表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「A」  作者: みんと*
15/64

第15章


「・・・疲れた。」


「ちょっと、寝たらどうですか。」


「・・・。」なぎにそう、言われて。


ベッドを整えて、くれる。その小さな、背中に向かって。


「うん。」なんておれは、答えて。ちょっとだけ、ココロの中で。


夫婦みたい。・・・だな、なんて。思って。・・・・



「なに、ニヤニヤしてるの。・・・?」相変わらず。その可愛らしい、その、無垢な・・・天使みたいな、顔をじっと見つめた。


「・・・ん?」


「おまえさ、」


「?」


「・・・付き合ってるやつとか。いるの。・・・?」


「・・・。」


なぎが。おれをじっと見つめる。


「なんだよ。」おれは途端に、どぎまぎして。そう。言って。


「いたら、どうなんですか。」


「え?」


「もしいたら、どうしますか。・・・?」


「・・・・。」


 ・・・どうする、って。・・・・・



「・・・いるの?」


「だから、もしいたら、の話です。」


「・・・・。」・・・もし、いたら。・・・・・


・・・って事は。


・・・いるのか。


そりゃ。いるよな。こんな。・・・可愛いんだから。世間が。放っとく訳、ねぇよな。



・・・なんだよ、聞かなきゃ。・・・良かった。


おれは一気に、口を尖らせて、落ち込んで。



「・・・好きな、人はいます。今は・・・言えませんけど。」


「・・・・・・。」


「近すぎて、言えないんですよね、」


もう。


いいから、言うなよ。




「・・・。あいつ?」聞きたくはないのに。


勝手に口が動く。


「・・・え?」


「もしかして、あいつ?あの、翼って、やつ?」


「僕。・・・・」


「・・・・。」


「翼と、そんな風に、見えますか・・・?」


「・・・。」


・・・くるっと、なぎが。おれに背を向けて。部屋をあとにする。


洗った、ばかりの髪に手を入れて。がしがしと、掻いて。


・・・そんな風って。・・・・どんな、風だ。・・・・?



・・・って言うか、なに?怒ったのか。・・・・?



なんなんだよ。・・・・おれ、そんなヘンなこと。・・・言ったか?


ぼんやりと。自分の今言った事、思い出そうとしながら。


ベッドに沈み込む、ように身体を横たえると。すぐに、・・・また、


睡魔が、訪れた。





あぁ。・・・・久しぶりだ。この。・・・感覚。

 

そう、まるで泥の中に、沈み込んで、ゆくような。・・・・・


夢なのか。現実なのか。それか、その・・・狭間、なのか。

 

おれはあの事が、あってから初めて知った。


強く何かを、想う事があるとそれが。・・・夢に。現れるって、事を。


決して。見たくはないのに。


そんな、自分の意思とは裏腹に。・・・鮮明に。おれに、色々な物を見せに、それはやって来る。




夢の中のおれは。珍しく。・・・笑って、いた。



笑って、また海を。・・・眺めて、いた。


母ちゃんの。声がする。


父ちゃんの。・・・声も。


海を眺めてるのに。なぜか。家の、中の音がした。


懐かしい。・・・・懐かしい。・・・・ただ。ただ懐かしい。


その。風景。




目に見える、ものは全て。モノクロで。決してその色を取り戻す、事はないけれど。その事も、夢の中のおれは。充分わかっては、いるんだけど。・・・・それでも。


ただ、ただ笑顔を作って、笑って、いる。


それが。まるで当たり前、かのように。


まるでその一瞬だけ。切り取られて、しまったかのように。


そうやって。笑っている、おれをおれが。・・・遠くから、じっと眺めている。

 


だから、死んだんだなって。思うんだ。いつも。


・・・死ねたか。


やっと、おまえも死ねたか。




だから。・・・笑ってんのか。・・・・・?







「たけし。」



「・・・・。」



優しくそう、おれを呼ぶ、声がした。


いつもと違うのは。そうやって、おまえの。・・・・おれを呼ぶ声で。


違う。これは夢なんだって。・・・・・


夢の、中で。・・・・ちゃんと。頭の中で。わかった。・・・こと。


まだ。死んでない。 


だって、おまえがいる。 


そう、思えた事で。目が覚めた・・・時。


前みたいに。目が覚めた、時。・・・膝を抱えて。


・・・あぁ、今見たのは、夢だったんだと。


・・・おれはまだ、ひとり。・・・生きて、いる。


そう、そう思ってそのまま、また、ずぶずぶと。地面の底に沈んでゆくような。・・・


そんな、絶望感を。


この時だけは。


味合わずに・・・・済んだんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ