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「A」  作者: みんと*
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19/64

第19章

・



「ふぅーーー・・・・・」



なぎさの。目を盗んで。また吸い始めた、煙草。・・・全然。旨くも、なんともねぇ。


ただ、気持ちを落ち着かせる為だけに。煙を肺に、吸い込む。


肺はまだ、やられてねぇんだな。


胸を上から、手でさすって。


・・・すぅ。・・・また。それを口に咥えて。吸い込んで。


ふぅ。ーーー・・・・・父ちゃんの。真似をして吸い始めた、煙草。



おれは。結局憧れて、いた。・・・父ちゃんに。


余計な事は言わず、ただひたすらに自分の。船を守り。家を守り。シンプルに。


家族や、仲間を大事にするって事を、男のやるべき事を教えてくれた。


そんな姿を、背中を。後ろから見ながらいつだって。


格好いいって。父ちゃん、みたいになれたらいいのにって。


心のどこかでいつだって、思ってたのに。・・・・


それを、言えないまま。


結局そうだったのに。


船を継ぐとも。・・・言えないまま。


離れ離れに。なっちまった。船だって結局。・・・なくなっちまったしな。



・・・おれはだめな。・・・やつだな、ほんと。



どーしようも。ないやつだ。



ぎゅっと。煙草の吸殻を足元で。捻って消す。




・




「・・・見ーーつけた。」


「・・・。」頭の、上から。なぎの。可愛らしい、声がした。




・



ぷいっと。そっぽを向いて立ち上がる。


「待って。」


「・・・。」


「そこで。・・・待ってて。・・・?」


いやだ、と首を振る。


「お願い、」


「・・・・。」


「きちんと。話をさせて。・・・?」


「・・・・。」


「お願い。」



おれは。頭上のその、声を無視して立ち上がり、歩き、始めた。


どうしようもなく。・・・むなしかった。


むなしい、なんて。気持ち、これまで何度も。何度も、実際感じて来ては、いたんだろうけど。


実感、した事は思い返せば。あまり。・・・なかった。


・・・実感して、初めて、わかった。 


不思議と。それはこれまで。感じた、事もない程の。・・・むなしさ、だった。



・



あのあと。


毅と風呂に入ったあと、なぎさが、おれに言った。



「僕たちは、あるプログラムに基づいた、相乗効果を、狙っています。」


「・・・。」


「・・・は?」間の抜けた、声を出すおれを、なぎさがじっと、見つめる。



その真剣な眼差しに。


「・・・。」おれはすぐに、口をつぐみ。


何か。・・・もっと大事な事。言おうとしている、事に気がついた。


何か。おれに。言おうとしている。


何かもっと大事な・・・事。打ち明け話。



「なんだよ。」先を、促す。「・・・なに?」


「・・・。」


「何が、言いたいの、おまえ。」


「・・・・。」


言い始めたくせに。その先を言うのを。・・・ためらっているような、おまえに。


おれは言った。



「言わないなら、翼に聞く。」


「待って。」


「・・・。」


「待って。いま、言うから。」


「・・・。」



さっき、こいつは言った。


「僕たちは。」って。その前に、こうも言った。


「正直に、言います、」・・・って。


・・・・って、事は。


それって、事は、つまりは。その前は。おれに、何か隠し事してたって。事だ。


おまえの言う、「僕たち」は、おまえと。・・・翼のこと。


おまえ達はふたりして。陰で。


おれに隠して、何かをたくらんでたって、事だ。


毅との事絡めて。


おれを利用して何かおまえ達の思い通りになればいいって、


下心持って、・・・たくらんでたって事だ、



「違う。」


「・・・え?」


「怒らないで。・・・聞いて、いただけますか。?」


「・・・。」なんだその。言い方。


 

急に。変な丁寧語使いやがって。おれはその、言葉に。口ぶりに。


いらいらして。急にそんな、余所余所しくなった、なぎの態度に。・・・凄く。


勝手に、傷ついて、イラついて、


何の。話も聞きたくない。・・・そう、思った。


おれの悪いとこ。


自分でもよく、わかってる。嫌な、事からは。


面倒な。事からは。・・・それが。自分にとって、嫌な事で。あればある程。・・・


遠ざけたい。近づきたく、ない。傷つきたくない。



・



おれは。そうだ。・・・おれは。臆病な。男なんだ。




・・・・顔を、覆った。




父ちゃん、・・・ごめん、・・・ごめん、こんな。奴で。・・・・




・・・ごめん。・・・・




・



顔を覆って、膝を丸めたベッドの上で。


「武士くん。」



・



「・・・。」



逃げるように舞い戻ったそのベッドの、信じられないくらいに、すぐ近くに。



翼が。



腕を組んで立っていた。




・

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