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「A」  作者: みんと*
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10/64

第10章

・


「死ぬより、辛い事って。」


「・・・。」


「この世にあると、思う。・・・?」


「・・・・。」


なぎがおれを、見つめる。




「・・・。なに、それも。・・・」


「・・・。」


「カウンセリングってやつの。一部?」


すごく、困ったような。顔をして。なぎが、おれを見る。



「・・・。」


おれは、別に。


可愛いこいつを。


困らせたい、ワケじゃない。


ぃや。困った顔も。超絶、可愛いけど。


・・・可愛い、過ぎるけど。



それでもって。その可愛い顔を少しだけ、歪ませた。そんな顔は。少しだけ。・・・・


何か色っぽくも、あって。


身体に少しだけ。・・・熱がこもる。


体温、上がりそ。・・・・


そう、思った瞬間。



ぴぴっと。モニターが忠実に。それを音で示した。



「・・・。」


「・・・・。」


なぎが。


さっとおれのおでこに手を充てる。


冷たい。・・・・すごく。


ひんやり、とした陶器のような質感、の。・・・手。


火照った、身体に本当にちょうど。・・・気持ちいい。



「熱い?」


「ん、少し。」


手の平を、ひっくり返してくれる。


「あ、すげぇ、気持ちい。・・・」


「ふふ。熱、あるね。8度2分くらい。」


「すげぇな、触っただけで、わかるんだ。」


「あなたの事なら。」


「・・・。」


「だいたい、わかるよ。」


「・・・・。」



「なんてね。」


そんな事言って。なぎが席を立った。




・




「・・・。」


すぐに。戻って来たなぎがおれの、すぐ傍に立って。身体ごと、覆い被さる。・・・。あ、


すげぇ、いい匂いがする。・・・・


洗ったばっかの。シーツみたいな。・・・・



そして、そのまま、おれの頭を抱えるように。大事そうにそっと、手を入れて。持ち上げて。


「・・・・。」


うまく氷枕を、そこに充てて、置いてくれた。



・・・なんだよ。・・・・


おれ。おまえの手のが、いいのに。




「ありがと。」


「・・・。」


そう、心の中で手を合わせて。感謝しながら、告げる。


人に親切にしてもらったら、ありがとうと言う。


散々ちっちぇえ頃から。


親に言われ続けて、来た事だったから。


その時はできない事でも。その言葉は。


おれの。心の中にずっと、生き残って。ほらな。


今でも。優しくそう。おれを諭してくれる。




なぎがすっと。おれの横に座る。




「計画を、立てて行こうと思います。」


「あ、あれね。」


「・・・。」


「死ぬまでにしたい、十の事、って、やつ?あれ、百だっけ?」


「・・・。」


「あ。一ヶ月じゃ。そんなにできねぇか。ははは。」


「・・・。」



なぎがまた。困ったような、顔をする。


・・・。だから。


おれより先におまえが。そんな顔。・・・・すんなよ。




「会いたいひとは。・・・?」


「いない。」


「・・・。」


「いねぇよ、会いたいひとなんて。みんな、あっち行っちゃったし。」


「・・・。」


・


「じゃぁ。・・・食べたい、ものは。・・・?」


「母ちゃんの。ハムカツ。」


「・・・・。」


なぎが、ペンを口に添えて。真剣に考え込む。


「ハムカツか。・・・・」



「ただの、ハムカツじゃねぇんだよ。」


「知ってますよ、間に色々、挟んである。」


「・・・・。」なんで。・・・知ってんだよ。



「だから、言ってるでしょ。あなたの事なら。」


「・・・。」


「なんだって、知ってる。」


なぎが。にこっと、可愛い笑顔を作って、笑った。



 

・




「おまえ、」


「?」


「あいつに、なぎに。・・・ハムカツの事、言った?」


「え?」


今日もまたおれの、ベッドに座って。


毅がちゅぅちゅぅと。パックのヨーグルトを口にする。




「・・・。それ、美味そうだな。」


「飲む?」


「・・・ぃや、いい。」


「あ。」


「・・・。」


「大空翼には話したけど。」


「・・・。」


「毎日、その日あった事を、話すから。」


「うん。」・・・おれも。そう言われてる。


「絵、見たいって。言ってたよ!!」




 ・・・そっか。それでか。


 


「・・・誰にも。見せねぇよ。」


「え?」


「おまえだけ。今日は。おまえの食べたいもの、書いてやる。」


また戸棚から、色鉛筆を取り出した。それを見て。


毅が。凄く嬉しそうに、笑った。



・




その日の午後はまた、その、なぎのカウンセリングだか、何だかに付き合わされた。



「行きたいところ、」


「・・・。」


「ある。・・・?」


「・・・・。」


何も言わない、おれを見て。



「あるんだね。」さらさらと、メモを滑らせる。


・・・なに。書いてんだよ。


おれは、笑って。



「あるけど、教えてやーんない。」目を細めて、そう言う。


「なんですかその。言い方。」


楽しそうに、なぎが笑う。


穏やかな、秋の陽が差し込む午後だった。



「じゃぁそれは。・・・あとで、聞き出すことにして。」


「ふふ。言わねって、」


「やりたい事は、ある?」





「・・・。」・・・やりたい、こと。・・・・・・






「セックス。」


「・・・・。」


「セックス、してぇなぁ。」・・・おまえと。





「めちゃくちゃに、動物みたいにさ。夢中になってひと晩中。」


「・・・。」


「あっちこっち、ひっくり返して。」


「・・・幸田クン、」・・・ピピ、




「上から、下から、縦にしたり、横にしたり、して。・・・・」





「たけし。」





 ・・・・あぁーー・・・おれ、・・・・・・

 



もう天国かどっかに、いっちゃいそう。


 



・・・天国って。・・・ほんとに、・・あんのかな・・・・・






まだ何も。・・・・




してない、ってのに。






・

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