答える。
「・・・まぁ、」
「ふふ。」
「そういう事。」
彼が。ニコっと満足そうに微笑む。
「・・・。」
そのひと皮が、
こうも、違うとさ・・・・・、
「・・・おまえって、・・・ハーフ?」
「え?」
「なんか。変わった色した。目してんじゃん。」最近やっと。
まともに正面から。顔が見れる、ようになった。
「・・・そうですか?」
「そう。ほら、だって今だって・・・」思わず指で、その眼に手を伸ばそうとする。
斜めから陽が入って、・・・ほらな、茶色みたいな不思議なグレーみたいな。・・・・
「僕の、目の色は。もともと真っ黒。視力は0.06、」
「あーーー・・・・えぇ?」
「裸眼ではほぼ見えません。」
「えぇぇ、なんだよそれ、コンタクトかよ?!」
「まぁそんな、ような物です。」
「なんだよ!!!・・・・騙された。」
「何がですか。」
彼がまた。目の前で、ベンチに座る、おれの隣に座って、声を上げて笑う。
「・・・。」
こうして大の大人の男がふたり。
ベンチに座って。ただこうやって、座って。笑って。
「おまえも、たいがい暇人だな。」
おれは言って、隣の彼を見る。
・・・ただし今日も。めちゃくちゃ、可愛いらしいけど。
「あなたには負けちゃうけど。」
「あはははは。・・・確かに。」
確かに。そうだ。
ここに来ておれは。おれ以上に暇なやつとは・・・・一切。たったの一人も。
出会った事が、ない。
「色々。・・・」急に何かを言い淀む、彼を見る。
「・・・。?」
「色々と、僕と。お話。してみませんか?」
「・・・なに?話?」
「そう。話。」
「話なら、もう、してんじゃん。」
「・・・そうですね。」
じっと。意味深く見つめられて、どぎまぎする。
なんだよ。・・・そんなに。
見んなよ。・・・・
「なんか、変なんだよな、おまえ。」すっとまた。余分に距離を、取って。
「格好もほら。何か他の看護士と、違う。」
「・・・。」
車椅子を引いて、一人の看護婦が、朝の散歩に、訪れていた。
白い清潔そうな、白衣を着て。
にこやかに。黄色いパックを下げた点滴棒と車椅子を。見事に、上手に押してゆく。
「・・・僕、は女性じゃないから。」
「・・・。」
「ああ言うナース服は。着ません。」
「別に、」
「残念ながら。」
「残念とかじゃねーけど、」
「好きそうですけど。」
「・・・。」
「ナース服、好きそうですよね。」
「・・・・。」
「大好きですよね?」
「・・・嫌いなヤツなんていんの?」
「なんですかその顔。」
ふたりして。吹き出して笑い合った。
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