第18章
・
途中で泥に埋まった、白い長靴を拾い。
泥を掻き出して、代わりに脚を納め、また・・・歩き出した。
すぐに海のあたりが見渡せる、小高い、見知った公園のとこまで、戻って来る事ができた。
海に一番近い町は門脇町、南浜町。
そこから日和が丘、羽黒町を抜けて。・・・その先がおれの、家がある、町のはずだった。
元々どこもそれ程人が多い場所じゃないけど。
だけどそれまで。・・・・
おれみたいに息をしてる人間とは。
たったのひとりも。出会わなかった。
「・・・。」
まさか。・・・だよな。・・・・・・
急に。とてつもない不安が押し寄せる。
その事を、考えるたび。胃が縮こまり。吐き気がするようだった。
泥だらけになった階段を一歩一歩、踏みしめ、ながら降りる。
おそらく、今。歩いてるのは南浜町。まるでローラーで。まっさらに轢かれたように。跡形も、なくなっちまっている。
ところ、どころでまだ、火がくすぶり。焼け焦げた匂いと、ガソリンの匂い、魚の匂いが交じわり思わず。鼻と口を、両手で覆って歩いた。
南浜町は。海に近いから。・・・・そう。自分に言い聞かせる。何度も。・・・何度も・・・・
「まさか、な。・・・・」
またおれは、そう口に出して。
心に浮かんだひとつの仮定を。打ち消すように首を振って。心を。奮い立たせて歩いた。
・
「お母さんは、流された、家の瓦礫の下から。」
「・・・。」渚が、静かに言う。
「お父さんは七日後、家の近くの消防署の裏手から、発見されたの。」
「・・・ナギ、」
「仲間と、車に乗った。・・・ままだった。」
まるで自分の事のように。
切なげに、眉根を寄せて。
渚がそう、つぶやいた。
・




